💙「ううう…眠れないぃぃぃ」
昼間に深澤から聞いた幽霊話。その夜俺は怖くて、眠れなかった。風が強い。さっきから木の枝が窓を叩いている…んだと思うけど、怖くて窓の方を見れない。布団を被って頑張って目を閉じる。哀しいことに、睡魔はなかなか訪れてくれなかった。
ミシ、ミシ、ミシ…。
💙「きゃあ!」
廊下をゆっくりと人が歩く足音がした。
…………誰?
お化けは足がないはずだから大丈夫!と自分に言い聞かせてなんとか平常心を保とうとするが、そのハリボテの平常心も、足音が部屋の目の前でピタッと止まった瞬間に崩れ去った。
💙「やだ怖い来るな来るな来るな来るな来るな」
神様仏様パパママまじで助けて………
ガチャ。
💙「ヒィィィィィ」
喉から声にならない声が漏れた。ドアが内側に開き、何かが入って来た気配がする。
俺は恐ろしくて、布団の外を見ることができない。
お化け?人?
どっちにしろ怖い……。
それでも勇気を振り絞っておそるおそる布団をめくって、目だけ出そうとしたら、いきなり掛け布団を奪われた。
バッ!!!!!
💙「ひゃあっ!!!!!!!」
喉から息が漏れて、変な声が出た。
真っ白い、でかい…………物体が急に抱きついて来た。
🤍「まま………まま………」
💙「…………らう?????」
ラウールは、そのまま俺を押し倒すと、頬擦りしてきた。大きな目からは涙が流れている。
💙「おい、ラウール!」
🤍「まま…」
まま、しか言わない。
ままって、ママ?てか、重い。でかいラウールの全体重が俺の身体にのしかかって来ているのだから。
時計を見たら時刻は2時半。みんなもう寝静まっている頃だ。
🤍「ママ……大好き…スゥ」
ラウールは、俺に抱きついたまま、寝てしまった。一生懸命、引き剥がそうとしたが、力が強すぎて無理だった。抵抗している間に力尽きた俺も、いつのまにか眠ってしまった。
チュンチチチチチ。
💙「さむっ!!」
朝になり、日光の明るさと寒さで目が覚めた。日曜の朝。寝床には俺とラウールが寝ていた。布団は掛けていなかった。てか、怪力のラウールによって、掛け布団が戸口の方まで飛ばされている。ラウールの美しい顔が目の前にある。 どぎまぎした。
💙「おい、起きろ、ラウール」
ペシペシ、と優しく頬を叩くと、長い睫毛がピクピクと動き、ラウールがゆっくりと目を開いた…。
🤍「……あれぇ?だれぇ?」
甘えた声で、腹のあたりをさわさわされる。くすぐったくて、思わずのけぞった。
🤍「え?あ!渡辺さん????」
ラウールが、俺に気づくなり、飛び起きて、離れた。
ふう。やっと、重たいのがどいた。てか、一晩中乗っかられてたから肩凝ったわ。
🤍「ごごごごごごご」
ラウールがどもりすぎて、ごを連呼している。顔は真っ赤だ。ごめんなさいと言いたいのだろう。
🤍「すすすすすすすすすす」
今度は、す。壊れた人形みたいになって、頭を下げた。
💙「いいよ。もう寝呆けるなよ?」
俺は起き上がって、掛け布団を取ると、また布団に入った。
💙「日曜だから、もうちょい、寝る。あ、ドア閉めてって」
俺は今度こそ熟睡すべく、横になった。白いパジャマ姿のラウールはもう言葉を発するのは諦めて、そのまま背中を丸めて部屋を出て行った。
パタン。
💙「ママって、ガキか。それにしても、変なとこ触られそうになって焦ったわ」
入寮してからまだ鍵が壊れたままの俺の部屋。起きたら寮母さんに言って、修理を急かそうと思った。
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