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「早く桜の木の丘、行こーよ!!」
「早く食べたい!!」
そう言いながら畑葉さんは焼き芋を抱えながら桜の木の丘へと一目散に向かっていく。
走ったら転びそう。
そう思ったが自分も抱えている焼き芋が早く食べたくて同じ思い。
桜の木の丘に着くともう既に畑葉さんは焼き芋を口いっぱいに頬張っている最中だった。
どれだけ早く着いて、
いつから食べていたのだろうか。
「あ、古佐く〜ん!!」
『早くこっち来い』というように激しく手招きする。
隣に座ると畑葉さんの持っていた焼き芋はいつの間にか最後の一つになっていた。
ホクホクの焼き芋。
買ってからあんなに時間が経ったのに今でも温かみは残っている。
湯気は少しばかり消えてしまったが、
香りは残っている。
皮ごとかぶりつく。
昔はこの皮が嫌で、
わざわざ剥いてから食べてたっけ?
でもいつからか皮も食べるようになって…
いつからかは覚えてないけど。
「古佐くん古佐くん!!」
子供のように服を引っ張りながら僕の名前を呼んでくる。
「なに?」
と返事すれば
「美味しいね!!」
って笑う。
ほんと子供みたい…
「あ、そういえばさ帰ったら試したいことがあって…」
「スーパー寄ってかない?」
スーパー?
なんで?
食べ物で遊ぶつもりだろうか。
「ダメだよ」
「え?何が?」
「スーパー行くのが?」
少し悲しげな声をしながら問い掛けてくる。
思い余って『ダメだよ』って声が出てしまった…
「食べ物で遊ぶとかダメだからね?」
「食べ物で遊ぶとかじゃないし…試すだけだし……」
試すも遊ぶも内容によっては同じでしょ。
そう思いながらも、
「じゃあいいけど…」
なんて返す。
スーパーで何買うんだろう…
そう思いながらいつものように沢山お金が入った畑葉さんの財布を眺める。
前より増えているような…
気のせいだろうか。
というか増えるわけないよね。
だってほぼ毎日僕と四六時中一緒に居るのにバイトとかしてるの見たことないし…
まぁ会わない日もちょくちょくあるけど。
「畑葉さんってさバイト、してる?」
聞いて損は無いと思い、聞いてみる。
と、案の定
「してないよ?」
と言われる。
じゃあやっぱり気のせいだったのか?
ただ単に見間違えたとか…
「なんで?」
「いや、別に…」
「これとこれと〜」
そう言いながら畑葉さんは次々にカゴへ入れていく。
カゴは秋の味覚でいっぱいだ。
ほぼほぼ果物ばかりだが。
買ってるのは『梨』と『りんご』と『柿』と『ぶどう』と…
「待って?流石に買いすぎじゃない?」
心の内の言葉がそのまま出てしまう。
「え?普通だよ?」
そう返してどんどんカゴへと入れていく。
買っているのも1つずつじゃない。
4つずつとか買ってる。
その時、
畑葉さんはザクロを5つ、
カゴへと運んだ。
そのザクロの値段は1つ1500円。
高すぎる。
しかもそれを5つだからザクロだけで7500円も使っているということ。
レジに向かうと店員さんも驚いていた。
当たり前だ。
「合計で19260円です…」
引き気味にそう言う店員さんに畑葉さんはお構い無しで丁度のお金を払う。
果物だけの買い物で2万円近くだなんて聞いたことない。
でもまぁ買ってる元のやつが高いし…
「さっ、家に帰ろ!」
そう言われ、共に家へと向かう。
母さんに何か言われる。
そう思っていたのに、
母さんは何も言わなかった。
いつもなら言ってくるのに何故だろうか。
「さっ、食べよ!」
今、僕の部屋には大量の果物と畑葉さんが居る。
なんともカオスな状況だ。
「ん〜!!美味しい!!」
そう言って畑葉さんが口に放り込んだのは1房千円の巨峰の1粒。
そりゃあ美味しいに決まっている。
安いの買えばいいのにって言ったが畑葉さんは『どうせ食べるなら美味しい高いやつがいい』『思い出になるし』とか言ってきたから止めるに止めれなかった。
多分、僕も心のどこかで高い果物パーティのようなことをしてみたいと思っていたせいかもしれない。
「古佐くんも食べなよ」
急にそう言われ
「僕も食べていいの?」
なんて言う。
「食べていいに決まってるじゃん!!」
てっきり『お前は食べないで見てるだけな』なんていう感じかと…
漫画の見すぎかな…
そんなことを考えながらも巨峰を1粒、
口に放り込む。
巨峰の皮は食べれないらしいが、
どうやらこの巨峰の皮は食べれるらしい。
しかも砂糖のように甘い。
どうりでこんなに高いわけだ。
「どんどん食べていいよ!!」
そんなことを言われても、
何だか今の僕は畑葉さんのペットのようにも思えてくる。
主人より先に頂くのは御法度。
だけど目の前の美味しそうな物を食べたいという時に食べれないのはとても苦しい。
そう思っていたらいつの間にか僕はカット梨を食べていた。
「美味しい?」
首を傾げながらそんなことを聞いてくる。
相変わらずの可愛い仕草。
返事をしたかったが以外にも食べた梨の大きさが大きすぎて口の中で暴れていた。
そのため言葉を出せず、縦に頷くのみだった。
「ふふっ、可愛い〜…!」
急にそんなことを言われ、
吹き出しそうになり、
むせる。
なんてことを言うんだ。
しかもなんだか今の畑葉さん同年代のようには思えなかった。
雰囲気がお姉さんのようにも思えて。
「大丈夫?」
クスクスと笑いながら聞いてくる。
とても腹が立つはずなのに僕の胸は高鳴りっぱなしだった。
流石2万円程の価値がある果物たち。
ほぼほぼ畑葉さん…
いや、食いしん坊モンスターによって食べ尽くされてしまった。
今残っているのはさくらんぼとザクロのみ。
「ね、知ってる?」
「何が?」
「さくらんぼを舌で結べるとキスが上手いんだって!!」
あ〜…なんか前に流行ったなぁ、それ。
「どうどう?出来てる?」
そう言いながら舌の上に乗っかったさくらんぼの茎を見せてくる。
なんかエロ…
いや、色気があるっていうかなんていうか……