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💙「阿部ー帰るぞー」


💚「あっ!ごめん翔太。俺この後ちょっと予定あるから、先帰ってて」


💙「は?またかよ………」


……最近、阿部の様子がおかしい。

阿部は拝むように俺に手を合わせると、そそくさと俺の横をすり抜けて、鼻歌混じりに帰って行く。


💜「じゃ、俺もお先〜」


後を追うのはいつもふっか。

どうせ二人でどっか行く約束してるんだ。

俺は知ってる。






始まりは、ふっかから掛かってきた、一本の電話。


阿部が風呂に入っている間に、阿部のスマホが鳴った。俺は表示された発信者がふっかなのを確認してから電話に出た。


💙「はい。もしもし」


💜『えっ!?翔太?なんで???俺、阿部ちゃんに掛けたはずなんだけど…』


しばしの沈黙。

ふっかの声は少なからず動揺していて、俺はちょっと機嫌を損ねた。


💙「出ちゃわりぃかよ。俺は阿部と住んでるからな。今あいつ風呂なんだよ」


💜『そっか……』


明らかに落胆している声色に俺の苛々は募っていく。


💙「言伝ならするぞ?何の用だ?」


💜「いやぁ、それはちょっと……」


💙「……………」


💜『………ごめんな。もしかして嫉妬してる?』


💙「はぁ????してねーよ!後でまた掛け直せ!切るぞ」


💜『うん、また〜』


ふっかは悪びれもせず、先に電話を切った。

ちょうどそこへ、風呂上がりで髪をタオルで纏めた阿部が出て来た。


💙「タイミングわりぃな…。ふっかから電話あったぞ、たった今」


💚「あ、そ?」


阿部は、俺からスマホを受け取ると、いそいそとふっかに電話を掛け直しながら、バルコニーへと出て行く。


は?

ここで掛けねぇの?聞かれちゃマズイような話でもすんのか?


こういう時の阿部は、いつも顔色ひとつ変えないので、どういうつもりなのかわからない。でも、俺は顔と空気に出やすいタイプだから、阿部は俺がはぁ?となったのを感じたはずだ。なんだか面白くないので、風呂上がりにも関わらず、俺はいつもの紙バッグを持って近所のサウナへと「整いに」出掛けた。







その日は阿部は俺が帰っても、終始こそこそとしていて、弁解もしないし、ふっかの話題すら出さない。


……夜も求めて来ない。


俺は釈然としないもやもやを抱えたまま、それからの数日を過ごした。




またある時は。

家に帰ると、ふっかがいた。


💜「よぉ、おかえり〜」


💙「……来てたのか」


テレビには、二人が好きなゲームの画面がつけっぱなし。阿部はコンビニに行ったそうで姿が見えなかった。


💜「いい家だよな〜。どこに出るにも便利だし、広いし、キレイだし」


💙「まあな」


💜「阿部ちゃんが見つけたんだろ?やっぱりセンスあるよなー、阿部ちゃん。翔太の喜ぶ顔が見たくて頑張ったんだろうなぁ」


💙「……何が言いたい?」


💜「別に、何も(笑)」


仕事で疲れたのにサウナにも寄れず少しネガティブになっていた俺は、ふっかがわざとらしく阿部を褒めるのを聞いて、また苛々してしまっていた。


💙「俺にセンスがねぇって言いてぇのか」


💜「はっ?別にそんなこと言ってねぇよ」


ふっかは目を丸くして俺を見ている。とぼけるつもりかこの野郎。


💙「俺が何でも阿部におんぶに抱っこだと、そう言いてぇのかよ」


💜「いやいやいや、どうした翔太(笑)」


💙「ヘラヘラしてんなよ!!!」


💚「ただいま〜」


タイミング良く?阿部が帰って来て、話はうやむやになったのだが…。


💚「あれ?翔太帰ってたの?もっと遅くなると思って、翔太の分のアイス買って来なかった」


💙「いらねぇよ!!!!!」


俺は引っ込みがつかなくなって、そして意味わからんほど頭に来て、怒鳴りつけるようにそう言うと、自分の部屋へと戻った。


後ろから、どうしたの?と尋ねる、阿部ののんびりした声が聞こえて、俺はますます不機嫌になった。







俺たちは、何か一人になる事情がある時のために、お互いに個室を持っている。でも、自分の部屋を使ったのは一緒に暮らし始めてから、これが本当に初めてだった。 俺はその夜、初めて夫婦用のベッドではなく、自分だけの部屋のシングルベッドで寝たのだ。 そして夜の間、阿部は俺の部屋を一度も訪ねては来なかった。リビングの方からふっかと阿部の笑い声が聞こえてくる中、俺は耳を塞いで、布団を被って眠った。


『自分の機嫌は自分で取れ』とよく言う。


俺もそう思うし、いい大人なんだから、こんなつまらない行き違いでいつまでも怒っているのも馬鹿らしい。反省した俺は、少し冷静になった翌朝、自分から阿部に歩み寄ろうと決めた。


まだ起きるには大分早い時間だ。


それでも少し緊張して、気合を入れ、リビングへと向かうと、阿部はそこにはいなかった。


そして、テーブルの上には俺の朝飯用のホットサンドと先に出掛ける旨だけが書かれたメモ書き。


💙「………そうかよ」


すっかり頭に入っている阿部のスケジュールでは、仕事は確か午後からのはずだ。家を出るのは俺の方が早いはずなのに。俺は阿部の作ったホットサンドには手を付けず、自分でお湯を沸かしてインスタントの粉末スープを溶かして飲むと、ひとり仕事へと向かった。







それから俺は、阿部にふっかとのことを訊くのは止めにしたし、家に帰るのも少し億劫になっていった。


今夜も阿部はふっかと出掛けている。

俺だって誰かと出掛けよう。


💙「目黒、今夜ちょっと付き合え」


🖤「え?ヤダよ」


💙「は?何でだよ」


🖤「阿部ちゃんに恨まれたくない」


💙「うるさい。行くぞ」


俺は目黒の首根っこを引っ掴むと、夜の繁華街へと連れ出した。

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コメント

4

ユーザー

このお話めっちゃくちゃ好きなんですけど?!

ユーザー

サプライズでも考えてんのかなあべちゃん🤔

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