テラーノベル
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『フォアグラのポワレ バルサミコソースと季節の果実』だ。
外側はカリッと香ばしく焼き上げられ、中は驚くほど瑞々しいフォアグラ。
ナイフを入れれば、濃厚でとろけるような脂の甘みが溢れ出す。
そこに、じっくりと煮詰められたバルサミコソースのコクと、添えられた果物の鮮烈な酸味が絶妙に絡み合い、味覚の境界線を溶かしていく。
そのあまりの幸福感に、抗う暇もなく思わず「ふぁあ……」と情けない声が出てしまった。
「ふ……だいぶリラックスしてきたんだな」
尊さんの楽しげな指摘に、ハッとして我に返る。
「こ、これは違くて……!」
さっきまでの優雅な気分がどこかへ飛んでいくほど恥ずかしくなり、熱くなる頬を両手で必死に抑えた。
けれど、そんな俺の失態を責めるどころか、尊さんは慈しむように、そして本当に嬉しそうに小さく笑ったのだった。
いよいよコースも中盤。
そうこうしているうちに、流れるような手際で次の皿が運ばれてくる。
『カリフラワーのポタージュ トリュフの香りをほんのり』
真っ白な磁器の器から、揺らめく湯気と共に立ち上ったのは、大地の力強さを感じさせるトリュフの芳醇な香りだ。
その香りに包まれるだけで、五感がじわりと解きほぐされていく。
黄金色に輝くポタージュをスプーンですくい口へと運べば、シルクのように滑らかな舌触りが広がり
飲み込んだ瞬間に鼻腔から深みのある複雑な味わいが駆け巡った。
「なんだか温泉に浸かってるみたいです」
思わず口を突いて出た独特な表現に、尊さんが「温泉?」と可笑しそうに眉を上げた。
「いや、そのくらい……リラックスして飲めちゃいます。全身の力が抜けていくというか……」
俺の拙い説明を聞き、尊さんは「そりゃ良かった」と短く返すと
愛おしそうに目を細めてポタージュを口にし、その余韻を楽しむように静かに目を閉じていた。
コースはいよいよ佳境に入り、料理はさらに豪華さを増していく。
『オマール海老のロースト アメリケーヌソース 季節野菜のグリル添え』
鮮やかな朱色に焼き上げられた大ぶりの海老。
ぷりっぷりと弾けるような身に、海老の旨みを凝縮した濃厚なアメリケーヌソースがたっぷりと絡まっている。
ナイフを通すたびに跳ね返るような弾力があり、噛むごとに潮の香りと凝縮された甘みが溢れ出した。
付け合わせのグリルされた焼き野菜も、素材本来の甘みが引き出されており、香ばしさと共に確かな満足感を与えてくれる。
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