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あれから私達は何度も泣いた。泣いて。泣いて。決意した。
私たちが見た、感じた、体験した事がまた起こるかもしれない。私たちが感じたこの思いをもう、他の人には感じてほしく無い。もう、誰にも傷ついてほしく無い。
だから、私たちは島の不可解な事件を探ることにした。
あの事件から島は騒がしくなった。三島家の夫婦が忽然と姿を消したという話が島中に広がった。
警察も来て、家を調査していた。学校には普通のように行っている。
私と蓮は歩夢の家にお邪魔していた。歩夢は小さい頃に両親を亡くして、今は両親が残してくれた家に一人で住んでいる。歩夢が寂しく無いとはいうけれど、私と蓮は毎日のように歩夢の家に行くのが日課だった。歩夢の家は一人で住むにはものすごく広い、この家に歩夢が一人でいたかと思うと心が痛んだ。
蓮も私も家から大事なものだけ持って歩夢の家に移った。
普通に学校に行けたとしても、胸の痛みは消えない。どんな愛想笑いをしても、愛菜と真里には気づかれてしまった。
「羽沙、本当に大丈夫?昨日は倒れちゃったし。無理してない? 朝から顔色が悪いよ」
「うん…。何かあったらなんでも聞くからね?」
愛菜と真里が心底心配してくれてる。この二人には秘密にしたく無いけど、あんな事話せないよ。
二人とも本当に優しい、だからだ。優しいからこそ私の話を信じてくれて、協力してくれると言ってくれるだろう。でも、二人を危ない目に合わせたくない。
「愛菜、真里。本当に心配ありがとう。でももう大丈夫! 昨日ちょっとしか眠れなかったからかも! えへw」
必死に笑って誤魔化す。そしたら、愛菜が起こった顔で私の手を掴みどこかに連れて行った。真里も後ろからついてくる。
愛菜に連れてこられたのは、東棟だ。去年台風で校舎が大損害になったので、今は使われていない。
こんなところまで連れて来てどうしたんだろう?
「羽沙…… 私たちってさ、そんなに頼りないかな? これでも羽沙と真里のことは大好きな友達だと思ってる。嬉しい時は一緒に喜びたいし、辛い時は助けたい。羽沙が…本当に大丈夫で、自分でできることなら、別に何も言わないよ。羽沙が話してくれるの待つよ? でも、でもね。そんな今にも泣き出しそうな…辛い表情で笑われたら…待つなんて出来ない。
羽沙が、今辛い思いをしているなら。話してほしい。ちからに…なるから。」
愛菜が今にも泣き出しそうな声でそう言ってくれた。真里は、私の手を握りながら泣いて、強く頷いていた。
ああ、なんて…優しいんだろう。この二人に傷ついてほしく無い。辛い思いをしてほしく無い。
笑っていてほしい。でも…でも。望んでいいんだろうか…そばにいてほしいと、言ってもいいのだろうか。二人の顔を見ているうちに涙が頬を伝って落ちた。
私が泣くのを見て愛菜は堪えていた涙が溢れ出すかのように大声をあげて泣いた。
どんな時でも私の側にいてくれた二人、私はこれからもこの二人と一緒にいたい。
「こん…な、私だけど…側にいてくれる?」
「「あたりまえじゃぁぁぁぁん…」」
二人とも大泣きしながら、その暖かい言葉を私にくれた。その言葉だけで私は胸がいっぱいになりほど、暖かく、幸せな気持ちになれた。
二十分くらい泣いた後、三人とも落ち着いてきてベンチに座った。
「初めて授業サボっちゃった」
私がふとそう言うと。愛菜が
「ぷっ、私もw」と笑いながら答えてくれた。
「泣いてから言う言葉?w」真里は呆れながらもそう笑ってくれた。
「ははw あぁ、二人といると飽きないなぁ」
「「同じこと思った‼︎」」
「かぶってるしw」
「やっといつもの羽沙だね!」
本当の事を言って二人を巻き込むのは嫌だった。でも、わがままを言うなら、一緒に解決してほしい。手を貸してほしい。
二人に本当の事を話すことを決心した。
教室に戻らないで、蓮と歩夢を呼んだ。この二人に話す前に歩夢にも蓮にも相談しなければ。
蓮と歩夢は笑顔で了承してくれた。どんなことがあってもこの人達だけは私が守る。そう誓った。
二人に昨晩起こったことを話すために、放課後五人で歩夢の家に向かった。私は道の真ん中に一人立ち止まり。冷たい風が頬を撫でる。俯いて足下を見ていたら小さなアリが私の足の隙間を自分より大きいものを持ちながら頑張っていた。
ふと、思う。私も小さい頃は頑張っていたと思う。
色々なことに挑戦して、子供ながらに夢を追いかけていた。純粋無垢でひたすら真っ直ぐ未来を見ていた。いつからだろう夢への志も、何かが私の中でプツリと無くなってしまった。
「羽沙〜 おいていくぞ〜」
はっ、と自分の世界から目が覚める。顔を上げると蓮がこっちを見て叫んでいた。
「ま、まって!」
みんなを追いかけるように走っていった。
歩夢の家に着いた。鞄を下ろし、みんなでリビングに座る。歩夢がジュースを持ってきてくれた。
私と、蓮と、歩夢で。昨日あったことを全部話した。