テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
第一話 落ちたバトン
昔、じいちゃんはよくこう言ってた。
『陸上リレー』において重要なのは、
個人の速さ?技術?
ーー否、バトンを繋げることだ。
この意味を、ハルキは”まだ”理解していなかった。
ーーーーーーー
中学最後の大会、俺はバトンを落としてしまった。
いや、正確には落ちたのではなくーー相手が受け取るのが遅すぎたせいで、悔しさよりも苛立ちが大きかった。
リレーなんて、結局は個人戦だ。
速く走れれば勝てる。バトン?そんなの後で何とかなるーーそう思っていた。
スタートのピストルが鳴る。
体の奥から力が湧き、風が耳をかすめる。地面を蹴る足の感覚が心地いい。
「俺は速い」——胸の中で笑みが浮かぶ。
最初のカーブを抜け、次の走者にバトンを渡す地点が近づく。
腕を伸ばし、バトンを差し出す。
だが、相手の手は微妙にずれていた。
「早く!」心の中で叫んだ瞬間、バトンが俺の手から滑り落ちた。
時間が止まったような気がした。
バトンは地面に当たり、弾んで転がる。
観客のざわめきが遠くで響く。
俺の胸は、怒りと苛立ちでいっぱいだった。
「なんでとらねぇんだよ!」
そう叫んだ瞬間、現実の重さが胸にのしかかった。
勝てると思っていたものが、指の間からこぼれ落ちていった。
コメント
2件

おぉ、また新しい創作だ! 文才ありまくりだね! 続き楽しみ(≧∀≦)💕