テラーノベル
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美鶴はスダの視線を振り払うかのように、べらべらと話し続ける。「まあ、こういうのってね、楽しいんだよ。こいつらバカみたいに踊るしさ、簡単に利用できるし。信成子ちゃんもさ、結局俺たちに……」
その瞬間、時雄が爆発した。
「信成子を……返せ……!!!」
怒声とともに、時雄が美鶴に飛びかかる。その手には、隠し持っていた包丁。異常な速さで振りかざされる刃が、教室の空気を引き裂く。
「おっと……」
美鶴は咄嗟に後ろへ飛び退く。彼の顔には驚きはない。むしろ、笑みすら浮かんでいる。
「へえ……やるじゃん。さすが日頃からいじめの先頭に立ってただけのことはあるな。でもさ……」
時雄は何度も、何度も包丁を振り下ろす。しかし、美鶴は驚くほど冷静に避け続ける。
「俺、地味に見えてもさ、極真空手やってたもんでね」
挑発するように美鶴は笑う。その言葉が時雄の神経をさらに逆撫でし、彼の動きはより乱暴になっていった。
周囲の者たちは、誰も止めようとしない。
源喜も、華子も、そしてスダも。
華子は一瞬、動こうとした。しかし、時雄の狂気じみた表情を見た途端、息を呑み、硬直する。木刀を握る手がわずかに震えた。
「信成子……返せぇぇぇぇぇ!!!」
時雄の叫びとともに、包丁が再び振り下ろされる……その瞬間だった。
美鶴の手が、素早く懐へと伸びる。
次の瞬間、銀色の光が閃いた。
「……あ?」
鈍い音とともに、時雄の体が揺れる。
美鶴の手には、小型のナイフが握られていた。刃は赤く染まり、時雄の脇腹から血がじわりと広がっていく。
「お前ら、バカだよ……本当に……」
美鶴はつぶやき、乾いた笑みを浮かべた。
時雄は呻き声を上げながら後退し、やがて崩れ落ちる。
「こんなもんだよな、お前らの……」
美鶴が吐き捨てようとした、その時だった。
ゴッ!
強烈な衝撃が、美鶴の顔面を打ち抜く。
「黙れ、このクソ野郎……!!!」
源喜の拳が、美鶴を殴り倒した。
美鶴は床に転がり、鼻血を噴き出しながら呻く。痛みに顔をしかめながら、ゆっくりと起き上がろうとするが、その前に源喜が彼の胸ぐらを掴み、さらに拳を振り上げた。
「時雄! 時雄!!!」
源喜は振り返り、時雄のもとへ駆け寄る。しかし、その腕の中で、時雄は弱々しく呟いた。
「……信成子……最近、様子おかしくってよ……俺のこと、避けてばかりで……させてくれなくて……」
教室が凍りついた。
「……おい、時雄……?」
源喜の声がかすれる。周囲のメンバーの顔が青ざめていく中、時雄はさらに続けた。
「無理やり……しちゃったんだよ……俺……最低、最悪だよな……」
涙が一筋、頬を伝う。
「信成子……ごめん……な……」
その言葉を最後に、時雄は静かに息を引き取った。
誰も声を発さない。
教室に訪れた沈黙が、あまりにも重く、残酷だった。
スダは、一歩下がる。そして、冷めた目でその光景を見つめた。
「結局……こうなるんですよね。いつだって、バカが……」
スダの言葉が、虚しく教室に響き渡った。
コメント
1件
うわ……これ、読んでてすごく重かった……。 時雄が「信成子を返せ」って叫んでたのに、最後に自分が無理やりしたって告白する展開、本当に胸が痛い。ずっと被害者っぽく振る舞ってたのに、実は加害者だったっていうどんでん返しが残酷すぎる。源喜が殴ったあとの静寂も、スダの冷めた言葉も、全部が重くのしかかってくる感じがしたよ。 麻木香豆さんの作品は、やっぱり読者を楽にさせてくれないね……でも、その「闇」をちゃんと描くからこそ、心に残るんだと思う🤍🥀
#デスゲーム
Mr.J
154
しょうまる
観測者l!!@人狼ゲーム中
98