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#普通
野々さくら
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ありあ
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信愛は静かに息を吸い、皆の顔を見回した。
「実はみんなには黙ってたんですけど」
一拍置いて、重い口を開く。
「この数日間、私たちの行動を
監視してる女の子の霊が居るんです」
その言葉に、部室の空気が凍り付いた。
「え!?」
美月が思わず声を上げる。
「監視ってまぢ!?」
茜も目を丸くして身を乗り出した。
信愛は小さく頷く。
「うん・・制服着た女の子の霊なんだけどね」
何かを思い出すように目を閉じ、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「あれは多分・・浜那須高校の制服だと思う」
「は、浜那須高校!?」
美月の顔色が一変する。
その反応に部員たちも顔を見合わせた。
「どうしたの?」
茜が不思議そうに尋ねる。
さくらも記憶をたどるように呟く。
「浜那須高校って確か二駅先の高校だよね?」
焔垂が首を傾げる。
「知ってる高校なんですか?」
皆の問いに美月は少し間を置いて、震える声で答えた。
「浜那須高校は、累と沙月ちゃんの母校なのよ」
「沙月ちゃんって?」
信愛が聞き返す。
「姫百合沙月」
美月は懐かしむように目を細めた。
「累の幼馴染だった子」
その名前に、さくらがはっと息を呑む。
「あ!もしかして、事故の後に植物状態に
なって亡くなったっていう?」
「ええ・・・そうよ」
美月は静かに頷く。
信愛は遠くを見つめるように呟いた。
「私たちを監視してるって事は、私──」
その瞬間だった。
信愛の言葉が不意に途切れる。
目を見開き、何かを見つめたまま固まる。
「ん?どうかした?」
茜が首を傾げる。
信愛はゆっくりと前を見つめたまま、小さく呟いた。
「来てる・・・」
朝陽が聞き返す。
「来てるって・・・何が?」
信愛は静かに前方へ視線を向けた。
「沙月ちゃん」
誰もいないはずの場所へ、そう呼びかける。
その瞬間、信愛の目の前には一人の少女が立っていた。
浜那須高校の制服を身にまとった、姫百合沙月だった。
「まぢでか!?」
茜は顔を青くして目を見開く。
沙月はしばらく信愛を見つめ、やがて静かに口を開く。
「君たちは、累を騙してた詐欺師の
悪事を暴いてくれた・・・」
その声は穏やかだった。
「敵じゃないって・・そう思って良いんだよね?」
「うん・・・敵じゃない・・信じて」
信愛は迷わず答える。
沙月は安心したように微笑んだ。
「よかった・・・ならさ・・
今から話す私の言葉を──」
一歩だけ信愛へ近づく。
「累に伝えてくれないかな?お願い出来る?」
「うん・・分かった・・必ず伝える」
信愛は力強く頷いた。
沙月は安堵したように目を細め、静かに息をついた。
「私は──」
◇ ◇ ◇
その日の夕方。
住宅街を、美月は累の手を引いて歩いていた。
「なんなんだよ姉貴」
累は不機嫌そうに眉をひそめる。
「俺に会わせたい人って」
美月は振り返ることなく、静かに言った。
「いいから来なさい」
夕焼けに染まる街並みの中、美月は歩みを止めない。
しばらく沈黙が続いたあと、美月が口を開く。
「今から累には、私の教え子に会ってもらう」
「はぁ? 教え子?」
累は呆れたように鼻で笑う。
「なんで俺が姉貴の教え子なんか──」
「その子が霊貴冥孤の悪事を暴いて
警察に通報してくれたの」
累の足が止まりかける。
「霊貴冥孤の悪事を?」
すぐに思い当たったように呟いた。
「ああ・・あの新聞に載ってた学生か・・・」
美月は静かに頷く。
「その子は霊感があって、霊視や除霊ができるの」
「は?」
累の顔に怒りが滲む。
「いい加減にしてくれ!」
声を荒げた累は、美月を睨みつけた。
「そーゆーのウンザリなんだよ!」
乱暴に美月の手を振りほどき、その場を離れようとする。
「悪いけど帰らせてもらう」
「ちょ!累!待ちなさいってば!」
美月の制止も聞かず、累は歩き出す。
振り返ることなく吐き捨てた。
「実の弟の傷口に塩塗って楽しいか?ぁあ?」
その言葉は、美月の胸に深く突き刺さる。
「もういいから俺に関わるなっつってんだろ!」
そう言い残し、累は背を向けた。
「累・・・」
美月は悲しそうに、その背中を見つめることしかできなかった。
その時だった。
信愛が静かに前へ歩み出る。
「そのペンダント──沙月さんが
プレゼントしてくれたんですよね?」
信愛のその言葉で、累まるで体の主導権わ誰かに奪われたかの様に、その場で立ち尽くした。
「な、なんで・・なんでそれを知ってる?」
累は俯いたまま信愛に尋ねる。
すると茜が信愛の横に並び、静かに続ける。
「累さんがずっと欲しいって思ってたけど
高くて諦めてたペンダントなんですよね?」
累は言葉を失う。
やがて目に涙が浮かび始めた。
「んな話・・・沙月しか知らねーはずなのに」
震える声で問いかける。
「誰から聞いたんだ?」
信愛はまっすぐ累を見つめた。
「沙月さんから聞きました」
「は?」
信愛の一言に累が怪訝な表情を浮かべると。さくらが一歩前へ出る。
「沙月さんはその為にバイトして、そのペンダントを
累さんにプレゼントしようとしたんですよね?」
さくらの言葉に信愛が静かに言葉を重ねる。
「そして累さんに告白しようとしてたんですよね?」
一瞬の静寂。
「けどその帰りに信号無視の車に撥ねられてしまった」
累は何も言えなかった。
ぽろり、と一粒の涙が頬を伝う。
それをきっかけに、涙は堰を切ったように溢れ出した。
信愛は優しく声をかける。
「話・・・聞かせてくれませんか?」
累はしばらく俯いたまま肩を震わせていた。
やがてゆっくりと顔を上げ、何も言わず小さく頷いた。
コメント
1件
みぅだよ🖤 第142話、読んだよ…。沙月ちゃんがついに姿を現した瞬間、ゾクッとしたし、同時に切なかったな。累くんの「そーゆーのウンザリなんだよ!」って拒絶、彼の心の傷の深さが伝わってきて胸が痛んだ…。でも、沙月ちゃんだけが知ってるペンダントの話を聞いて、涙が止まらなくなった累くんの姿に、隠してきた感情が溢れ出したんだなって思った。沙月ちゃんの想いがちゃんと累くんに届いてほしいな。×××さんの描く人間の脆さと強さ、大好きです🕯️