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◆ 9話 Skypeがなぜか流行する
週末の夕方。
大学生の 三森りく(24) は、
薄灰のジャージに緑の上着を羽織り、
部屋の机に肘をついていた。
視界右端には小さな通知が浮かぶ。
『ランキング急上昇アプリ:Skype』
りくは思わず吹き出す。
「……え?今さら?」
部屋は水色の間接照明がゆらぎ、
机の上にはゲーム用の小さなキーボードと、
MINAMOケースが置かれている。
そこへ、
通話が飛んできた。
発信者:小野戸まひる(27)
黄緑のワンピースに薄灰のカーディガン。
髪は肩でふんわり揺れ、
淡い黄緑のMINAMOがよく似合う。
りくが喉で返事すると、
彼女のウィンドウが視界に淡く浮かぶ。
「りくくん、聞いた?
Skype、10年ぶりにランキング入ったんだって。」
「懐かしすぎるだろ……なんで今?」
まひるは笑いながら髪を耳にかける。
「ゲーム配信の大手グループが急に使い始めたらしいよ。
“逆に新しい”って。」
たしかにSNSでは、
#スカイプ新時代
#逆復活
がトレンド入りしていた。
******
同じ頃、ゲーミングカフェ。
高校生の 三好たいち(17) が、
緑のジャージに茶のショルダーバッグというラフな格好で、
席に座っていた。
彼の額には、
偽物騒動のあと買い直した“正規MINAMO”。
淡い水色の細いフレームで、以前より軽そうだ。
たいちの前には、
部活の仲間数人が集まっていた。
「ゲームするときはDiscordだよな?」
「だよなー。通話もテレビ電話も全部できるし。」
そこへ一人がスマホ…ではなく、
“懐かしいPCアプリ”を開いた。
「でもさ、最近スカイプが静かでいいって噂でさ。
通話音質が逆に落ち着くって。」
たいちは驚いて声を出す。
「落ち着くの!?今で!?」
「うん、なんか“古い通話感”が新鮮なんだって。
チャットはDiscordで、通話だけSkypeって使い方。」
りくは聞いていたら吹き出しそうな話だ。
******
夜。
りくはパソコン前に座り、
ゲームを起動しながらMINAMOに尋ねる。
「SkypeとDiscordの同時連携ってできる?」
『可能です。
現在、Discordは“ゲーム通話標準アプリ”として
日本国内で定着しています。
一方、Skypeは“レトロ通話体験”として再評価されています。』
「レトロ通話体験……?」
『はい。
“昔のノイズ混じりの音質が落ち着く”
という口コミが急増しています。』
りくは思わず天井を見る。
「未来に行きすぎると、
逆に古いものが恋しくなるってやつか……」
MINAMOがそっと通知を表示する。
『現在:Discordは“ゲーム用の当たり前”
一方でSkypeは“遊びの一部として復活”』
『つまりりく、
通話文化が二極化しています。』
りくは笑った。
「社会っておもしろいな。」
***
夜のSNS。
#通話はDiscord
#懐かしさはSkype
#未来の中のレトロ
#戦略的古臭さ
ユーザーたちが、
“新しいのに古い”という感覚を楽しみ始めていた。
MINAMO社会は、
便利すぎて当たり前になった結果、
“昔の不便さ”すら楽しむ文化を生み始めていた。
りくはヘッドセットをつけ、
ゲーム仲間の通知が来るのを待つ。
視界右端には、
DiscordとSkypeの両方が待機していた。
どちらも未来で、どちらもレトロ。
そんな奇妙な混在が、
今の時代には自然だった。
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