テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
2,995
739
「、うわぁあっ!?…めめ、何でおんの?!」
お手洗いから戻ってきて、楽屋のドアを開けた瞬間、俺は文字通り飛び跳ねた。
だって、今日は俺1人の番組収録。誰も居ない筈の俺の楽屋のソファに、当たり前みたいな顔してめめが座っていたから。しかも、机の上に置いてあったスタッフさんたちが用意した個包装のお菓子を勝手につまみ食いしながら。
「…んっ?」
もぐもぐと口を動かしながら、めめが不思議そうに首を傾げる。
「いや、ん?ちゃうねん。何でおんのって聞いてんねん。」
ちょっと考えるように《んー…、》と天井を仰ぎ見るめめは、
「………時間被ってたし、会いたくなったから?」
暫くして、その長い睫毛の奥にある瞳が、じっと俺を捉えた。そしてふっと微笑むその顔に心臓が小さく跳ねる。
「康二はどこ行ってたの?」
「普通にトイレ。」
「ふーん。」
「聞いといてそのリアクションかい!」
つれない返事にツッコミを入れつつ、俺はめめの隣に腰を下ろした。すると、めめは当然のように、また同じお菓子を手に取ってカサカサと開け始める。
「っちゅーか、自分とこのを食べや…まあ、ええけど。」
文句を言いつつも、隣におるのが嬉しくて結局許してしまう俺に、
「はい。」
めめは新しく開けたお菓子を指で摘むと、俺の口元に差し出してきた。条件反射で俺があーんと口を開けると、それを中に放った。
「これ俺、結構好きなんだよね。」
「うん、…確かに美味いわ。もう1個取ってや。」
味を噛み締め、飲み込みながら頷く。めめ側に置かれていたお菓子たちを指さして追加を頼むと、めめは《ん、》と短く返事をして次の個包装を破り、俺に真似をさせるように自分の口を開いた。
まるでペットに餌付けするかのように、ゆっくりと俺の口元へ近付いてくるその手。俺も口を薄く開き、その手に顔を近付けた…その瞬間。
めめが不敵に笑ってスッとその手を引くと、それは包装の袋の上に置かれた。
その手を目で追って《あれ?》と思った時には、唇に柔らかいものが触れていた。
「!!」
不意打ちのキスに、目を見開く。少しだけ顔を離しためめは悪戯が成功した子供みたいに、僅かに色気を残した目をしながら俺を覗き込んできた。
「…どう?好き?」
優しい低音が耳に心地よく響く。
何やそれ…お菓子の味なんて、もう全部どこかに飛んでいってもうたやん。
心臓がバクバクうるさくて、顔が熱いのが自分でもよく分かる。でも、ここで引くのはなんか悔しい。俺はめめの服の裾をぎゅっと握り締めて、上目遣いで呟いた。
「…おん。…もっかい。」
俺の言葉にめめが満足そうに目を細めたかと思うと、今度はさっきよりも少し深く、優しく唇を与えられた。
「ん、ふ、…はぁ、っん…、」
お互いに目は閉じずに見つめ合いながら交わす口付け。
めめの顔が直ぐ目の前にあって、その強い瞳に見つめられているだけで、頭の芯がとろとろに溶けてしまいそうだ。角度を変える合間に吐き出す息も熱い。
めめの服の裾を握り締めていた俺の手は、更に力が入っていた。
ちゅ、と小さな音を残して唇が離れ、余韻に尚も見つめ合っていると、俺は不意にハッとした。
「…、ここ楽屋やって一瞬忘れとった…。」
顔を両手で覆ってなんとか絞り出したのは、自分でもびっくりするくらい蚊の鳴くような声だった。
「あっはは!…大丈夫だよ。マネージャーには暫く戻らないでって言ってあるから。」
「なっ、確信犯やん!」
というか、もう完全な計画犯やんか!
顔を上げてぷく、と片頬を膨らませ、睨み付けるように抗議するけど…めめは優しく微笑むだけ。
その大きな片手で俺の頬を包み込むと、親指の腹でそっと唇をなぞってきた。その指先が触れただけで、背中にゾクゾクッと甘い電流が走る。
「だって、折角2人きりになれたんだから。もっと康二に触れたいじゃん。」
「…またそういうことをサラッと言う…!」
恥ずかしさが限界突破した俺は、めめの顔を見ていられなくなって、そのまま彼の広い胸元にごん、と額を預けた。耳まで真っ赤になってるのが、自分でもハッキリ分かる。
めめの心臓の音を間近で聞きながら、俺はもごもごと小さな声で呟いた。
「…なぁ。お菓子、まだ食べる?」
なんとかこの照れくさい空気を誤魔化そうとしたのに、頭の上から降ってきたのは、意地悪く弾んだめめの低い声。
「んー?もういいかな。」
俺の腰にめめの腕が回って、ぐいっと彼の方へ引き寄せられた。密着する体温が更に熱い。
「今の康二の方が甘くて美味しそうだし。」
「っ、めめのアホっ…変態!」
あまりのセリフに、俺はめめの胸元をポカポカと拳で叩いた。でも、彼はそれを愛おしそうに受け止めると、俺の顎をそっと引き上げてもう一度顔を覗き込んでくる。
「…でも、好きなんでしょ?」
あ、これ、もう逃げられへんやつや。
覚悟を決めるよりも早く、今度はしっかりと腕の中に閉じ込められて、深くて熱いキスがゆっくりと降ってきた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!