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コメント
1件
comiさん、第24話まで一気に読了しました……😭💕 戦いが終わった静けさの中、白装束の男たちが浄化されて呆然と立ち上がる場面、凄かったです。ただ倒すだけじゃない、ジントの力が本当に“救い”だったんだと分かって、胸が熱くなりました。それに、ハヤトたちが涙をこらえながら笑い合うラスト――「みんなすごい顔してる」で思わず私も泣き笑い。満ちた月明かりが、傷だらけの5人を包む光景が瞼に焼き付いています。本当にお疲れ様でした、という気持ちでいっぱいです🌙
第十五章 二つの目覚め
第十四話 満たされた光
月明かりに照らされた二人の影は、
一つに重なったまま決して離れることはなかった。
森を吹き抜ける夜風が、涙で濡れた髪を優しく揺らす。
先ほどまで激しくぶつかり合っていた魔力の気配は、もうどこにも存在しない。
木々のざわめきも虫の声もどこか遠く感じるほど、その場には静かな余韻だけが残っていた。
「……う……っ」
微かな呻き声。
ハヤトがハッと振り返る。
倒れていた白装束の男達が、ゆっくりと目を開け始めていた。
地面へ散らばった杖や剣。
折れた矢。
泥と血で汚れた白装束。
けれどその瞳にはもう、先ほどまでの狂気も敵意もない。
ただ、長い悪夢から目覚めたかように、呆然と前を見つめていた。
ジュウタロウとシュンタが、重い足取りでハヤトの元へ歩み寄る。
三人とも髪は乱れ、衣服は破れ、腕や顔には大小の傷が走っている。
長い戦闘で、いまだ肩は大きく上下していた。
「……ジントの力か……」
ジュウタロウが静かに呟く。
銀色の瞳が、白装束達を見つめていた。
「ああ……」
ハヤトもまた、信じられないものを見るようにその光景を見渡す。
「人の中に溜まった闇まで……
浄化したようだ……」
その声には、驚きと、畏れと、そして僅かな安堵が滲んでいた。
「ほんま……」
シュンタが深く息を吐く。
張り詰めていた緊張が、ようやく解けていく。
「みんな、無事で良かったわ……」
真紅の瞳が、自然と二人へ向く。
そこには、月明かりの下、互いを強く抱き締め合ったまま、涙を流すジントとダイチの姿。
その時だった。
一人の白装束の男が、ふらりと立ち上がる。
フードが落ち、顔が露わになった。
ラディスの大神官、教会幹部の男。
だがその顔に、以前の冷たい威圧感はもうなかった。
虚ろな瞳。
震える唇。
男は、自分の両手を見る。
まるで、初めて血の付いたその手へ気付いたように。
「……私は……何を……」
掠れた声が、静かな森へ溶ける。
ハヤトはゆっくり男の前へ歩み寄った。
月光が、その金髪を淡く照らす。
そして真っ直ぐ、男を見据えた。
「お前達のしたことは、決して許されることではない」
静かな声。
だがその奥には確かな怒りが宿っていた。
「この償いは、帝国で必ずしてもらう」
男の肩がビクリと震える。
しばらく目を伏せたまま、やがて小さく頷いた。
そしてその背後、魂の抜けたような顔でハヤトを見る男。
「………」
その赤い目には、もはや何の意思も感じられなかった。
やかて意識を取り戻した白装束達が、互いを支え合うように立ち上がる。
誰ももう、武器を取ろうとはしなかった。
男達は倒れた仲間へ肩を貸しながら、静かに森の奥へ姿を消していく。
月明かりに照らされた白装束が、暗い森へゆっくり溶けていった。
再び、静寂が訪れる。
冷たい夜風。
木々のざわめき。
遠くで小さく鳴く夜鳥の声。
その全てが、長かった戦いの終わりを告げているようだった。
抱き合ったままのジントとダイチ。
そこへ、ハヤト達三人がゆっくり歩み寄る。
二人が顔を上げた。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔。
目元は真っ赤で、子供のようにしゃくり上げるジントは、息もまだ上手く整っていない。
「っ……ふっ……」
それを見た瞬間、ハヤトが思わず吹き出す。
「二人とも……ひとい顔だぞ……」
シュンタも涙目のまま笑った。
「ホンマや……せっかくええ雰囲気やった……の、に……」
その瞬間だった。
シュンタの顔が、ぐしゃりと崩れる。
「……っ……ホンマに、良かった……!!」
大粒の涙が、次々と溢れ落ちる。
「みんな……生きとる……ぅっ!!」
顔を覆い、肩を震わせながら嗚咽を漏らす。
ハヤトとジュウタロウが、そっと両側からシュンタの肩を抱いた。
ハヤトの黄金の瞳も、月明かりを受けて揺れている。
「ああ……みんな……」
声が掠れる。
「……よく、耐えたな……!」
ジュウタロウもまた、目を赤くしたまま空を見上げていた。
必死に涙を堪えている。
けれどその横顔は、心からの安堵で穏やかに微笑んでいるように見えた。
シュンタの嗚咽につられるように、
ジントとダイチも再び涙を流し始めた。
みんなで抱きしめ合う。
泣いて。
笑って。
息が苦しくなるほど泣いて。
なのに次第に、その様子がおかしくなってくる。
「……なんやねん……その顔……!」
「うっ……ダイチこそ……!」
「……せっかくの男前が台無しや!」
「自分で言うな」
「……ははっ!みんなすごい顔してるぞ!」
涙声のまま笑い合う。
5人の笑い声が、静かな森へ響いていく。
頭上には、満ちかけた大きな月。
その優しい光が、傷だらけの5人を静かに照らしていた。
これまでのどんな魔物との戦いよりも、辛く、長かった戦い。
けれど今こうして、5人が生きて、笑っている。
それだけで、世界の全てが満たされているような気がした。
第十五章 完