俺と宇美ちゃんは
小さい頃からよく遊んでいた。
中学生になっても
仲の良い関係は変わらなかった。
宇美ちゃんは、
母親に虐待されていた。
毎回傷を作っていた。
だから毎日
俺は宇美ちゃんを呼び出して
2人で話していた。
俐久
宇美ちゃん、その傷…
宇美
うん、
宇美
またお母さんに
やられちゃった
やられちゃった
俐久
…っ、くそっ
宇美
俐久が怒ることはないよ
宇美
私は、大丈夫だから
宇美ちゃんは、
いつもそう言って
俺を心配させないように、 笑っていた。
…何も出来ない無力な自分が、
情けなかった。
ある日。
宇美ちゃんが、体に沢山の傷を負って
俺の家にやって来た。
俐久
っ!
俐久
大丈夫!?
宇美ちゃん!!
宇美ちゃん!!
俐久
酷い傷…
宇美
………
宇美ちゃんは、泣いていた。
宇美
アイツを、
宇美
殺したい
かすれた、消えてしまいそうな声で
宇美ちゃんはそう、言った。
俐久
2人で、殺してしまおうよ
宇美
……
宇美ちゃんは、コクンと頷いた。
殺すと決めてからは、 早かった。
ロープで首を締めて
殺すことにした。
指紋が付かないようにするため
手袋を買った。
死体を入れるため
大きな袋を買った。
真夜中に殺そうと決めた。
死体は、海に捨てようと決めた。
〝その時〟が来た。
俺は宇美ちゃんの家に
静かに入って行った。
宇美ちゃんの母親は、寝ていた。
宇美
俐久……
宇美ちゃんが、震えながら 俺を見た。
俐久
大丈夫
俐久
大丈夫だよ
宇美
…うん
宇美ちゃんの手を、 強く握った。
ベットの上に乗った。
母親の首にロープを巻き
強く、締めた。
息をしなくなったそれを
2人で袋に入れた。
歩いて
歩いて
海へたどり着いた。
宇美
…っ
宇美
ごめん
宇美
ごめんね、俐久…
俐久
なんで宇美ちゃんが
謝るの
謝るの
宇美ちゃんは、大粒の涙を流した。
宇美
私のせいでっ
宇美
こんなこと、
させてしまって…
させてしまって…
俐久
………
俐久
俺は全然後悔してない
俐久
いいから
俐久
とりあえずこれを
海に捨てよう
海に捨てよう
宇美
…うん
死体の入った袋は、
深く沈んでいった。
その一週間後
俺のお父さんの転勤が決まった。
俺は、宇美ちゃんを置いて
人を殺した街から、 居なくなった。