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2019年春
「ではこのテキストを段落ごとに順番で読んでいってください」
順番で読んでいくって、、
中高生を思い出した。
漢字が読めなくて、隣の人に全部聞いてた記憶が蘇る。
社会人になってもまさか段落読みがあるとは。
この春から、2週間の新人研修が始まった。
同期は、私を含め計8名。
うち7名は男性。
それもそうか、ここは男性向けの職業だったから。
研修後、私はそこの事務職に配属される。
事務職は、女性先輩がいるので安心。
研修が終わるまでは、この男達に囲まれて1日8時間をこの会議室で共に過ごすのか、、
私にとってこの研修は、とても息苦しい物になった。
お昼休憩。
男達は、近くのコンビニに行ったり
楽しそうにお店に行ったりして、大体は集団行動。
そんな中私はひとり寂しく公園へ向かう。
「はぁ、、」
なんか、、 いじめられて、ぼっち飯する人みたい。
あの人も公園でご飯食べてる、、
そんな警備員さんを見ながら
あたしは耳にイヤフォンを付け、お弁当を広げる。
自分が作ったお弁当、男達がいる会議室で食べたくないし。
「はぁーー」
そんなため息とは裏腹に
今日もまた、満開の桜が瞳に映る。
苦痛で仕方がなかった研修も
いよいよ残り6日となった。
この日は外部研修。
そういえば昨日
「皆でグループLINE作りませんか?」
そう、ひとりの人が言い始めた。
男達は皆携帯を手に取り、連絡先を交換し始める。
この場合、私も交換するの?
皆って女子の私も入ってる?男達だけ???
私には関係ないか。
そう思って俯いていたが、先程の男が
「佐倉さんも良かったら!」
と、くしゃっと笑った笑顔でそう言ってきた。
「はい、、、」
人見知りの私に、唯一この人が明るく話しかけてくれた。
それからというもの、閉ざされていた私の心はその人にだけ晴れた。
そんな中、もう一人の男が やたらと私に話しかけてきていた。
しつこいくらいに。
てかちょっと怖いしこの人。
とりあえず、無視した。
外部研修も終わり、私はダッシュで家に帰る。
すると電話が掛かってきた。
「…なんですか」
相手はその、しつこい男。
名前?
名前は山下一(やました かず)。
「もう帰ってる?」
「そうですけど」
「はや、これからのみいこーぜ!」
「…いや、もう帰ってるし」
のみにいこーぜって。
「戻ってきて」
「はあ???」
いやいや、もう電車乗ったしめんどくさいし。
今日は帰ってゆっくりしたいし。
「戻ってきてよ」
「…帰ります」
冷めたように電話を切った後、LINEが来たけど
とりあえず、無視した。
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