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15話 今月の紙芝居ニュース
夜の空気が
ゆっくり沈む
ふっくらは
丸い体を前に倒し
短い脚を折って座る
腹が地面に触れ
両手には
まだ封を切っていないお菓子袋
目は
紙芝居の枠に向いている
琶が
紙を広げる
大きな体
長い首
重なった鱗
畳まれた翼は
ほとんど動かず
爪だけが
紙の端を
静かに押さえている
一枚目が
めくられる
地図
山
道
そして
小さな印
そこが
“ダンジョンのあった場所”
らしい
次の一枚
同じ地図
印が
消えている
他の部分は
そのままだ
ふっくらは
首を少しだけ傾ける
さらに紙がめくられる
入口の絵
……のはずだが
岩が描かれているだけだ
穴も
扉も
階段もない
ただ
岩があるだけ
ふっくらは
目を細める
丸い顔が
さらに丸くつぶれる
「ここ……何だっけ」
声には出さないが
そんな表情
琶は
一定の動きで
紙を進める
首も表情も変わらないまま
最後の一枚
短い文が
書かれている
「消失」
ふっくらは
お菓子袋を
そっと置く
開ける気が
なくなる
“消えた”と書かれる前に
そもそも
そこに何かあった気配が
思い出せない
頭の中で
形がつくられず
ただ
欠けた場所だけが
ぽっかり残る
琶は紙を伏せる
大きな体は動かず
目も細めず
ただそこに立つ
ふっくらは
地図の描かれていた紙を
もう一度見ようとするが
琶が紙を重ねる音に
かき消される
紙芝居は
終わる
何かが起きたはずなのに
何も思い出せない
その感じだけが
場に残る