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街の喧騒が少しずつ静まりかけた午後、美咲は自宅の部屋でスマートフォンをいじっていた。最近、友達から聞いた「功徳アプリ」の話が頭から離れない。善行を行うことでポイントを貯め、特典を得られるというそのアプリは、まるで夢のようだった。
「ねえ、美咲、やってみない?」と健太がLINEでメッセージを送ってきた。
彼の言葉に背中を押され、美咲はすぐにアプリストアを開いた。そこには、ポップなデザインのアイコンが表示されていた。「功徳アプリ」と名付けられたそのアイコンは、何か魔法のような魅力を放っていた。
インストールを終え、アプリを開くと、初めての画面に「善行を行い、ポイントを獲得せよ!」というメッセージが現れた。美咲はワクワクした気持ちでいっぱいになり、すぐに「開始」をタップした。
「ユーザー名を設定してください」との指示に、美咲は「Misaki」と入力した。画面が変わり、次のメッセージが表示される。「最初の善行を入力してください。」
何をしようか考えながら、美咲は目の前の窓の外を見る。犬が通りを横切るのを見た彼女は、「隣の家の犬に餌をあげる」と入力した。次の瞬間、画面が光り輝き、美咲のスマホが震えた。
「おめでとう! あなたの善行が認められました。5ポイント獲得しました!」と画面に表示される。美咲は嬉しくなり、「こんな簡単にポイントがもらえるなんて!」と心躍らせた。
その夜、友達と遊ぶ約束をしていた健太に、このアプリのことを話した。「面白いよ! 一緒にやってみようよ!」と彼女が勧めると、健太も興味を持った様子で「じゃあ、俺もインストールする」と返事をした。
翌日、学校での昼休み、美咲は健太と一緒にアプリを使ってみることにした。彼もすぐにアプリに夢中になり、次々と善行を入力していく。「ゴミを拾った」「友達に優しくした」など、簡単なことでポイントがどんどん増えていく。
「こんなに簡単にポイントが貯まるなら、もっといいことをしよう!」と健太が提案し、美咲もその気になった。
だが、気がつくと周りの友達の様子が変わっていることに気づいた。誰もが「功徳アプリ」の話をしていたが、その目はどこか熱を帯び、狂気すら感じさせた。美咲はふと不安が胸をよぎったが、アプリの楽しさがそれを打ち消していた。
放課後、美咲の家に帰る途中、彼女は不気味な感覚に襲われた。周りの街が異常に静まり返り、どこか異質な空気が漂っていた。スマホのバイブレーション音が鳴る。
「新しい善行を行ってください」との通知が画面に表示される。何か悪いことが起こる前兆のような気がして、心臓が高鳴った。だが、好奇心がそれを上回り、美咲は再びアプリを開いた。
「次の善行を入力してください」との指示に、美咲は自分の手を震わせながら「一人を助ける」と入力した。しかし、何かが引っかかり、急に不安が押し寄せてくる。周囲の景色が歪み、薄暗い影が彼女の後ろを過ぎ去った。
美咲は振り返ったが、誰もいなかった。再びスマホが震え、画面には「あなたの選択が運命を決める」と表示された。彼女は目を見開いた。恐怖が彼女を襲った。
「このアプリ、本当に大丈夫なの?」と、美咲は呟いた。しかし、アプリは彼女を魅了し続けていた。
この瞬間、彼女の運命は、小さな「善行」を入力したその瞬間から、思いもよらない道へと進んでいくことになるのだった。