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「黄良!!馬小屋にっ、男がっ!!!」


童子のなかば怯えた叫びに、黄良は、あぁと、呟いた。


「……なんだい?どうしたって言うのさ?」


春香が、皆の思いを代弁するかの様に黄良へ問いただした。


「ああ、あの、拾った男が、馬小屋にいるんだよ」


黄良は、経緯を語った。


「ははは、そりゃまた、どこのお大臣様だか」


独りでなければなるまいと、黄良が采配したのだと聞いた春香は、笑った。続いて、場の男達も呆れ顔をした。


「ともかく、ちょっと待っててくれ、すぐ、馬の用意をする」


馬小屋から、童子と男の抗い声が聞こえ、黄良は慌てて馬小屋へ走った。


「いい加減にしろ!」


童子に向かって、叱咤しながら、黄良は、男──、夢龍を見る。


「お前、鞍は、付けられるか?」


急いでるんだと、言いながら、黄良は奥の馬を示した。


「ああ、それぐらいは」


「あいつは、大人しい馬だ、お前でも、大丈夫だろう」


童子!と、黄良は、早くしろと、言わんばかりに命じた。


すでに、街の出入口、城門は締まっている時間だ。畦道を抜け、山道へ入り、門を通らず外へ出る。


乗り手の男達は、慣れているが、手早く準備してやらなければ、もし、相手が、気がついて追って来たら……。


春香の振る舞いは、奴らには、かなり頭に来るものだ。そのまま、酒に鬱憤をぶつけてくれている隙に、南原の街から街道へ出てしまいたかった。


「おい、早くしろ!」


黄良は、童子と夢龍を急かした。


そして、念のためと、夢龍が鞍を取り付けた馬の具合を確かめ、よし、連れていけと、黄良は童子に命じた。


童子は、言われるまま、器用に三頭の馬の手綱を引っ張って、仲間の元へ連れて行った。


「ほお、お坊っちゃんも、やれることがあるんだな」


からかい、と、いうよりも、見下した言い方に近い状態に、夢龍は、幾分、ムッとしつつも、まあな、と、誤魔化すように答えた。


何を言っても、無駄、と、分かっていた。そして、馬のいなくなった馬小屋なら、ゆっくり休めると、夢龍は割りきったのだった。


そんな、動じない姿に、黄良は、けっと、忌々しそうな声を出す。


「あらら、仲間割れかい?」


ずかずかと、春香が歩んで来る。


ふうーんと、馬小屋の中を見回すと、夢龍を見た。


「今日は、取りあえず、あの藁の上でお休みよ、明日は、あんたの部屋を用意する」


「……部屋?」


つまり、ここで、働く、ということなのだろうが、夢龍の出来る事など限られている。


鞍は、たまたま、できた、だけの話で、馬の世話となると、また、別物だ。


「春香、お前、何を考えて……」


「お育ちが、良いんだろ?だったら、その手の人あしらいも、あたしらより、上手なはず。もちろん、黄良、あんたよりもね」


おいおい!と、黄良は、背を屈め、春香に目線を合わせようとした。


「無駄だよ、もう決めた。あたしと、組んでもらう」


「ちょっと!待った!」


黄良と、夢龍も、春香へ向かって声を上げていた。


「あー、ご婦人方の前で、ちょいと、吟じてもらいたいのさ。近ごろ、昼間の席にも、呼ばれるようになってね。暇をもてあましている、高官の女房達が、男顔まけに、あたしを呼ぶのさ。まっ、こっちは、その方が楽だけど……、ただ、琴だけじゃあ、物足りないと、ご機嫌斜めでねぇ」


ふう、と、空々しく息をつき、春香は肩をすくめた。


「つまり、私が、見世物になるのか」


金持ちの屋敷の奥で、詩吟なり、朗読なり、論じ、女達の好機の目に晒される。


退屈しのぎにはなる。そして、この土地の本当の所も見れる。


ふふふ、それも、いいだろう。


嫌がることもなく、逆に、ご機嫌な素振りを見せる夢龍に、春香も黄良も固まった。


女のご機嫌伺いなど、普通の男なら、勘弁してくれと嫌がるだろうに……。


「ふうーん、あんた、なかなか、面白いね。 黄良、この男をもっと、磨きなっ。こいつは、新しい商売道具だ」


春香は、発破をかけた。

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