テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
夜のオフィス。特別編―
時計の針は、もう十時を過ぎていた。
フロアにはほとんど人が残っていない。
聞こえるのは、キーボードを叩く音だけ。
その中で。
凛花は一人、自分のデスクに向かっていた。
凛花:……あと少し。
山積みになった資料。
画面に並ぶ数字。
目は少し疲れている。
そこへ。
足音が近づいた。
海斗:まだやってたのか。
凛花:……。
凛花は顔を上げる。
凛花:海斗さん。
海斗:上司を見た瞬間、固まるな。
凛花:すみません。
海斗は凛花の机を見る。
そして。
小さくため息をつく。
海斗:何時から残ってる。
凛花:えっと。
海斗:答えなくていい。
凛花:……。
海斗:昼休みも仕事してただろ。
凛花:見てたんですか。
海斗:上司だからな。
凛花:監視ですか。
海斗:確認。
凛花:言い方変えただけじゃないですか。
海斗は少し笑った。
海斗:相変わらずだな。
凛花:何がですか。
海斗:無理してるのに、大丈夫って言うところ。
凛花は黙る。
海斗:終わるのか。
凛花:終わらせます。
海斗:質問の答えになってない。
凛花:……。
海斗は椅子を引いて、凛花の隣を見る。
海斗:手伝う。
凛花:でも。
海斗:仕事だ。
凛花:上司が部下の仕事を手伝うんですか。
海斗:部下が倒れるよりいい。
凛花:心配してるんですか。
海斗:してない。
凛花:早いですね。
海斗:何が。
凛花:否定。
海斗:……。
凛花は少し笑う。
凛花:海斗さん、分かりやすいです。
海斗:上司に向かって言う言葉じゃないな。
凛花:昔からですから。
海斗:会社でもそれ言うか。
凛花:言います。
海斗:困った部下だ。
凛花:困った上司ですね。
二人で作業を続ける。
167
41
しばらくして。
資料の整備が終わった。
凛花:終わった……。
海斗:お疲れ。
凛花:疲れました。
海斗:知ってる。
凛花:じゃあ早く帰らせてください。
海斗:その前に。
凛花:?
海斗は凛花を見る。
海斗:一つ確認。
凛花:何ですか。
海斗:最近、ちゃんと休んでる?
凛花:……。
海斗:沈黙は肯定だな。
凛花:休んでます。
海斗:嘘。
凛花:何で分かるんですか。
海斗:顔。
凛花:また顔。
海斗:分かりやすい。
凛花:海斗さんもです。
海斗:俺が?
凛花:心配してる時。
海斗は少し黙る。
凛花:図星。
海斗:凛花。
凛花:はい。
海斗:仕事中は上司と部下。
凛花:はい。
海斗:でも。
少し間が空く。
海斗:昔から無理するところは変わらないなと思っただけ。
凛花:……。
凛花は少し笑った。
凛花:そういうところ、ずるいです。
海斗:何が。
凛花:急に優しくなるところ。
海斗:普通だろ。
凛花:普通じゃないです。
海斗:じゃあ。
海斗は少し意地悪そうに笑った。
凛花:その顔。
海斗:何。
凛花:嫌な予感します。
海斗:正解。
凛花:上司ですよね?
海斗:今は。
凛花:今は?
海斗:仕事終わったから。
凛花:え。
海斗:今日ずっと無理してた分。
凛花:何を。
海斗:反省してもらう。
凛花:反省?
海斗:はい。
海斗が凛花の脇腹をつつく。
凛花:っ!
海斗:ふーん。やっぱ弱いんだ?
凛花:今、仕事中です!
海斗:終わった。
凛花:はぁ……。
海斗:何でため息つくの。
今度は脇腹をちゃんとくすぐる。
凛花:いやっ!ひゃっ!ちょっ、ちょっと!!
海斗:笑 いい反応すんじゃん。
凛花:やめてください、!!
海斗:ま、今日無理しすぎた罰だな。
凛花:そんなのあるんですか!?
海斗:凛花が悪い。
凛花:それはっ、こめんなさい……。
下唇を出し、可愛い顔をする。
海斗:はぁ……。そんな顔されたら許すしかないだろ。
凛花:?
海斗:今日はもう帰れ。明日も仕事あんだろ?
凛花:そうですけど……、
海斗:じゃ、送ってくよ。
凛花:いや、いいです!
海斗:送らせろ。夜遅いんだから。
凛花:……。
海斗:ん?
凛花:いや、お母さん?笑
海斗:は?笑
凛花:いや、上司?お母さんではなく?
海斗:もういいから笑 早く帰るぞ。
凛花:はーい。
そう言い帰りも甘い時間を過ごしたとさ。
コメント
1件
いやー、めっちゃ良かったです!昼間はピリッとしてるのに、夜のオフィスだと急に距離が縮まる感じがたまらないですね。海斗さんの「気にしてるくせに否定するところ」とか、凛花の「ずるい」って言うシーン、めちゃくちゃ刺さりました。最後のくすぐり罰も、お母さん発言も可愛すぎて笑っちゃいました。お互い分かり合ってるのが伝わってきて、ほっこりしました。おかゆさん、素敵な話をありがとうございます!