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冨岡が竈門家へお邪魔している間、不死川は夕飯の買い出しへと街に出ている。
(冨岡の野郎ォ、一体全体どういうこったァ?今まで必要最低限の会話しかしてなかったのにォ…それが急に一緒に読書なんて)
安いキャベツを手に取りながら、眉をひそめて考えた。
冨岡が今までより積極的に自分の気持ちを伝えているのは分かる。
けれど何故、いきなり好きなものを共有したいだなんて思いに至ったのかは検討もつかない。
「実弥ちゃーん、元気ぃ?」
「…宇髄ィ」
「妙に真剣に考えてやがるから何処のべっぴんかと思ったわ」
「気色の悪いこと言うんじゃねェ、サブイボ立つだろォが」
元・音柱の宇髄天元と遭遇し、不死川は買い物する手を止めた。
「どう?冨岡とはよくやれてるか?まぁ、柱の中じゃ1番の犬猿の仲だったし、ろくな会話はしてないとは思うけど」
「会話くらいしてるわァ、何ヶ月同居してると思ってんだァ」
「マジ?!お前らまともに会話出来たのか!悲鳴嶼さんに聞かせてやりてぇわぁ!」
宇髄はそう言ってギャハギャハと笑う。
柱を辞めても尚、相変わらず派手な見た目に面をした宇髄に不死川は関心さえする。
基本、鬼殺隊を辞めた隊士は当時より落ち着いた雰囲気になり、女房や子を連れている。
「そういや宇髄、女房どうしたァ?」
「嫁が3人もいりゃ目立つからなぁ、お前が嫌がると思って先に帰らせた」
(テメェの存在自体目立つから意味ねェけどなァ)
言ったら言ったで調子に乗るので言わないが心の底でツッコんだ。
「だからちょ〜とだけ、立ち話もなんだし団子屋寄ってかね?」
「はァ…いいけどォ」
「ここの団子屋は派手に美味いぜ!」
「うるせっ」
半ば強引に団子屋に連れてこられた不死川は宇髄に団子を奢ってもらい、少しだけ食べる。
宇髄が柱を辞めてから話す機会が中々訪れず、久しぶりに会話をするので何を話せばいいか分からない。
調子はどうだと聞いてやりたいところだが、そんなことは見れば分かる。
ド派手に健康だ。
「不死川さ、ぶっちゃけ冨岡のこと好きだろ」
「…は、はァァァ?!ンな、こと…」
「恥ずかしがんなって!お前見りゃ分かるし、今更隠すこともねェだろ〜」
図星を突かれた不死川は赤面になり、下を向き黙る。
宇髄に嘘は通じない。
絶対誰にも悟られないように振舞ってきたというのに、あまりにも直球に聞いてきたものだから、思わず動揺してしまった。
「意外だよな〜。あんだけ胡蝶姉のこと好きだったお前が、よりにも寄って冨岡に惚れちまうなんて」
「ッ…なんで!胡蝶のことまで知ってんだァ?!」
「多分、柱の殆どが気づいてたぞ。胡蝶と顔合わせる度、元気かどうか聞くのに差程仲が良い訳じゃねぇってことは、胡蝶姉のこと気にして言ってる…なんて、察しのいい柱、悲鳴嶼さんに、胡蝶本人は特に気付いてそうだったけどな」
胡蝶カナエのことまで気付かれていたなんて。
亡き友、國近には他の隊士に言うなと口止めしていたので口を滑らせてはないはず。
ということは、本当に自分の態度があからさまだったんだ。
「いつから、冨岡のこと好…だって、気付いてたんだよォ」
「同居始めてすぐ」
「マジでかよ」
「分かりやすいんだって!まあ、そこが実弥ちゃんの可愛いとこだけど!」
宇髄は子供のように不死川の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「あの不死川が冨岡に同居を提案することがまず疑問だったんだけど、街で冨岡と並んで歩いてるのを見掛けて確信した」
「見掛けたんなら声くらい掛けろやァ…」
「あんな”冨岡にベタ惚れです”みたいな面されたら話しかけにくいに決まってんでしょ」
「ベ、ベタ…ンな顔してねェわ」
同僚にバレていた事実に頭から火が吹き出しそうな程、顔が赤くなった。
冨岡に惚れていることは認めよう。
だが、どうしてもこういった色恋の話は慣れておらず、好きだと自覚させるような言葉に素直に頷けない。
「でも、お前さん痣出たんだろ。いいのか、このままで」