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#普通
野々さくら
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ありあ
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茜が大きく伸びをしながら周囲を見渡した。
「じゃあ、もう帰る?」
その言葉にさくらが少し意外そうな顔をする。
「え?もう帰るの?」
茜は肩をすくめて笑った。
「だって、信愛が何も
視えないって言ってるんだし」
焔垂も静かに頷く。
「確かに、白縫さんでも目視できないんならな」
「わざわざ難しく言い換えなくていいから
私と同じ事言ってんじゃん」
茜はすかさず吹き出す。
「別にいいだろーが!」
思わず声を荒げる焔垂を見て、信愛はくすりと笑った。
「なんか二人、仲良しだね
このまま付き合っちゃえば良いのに」
さくらも楽しそうに笑う。
「確かに♬」
すると茜が顔を真っ赤にしながら抗議した。
「そこの二人!聞こえてるから!」
信愛は悪びれる様子もなく微笑む。
「あら?聞こえちゃった?」
茜は呆れたようにため息をついた。
「こんなキモいオカルトオタクなんて
こっちから願い下げだから」
「キモくないわ!」
焔垂は即座に否定する。
「純真無垢な気持ちで
オカルトが好きなだけだよ」
その真面目な返しに、茜はさらに笑ってしまう。
「あーはいはい!難しい言葉知ってて
お博学ですわね〜、おほほ」
「痴話喧嘩じゃん」
信愛の一言に、さくらは腹を抱えて笑い出した。
「きゃはは!確かに!」
笑い声が夕暮れの住宅街に響く。
信愛とさくらの会話に茜は頬を膨らませる。
「もういい!帰る!」
そう言うと、まるで地団駄を踏むように大股で歩き出し、そのまま帰っていった。
「あ、行っちゃった。」
信愛は苦笑しながら、その後ろ姿を見送る。
「なら、ウチらも帰る?」
「そうだね」
すると焔垂が交差点へもう一度視線を向けた。
「俺はもうちょっと調べてから帰るよ」
信愛は少し心配そうな表情になる。
「そう?あまり無理しないでね?」
焔垂は照れくさそうに小さく笑った。
「ありがとう、また明日な」
「うん、また明日」
3人を見送り、焔垂は再び静まり返った交差点を見つめる。
夕日が長い影を道路へ落としていた。
焔垂は静かに目を細める。
(何か手がかりがあるはずなんだ、何か)
◇ ◇ ◇
その日の夜。
自宅へ帰った信愛は、茜からLIMEで送られてきた、交差点の写真を1枚ずつ確認していた。
「うー・・・ん」
どの写真を拡大しても、不自然なものは何一つ映っていない。
「やっぱ何も写ってないな・・・」
また茜は写真だけでなく、交差点周辺を約二分間撮影した動画まで送ってくれていた。
しかし、その映像にも異常は見当たらない。
「やっぱ動画にも映ってない」
信愛はスマホを握ったまま天井を見上げる。
「でも変な感じしたんだよなぁ」
脳裏に蘇るのは、あの交差点で感じた得体の知れない違和感。
「何だったんだろ?あの違和感・・・」
その時だった。
「その女の人誰?」
背後から突然声が聞こえた。
「きゃああ!だ、誰!?」
信愛は驚きのあまり悲鳴を上げ、慌てて振り返る。
恐怖に引きつった表情の先に立っていたのは、佳苗だった。
佳苗はきょとんとした顔で首を傾げ、ニコッと笑う。
「私だよ♬私〜♬」
信愛はようやく鼓動を落ち着かせ、胸に手を当てながら苦笑した。
「か、佳苗!?また来たの?」
佳苗は無邪気な笑顔を浮かべ、ぴょんと信愛の隣へやって来る。
「信愛に会いたくて♬」
「もうビックリさせないでよ、幽霊かと思ったじゃん」
すると佳苗は首を傾げ、当たり前のように答えた。
「いや、私、幽霊だし」
「あ、そっか」
思わず納得しかけた信愛は、すぐに首を振る。
「って、そうじゃなくて」
そして先ほどの言葉を思い出し、佳苗を見つめた。
「さっき何か言ってなかった?女の人がどうとか」
佳苗は信愛の手元のスマホを指差した。
「その動画に映ってる女の人誰なのかな〜?って」
信愛は目を丸くする。
「え?女の人?女の人って何の事?」
佳苗は不思議そうに首を傾げた。
「だ〜か〜ら〜、信愛が見てた動画に
女の人が映ってたよね?」
信愛の頭の中が真っ白になる。
女の人とは何のことだろう。
そんは信愛を尻目に、佳苗は真剣な表情で続けた。
「その人が誰か聞いてるの」
「いや、誰も映ってないでしょ?」
信愛はスマホを佳苗へ差し出した。
「これだよね?」
先ほどまで見返していた動画を再生し、佳苗へ見せる。
佳苗は画面を覗き込むなり、すぐに指を伸ばした。
「いや、居るじゃん!ほらここ!」
佳苗の指先は動画のある一点を示している。
しかし、信愛の目にはそこには道路と歩道しか映っていない。
誰の姿もなかった。
「いや、居ないよ?」
「居るじゃん!」
佳苗は少しも譲らない。
「信愛みたいに制服着てる女の人!」
信愛は思わず息を呑んだ。
「え?佳苗には視えるの?」
佳苗は逆に不思議そうな顔になる。
「あれ?信愛には視えないの?」
「み、視えない・・・」
佳苗は首をかしげながら、小さく呟いた。
「あれ〜?不思議だね〜」
信愛は画面を見つめ直す。
佳苗には視えて信愛視えない女の人。
霊感なら、自分の方がはるかに強いはずだった。
それなのに、幽霊である佳苗だけが、その動画の中にいる『誰か』を認識できている。
信愛の背筋を、夕方に交差点で感じたあの違和感と同じ冷たい感覚がゆっくりと走った。
「な、何で?」
コメント
1件
わあ、一気に引き込まれました!最初の茜と焔垂のやり取り、痴話喧嘩っぽくて可愛いなって思ってたんですけど、ラストの佳苗の登場で雰囲気がガラッと変わりましたね。「その女の人誰?」の一言で背筋がゾッとしました……。霊感が強い信愛には見えなくて、幽霊の佳苗にだけ見える“誰か”がいるって、すごく不気味で続きが気になります!どんな伏線なんだろう。