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第1話
某県。
外が冷え込む真冬のコンビニの中、レジ打ちをしている。
かれこれ、大学生になってからだから……まだ九ヶ月とちょっとだ。
十二月中旬の寒さをなめてはいけない。
「いらっしゃいませ」
「紗奈ちゃん。こんにちは」
そう言って、缶コーヒーとタバコをレジに置いたのは、常連の川田さん。
私が知る限り、毎日来る。というか、私がバイトに来た時は必ずと言ってもいい程、川田さんの缶コーヒーとタバコのバーコードを読み取る気がする。
川田さんは、中年太りの四十代の会社員だ。指輪をしてないから、バツイチか、独身かだと思う。偏見かもしれない……いや、偏見だけど。
……何かと、距離が近くて苦手。だけど、それを理由にひいきするわけにはいかない。一応、業務内容だし。
「紗奈ちゃん。何が好きなんだい?」
「……暖かい紅茶と、安眠ができる場所です。八百八十円です」
「分かった。今度、差し入れしてあげるよ」
ニコッと、私に圧をかける。押される圧は苦手だ。
私は、どこからカスハラかも分からないし、もしそうなっても、あのシングルマザーは何を言うことやら……
……カスハラなの? パワー……いや、セク……うぅ〜ん……
「……いえ、お気持ちだけ――」と私が言いかけた所で「ありがとね」って言いながら川田さんはコンビニを避った。
……はぁ?
一方的なありがとうは、嫌いですけど。
「次の方どうぞ」
私は、ため息交じりに言いながら次の人のレジ打ちを始めた。
「お疲れ様でした〜」
私が、ぼんやりと帰る支度を始めていると、一人の女性がそう言ってコンビニから出て行った。
一つ年下の高校生。田中唯。
……放っておいてもいい面倒事を全部首を突っ込む、ちょっぴり、天然な子。憎めないし、話してみるといい子だし、あの人より断然いい。
「今日も、中年太りのスーツ男で詰まっていました。今度から気を付けてください」
私の隣に立って、耳打ちしているマスク姿の私より根暗な人が……そのあの人だ。
距離は……別に、どうでもいい。近過ぎというわけでもないし、私の事を詮索するわけでもない。
……只、少し口うるさいし、話せるようなオーラじゃ無い。
一ヶ月前に退職した、椎名さんの次の店長――澤部さんだ。
スマートで、スパダリで、顔立ちもいいし、何より……本社のエリートから、この田舎にある支店の店長。
国立大学出身で、本社に就職も……上からの指示で入社三年目でここに来たらしい。
頭もカチカチで、表情も変わらな……いや、鋼の仮面を被っている私が言えることでもないか。
「何かあったら、店長の責任です。トラブルなら、早めに相談してください」
……まだ、何も起こってないから……
「お気持ちありがとうございます。少し、話し相手が欲しいのか、毎日話しかけられますけど……大丈夫ですよ」
……これ以上、事を大きくするな。
と遠回しに行ってみたけど、伝わってるかどうかは不明。
私は、作り笑いを店長に向けて「店長の方が歳も、立場も上です。敬語は外していただけると、こちらも気持ちとして楽なので、お願いします」と言い捨てて、「お疲れ様でした」と他の人に言いながらコンビニを出た。
次のシフトの日。
あれから数日空いた。
ほかの仕事も、家の中でしているけど、他の人には打ち明けてない。
「やぁ、紗奈ちゃん。何日もいなくて、寂しかったよ」
「いらっしゃいませ」
「相変わらずドライだなぁ〜」
そう言って川田さんは、いつものコーヒーとタバコとラッピングされた緑色の袋を渡してきた。
大きさとして、小さなバック一つ分だろう。
……何をしたいの?
そんな、視線を送ったら、「八百八十円でしょ? はい」と青色のトレーに八百八十円ぴったり置いて、タバコとコーヒーを持ってコンビニの自動ドアをくぐってしまった。
ったく……だから、男らはいつまで経っても……
「あ、大変お待たせしました」
私は、その緑色の袋をどかして並んでいた人のレジ打ちを始めた。
「あ、代わりますよ」
そう言ってくれたのは、唯ちゃんだった。
神様……ありがとうっ!!!
「ありがとう」
私は、何かから解放された気分になって、少しホッとした。
唯ちゃんは、面倒事に首を突っ込むけど、周りを見れる所が私より、大人な感じがする。
可愛らしいし、同い年の彼氏もいるし……私の見本となってほしい。
「あ、これ。忘れてますよ」
唯ちゃんが緑の袋を私に渡してきた。
「あ、うん」
私は、緑色の袋を受け取って裏に入った。
コメント
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こはるさん、第1話読みました🌙 紗奈ちゃんのバイト先の人間関係、すごくリアルで息苦しくなる感じが伝わってきました……川田さんの距離感、嫌な感じがひしひしと。緑の袋の中身が気になりますね。 澤部店長とのやり取りも、紗奈ちゃんの「これ以上事を大きくしたくない」気持ちがにじみ出てて切なかったです。唯ちゃんは癒しキャラでいい塩梅ですね。 続きが気になります!