テラーノベル
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式場となった大広間は・・・今はあれほど溢れていた人の熱はすっかり消えて、静まり返っていた・・・
緋色の毛氈は綺麗に丸めて片付けられ、誰もいない畳の上にポツンと残されている、金屏風は三つ折りに畳まれて、壁の隅に立てかけられている、神棚の御幣だけが風にかすかに揺れ、まるで先ほどの豪華な式などなかったかのように、そこに佇んでいた
親戚一同は、思いがけないジンの偽装婚の告白の余韻を引きずったまま、それぞれ帰路についた
みや江とすず江はジンの紋付き袴を丁寧に衣装箱にしまい、二人でそれを抱えて旅館の玄関を出た
「ねぇ~え?みや江さん」
「なぁにぃ?すず江さん」
二人はしばらく無言だったが、島の坂道をトボトボ下りながら、すず江がぽつりと言った
「あのひい爺様の紋付き袴・・・まさか、こんな日に袖を通すことになるとはねぇ・・・」
「本当に・・・婿殿とても似合っていたのにね~・・・」
そう言うと、また二人は黙りこくったままトボトボ歩いた、二人の声には咎める色はなかった、どちらかといえば何か大切なものを失ったような残念さがあった
「でもねぇ~?すず江さん」
「なぁにぃ?みや江さん」
今度はみや江がポツリと言った
「あの偽装婚の真実を語っている時の婿殿の涙・・・私ったらなぜかしらねぇ~・・・」
「あら!みや江さんも?」
「おや!すず江さんも?」
フフフッと二人は顔を見合わせた
「なんとかあの二人を結婚させてあげたいと思ったのよねぇ~・・・」
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松吉とフネは旅館の駐車場で、それぞれ帰路に着く親族一人ひとりに頭を下げ続けていた
「本日は誠に・・・みなさんにご迷惑を・・・」
言葉が続かなくなるたびにただ深く頭を垂れた、留袖と紋付き袴のまま、いつまでも
「松吉さん、もうよかろう・・・」
「元気を出しぃ・・・」
「後で酒を取りにこいや」
それぞれ松吉を気遣う温かい親戚の古老に肩を叩かれても、松吉はなかなか顔を上げることができなかった
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米吉は縁側に腰を下ろして、ずっと海を見ていた・・・
手にはジンから返された懐中時計を持っていた、150年・・・この時計を渡した自分の手をゆっくりと見つめた、しわだらけの小さな手で時計を撫でた
行ってしまった・・・つかの間の孫息子になりそこねた男を思ってポツリとつぶやいた
「ジンさん・・・」
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コメント
3件
本当に結婚させてあげたかったなぁ。
ジンさんの人柄を知っているから誰ひとり罵らないんだね😢 それどころか、みんなみや江すず江さんと同じこと思ってそう😌💓 フネさんが最大の障壁だな😣
みや江さん、すず江さん2人のほんとの気持ちに気づいてるのかな✨✨ なんとか2人を結婚させてあげて 〜💕🥺何卒よろしくお願いします🙇