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俺様生徒会長に鳴かされて。

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俺様生徒会長に鳴かされて。

43 - Last Lesson わたしは、あなただけの小鳥 13

♥

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2025年03月09日

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ドレス姿を披露するのはこれが初なんだけど、なんか、おかしかったかな…?

ああ、でももう気にしても仕方ない…!

彪斗くん、ううん…王子様が、ゆっくりと近づいてくる。

黒髪はいつもよりハードなワックスで撫でつけていて、いつもの色っぽさに凛々しさが加わって、すごくかっこいい…。

でも、その目は…わたしに留まっているけど…本当は見ていないみたいに、とても遠くて…冷たさまで感じた…。

やっぱり…怒ってる…のかな…

背筋が、さっと冷えて。泣きだしてしまいたくなるような気持ちに襲われる。

また棒のように足が固まってしまったわたしの前に来ると、彪斗くんは跪いて、顔を伏せたまま言った。

『麗しい姫君。俺と、踊っていただけますか』

はい…とうなづいて、わたしは差し出された彪斗くん手を、そっと取った…。

一週間ぶりに感じる、楽器にふれて硬くなった、彪斗くんの指先。

それでも…ふれた瞬間、たった数日の空白だったのに、懐かしさが溢れかえってきて、胸がいっぱいになる。

彪斗くん…会えて…うれしいよ…。

音楽が流れてきて、わたしは腰を大きく沈めて、ふかぶかと頭を垂れた。

ゆっくりと腰を上げ、背筋を正し、手を握り合い、わたしは彪斗くんの肩へ手をのせ、彪斗くんはわたしの腰を引き寄せる…。

その手つきは、表情とは真逆に、すごくていねいで、やさしかった。

まるで、壊れものでも扱うかのように…。

胸の苦しみは、その想いを感じた途端、キリキリと切ない痛みに変わった。

ごめんなさい、彪斗くん…。

怒らせて―――傷つけてしまって、ごめんなさい。

不安、だったんだよね…。

彪斗くんも、怖かったんだよね…。

でもわたし、信じてたよ…。

彪斗くんは、必ず来てくれるって、信じてた。

彪斗くん、観てくれた…?

わたしね、こんな大勢の、しかもすごい人たちがたくさんいる前で、おっきな失敗もしないで、シンデレラを演じてこれたんだよ。

彪斗くんの、おかげで…。

無表情を作っている彪斗くんを見上げ、わたしは微笑みを浮かべた。

微かに、その形のいい眉が動くのを見て、さらにわたしは、彪斗くんだけに聞こえるように、小さな声でそっと言った。

「よろしくおねがいします」

1 2 3…

ステップを踏み始める。

1 2 3…

一見優美に見えるワルツだけど、意外にステップは早く、勢いが必要。

『その方がドレスが花のように広がって、美しく見えるからだよ』

そう教えてくれた雪矢さんと、この一週間、猛特訓を重ねた。

雪矢さんだけじゃなくて、基本的なリズムや姿勢の取り方も、寧音ちゃんからみっちり仕込んでもらった。

だから、彪斗くんの早いリードにだって、ほら、十分についていけてるし、苦手なターンだって、よろめかない。

離れてターンして、その回転の勢いのまま引き寄せられても、つんのめらない。

ね、わたし上達したでしょ、彪斗くん。

って、驚いた表情を浮かべてばかりいる彪斗くんに微笑むと、

彪斗くんもつられたように、口端を上げた。

やった…やっと笑ってくれたね…彪斗くん…!

わたしね、キスしてもらえて、本音はすごくうれしかったんだよ。

ただびっくりしてしまって…つい、ひどい態度をとってしまった…。

わたしもね、大好きなんだよ。

彪斗くんが、大好きなの…。

ダンス中は、雑音が入らないようにマイクは切られている。

わたしはダンスしながら、そっと小声でささやいた。

「心配したんだよ、彪斗くん。連絡してくれなきゃ、困る」

「…悪かった」

彪斗くんはそっぽを向いたままぽつりと返した。

うれしくなって、わたしは笑顔をこぼしながら続ける。

「でも、良かった、間に合って…。わたし、ダンス、上達したでしょ?」

「ああ。がんばったんだな」

からかうでも、お世辞を言うでもない素直な口調に胸がいっぱいになるのを感じながら、

わたしはうん、うん、と何度も小さくうなづく。

「そうだよ…今日この日のために、がんばったんだよ」

「ん…」

「彪斗くんとこうして踊るために、がんばったんだよ」

「ん…」

そしてちかづく、最後の見せ場。

低い成功率のまま、本番まで来てしまったパート。

抱きかかえてもらいながら、ぐるりと一回転、そして降りて、ターンして、その勢いのままターンしながら戻って…抱き寄せられて、静かに終わるはずなんだけど…

あ…!

やっぱり、彪斗くんとの距離感が上手くつかめない…。

中途半端な所でターンが終わり…

このままでは、抱き止めてくれる人がいなくて転んでしまう…!

と焦ったけど…そんな無様な事態に陥ることはなかった。

わたしは彪斗くんの腕の中にいて…きつくきつく、息もできないくらいきつく、抱き締められていたから。

彪斗…くん…。

その熱にすっぽりと包まれるわたしの耳元で、掠れた声が絞り出される…。

「ごめんな…俺…傷つけて…ごめん…。ごめん…」

こんな声の彪斗くんは初めてで…。

こんなに泣きそうな彪斗くんは初めてで…。

すべての想いが詰まったその一言に、わたしも涙をこぼしそうになる。

ううん…いいの。

いいの。

大好きだよ。

彪斗くん。

もう、どこにも行かないで…。

行かないでね…。

抱き締め返そうと、腕を伸ばしたところで、はっとなった。

俺様生徒会長に鳴かされて。

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