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#闇バイト
るしゅ
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土橋真二郎
215
翌日。
俺は一睡もできなかった。
目を閉じるたびに母さんの写真が浮かぶ。
病室。
白いベッド。
眠っている母さん。
そして。
【お母様の体調が回復しているようで安心しました】
あのメッセージ。
思い出すだけで吐き気がした。
スマホが震える。
例のアカウントだった。
【本日の案件を開始します】
俺は画面を睨みつけた。
今さら無視したところで意味はない。
そう分かっていた。
メッセージを開く。
指定された場所は郊外の住宅街だった。
また住宅街。
嫌な予感しかしない。
その下に指示が続く。
【対象住宅前で待機】
【異常があれば報告】
【報酬30万円】
異常。
その言葉が引っかかった。
何を基準に異常なんだ。
だが質問は禁止。
聞いても答えは返ってこない。
俺は指定された場所へ向かった。
空は曇っていた。
今にも雨が降りそうだった。
住宅街に着く。
指定された家を見つける。
二階建て。
白い外壁。
庭付き。
また普通の家だった。
普通すぎる家だった。
俺は少し離れた場所に立つ。
指示通り。
ただ見張る。
それだけ。
時間だけが過ぎていく。
十分。
二十分。
三十分。
馬鹿らしくなってきた。
何なんだよこの仕事。
そう思った時だった。
玄関が開く。
一人の女性が出てきた。
三十代くらいだろうか。
ゴミ袋を持っている。
近くのゴミ捨て場へ向かう。
それだけだった。
普通の日常。
俺は少し安心した。
考えすぎだったのかもしれない。
その時。
スマホが震えた。
【対象者が外出】
【報告を確認】
俺は凍りつく。
報告していない。
何も。
なのに。
組織は知っている。
昨日と同じだった。
見ている。
どこかで。
誰かが。
俺たちを。
冷たい汗が流れた。
女性は家に戻る。
玄関が閉まる。
静寂。
住宅街は何も変わらない。
なのに。
俺だけがおかしくなりそうだった。
その時。
遠くから見覚えのある姿が歩いてきた。
海斗だった。
海斗も俺に気付いたらしい。
目が合う。
だが。
話しかけてこない。
話しかけられない。
禁止されているからじゃない。
周囲を警戒しているからだ。
海斗の顔はひどかった。
寝ていないのが一目で分かる。
俺も同じだろう。
海斗は少し離れた場所で立ち止まる。
そして。
小さく首を横に振った。
その意味は分かった。
ヤバい。
そう言いたいんだ。
俺も同じ気持ちだった。
スマホが震える。
新しい指示。
【その場を離れてください】
俺は従った。
住宅街を離れる。
駅へ向かう。
早く帰りたかった。
だが。
駅の手前で。
スマホに通知が届いた。
ニュースアプリだった。
何気なく開く。
そして。
足が止まる。
【〇〇市で住宅への侵入未遂】
記事には今日いた住宅街の地名が書かれていた。
心臓が嫌な音を立てる。
俺は記事を開いた。
内容は短かった。
不審な人物が住宅へ侵入しようとした。
住民が気付き逃走。
それだけ。
だけど。
十分だった。
俺はスマホを握る。
指先が震えている。
偶然なのか。
本当に。
偶然なのか。
その時。
新しいメッセージが届いた。
例のアカウントからだった。
俺は恐る恐る開く。
そこには短く書かれていた。
【本日の案件終了】
その下。
さらに一文。
【次回から報酬を50万円へ増額します】
俺は息を呑んだ。
五十万円。
頭がおかしくなりそうだった。
恐怖と。
絶望と。
そして。
ほんの少しだけ湧き上がる期待。
その全部が混ざっていた。
(第十一話へ続く)
コメント
1件
うわあ…読んでて胸がぎゅっとなったよ。 またあの不気味なアカウントから指示が来て、しかも「報告してないのに見られてる」って感覚が怖すぎる。住宅街のただの日常の裏で何かが起こってる感じ、すごく伝わってきた。海斗くんと目があった時の無言の「ヤバい」ってやりとり、本当に切なかった…。 報酬50万に上がるラスト、恐怖とほんのちょっとの期待が混ざる感じ、なんか分かるような気がしてゾッとしたよ。続き、ちゃんと読ませてもらうね。更新ありがとう🌙