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――今日は、新入生歓迎の「模擬戦」。
広大な森の奥、いつもは霊退治の実技場として使われる場所に、学園中の生徒たちが集まっていた。
「なぁ、あの2人がSランクらしいぞ」
「マジ?あんまり強そうに見えないけど」
「夜道遥と赤花梨亜……なんか静かで地味じゃない?」
ざわつく観客たち。その視線の中心に、遥と梨亜が並んで立っていた。
梨亜「……また見られてる」
遥「……仕方ない」
ふたりとも、まるで気にしていないような顔。けれど、その周囲の空気だけがひんやりと張り詰めていた。対戦相手はAランクのペア。
実力者として知られ、期待もされている生徒たちだ。
「へぇ、Sランクってどんなもんか、見せてもらおうか」
――開始の合図が森に響いた。
先に動いたのは、対戦相手のAランクペア。
男は両手から火炎弾を、女は風の刃を発射してくる。
「ハッ! これで終わりだろ!」
だが――
遥は一歩も動かず、刀を軽く抜く。
「──散れ」
シュン、と音もなく斬撃が走り、
放たれた炎も風も、一瞬で斬り裂かれて霧散した。
観客席「……え、今なにした……?」
敵の男「チッ、じゃあこれはどうだ!」
次は地面から霊を召喚し、遥たちに向けて襲わせる。
だが――
「眠って」
梨亜が杖を軽く振ると、桜色の光が優しく霊たちを包む。
まるで春風のように、霊たちは苦しむことなく光に溶けた。
敵の女「っ……うそ、浄化速度が速すぎる!」
「……さ、どうする?」
梨亜が遥に問いかけ、遥は小さくため息をつく。
「さっさと終わらせるか」
遥の刀が淡い光をまとい、
次の瞬間、彼は敵ペアの前に瞬間移動していたかのように現れた。
「なっ、いつのま――」
ズバンッ!
敵の男の持っていた武器ごと、霊力で無力化され、
彼は吹き飛ばされる。
同時に梨亜の放った桜色の光線が敵の女の足元で爆発し、
風のバリアごと消し飛ばした。
敵ペア「……ま、負けました……」
◆ ◆ ◆
シーンと静まり返る森。
誰もが呆然とする中、遥は鞘に刀を収めた。
「……もういいか?」
梨亜は小さく笑って、杖を肩にのせた。
「……また目立っちゃった」
◆ ◆ ◆
その静寂を壊したのは、いつものあの男だった。
「おーーーい! 遥ー! 梨亜ー! かっこつけすぎーー!」
奏太が走ってきて、2人の肩をガシッとつかむ。
「もーちょい手加減しろよな! みんなビビってんじゃん!」
遥「……うるさい」
梨亜「……でも、ありがと」
奏太が笑って、森の緊張感がようやく和らいだ。
こうして、ふたりの「本物の力」は、
新入生・上級生、すべての目に焼き付いた。