あっという間に冬休みが終わって、
2年生最後の学期になった
智弥
あっ、まふ君おはよ〜!

真冬
おはよ!

そういう僕も、意外とこの白髪が
気に入っててキープしてるんだけどね
智弥
そういえば、こうやってリアルで会うのって久しぶりだよね

真冬
あ、そっか、遊園地以来だよね?

メリーゴーランドで撮った先輩との
写真、実はこっそり、スマホの
ホーム画面に設定してるんだ
これを見る度に、あの時感じたこと
とか、話したことの記憶が蘇ってくる
智弥
そうそう。通話繋げて一緒にゲームすることはあったけどねー

冬休み中に出かけたのは遊園地
ぐらいで、後はディスコードを繋いで
一緒にゲームをしてた
真冬
(彼方先輩は受験勉強で忙しいと思って、誘わなかったけど……)

ユニットの活動とそらるさんの
活動も、今は勉強のために休止中
ボクは個人の活動はしてても、
ユニットの方は曲を作るだけ作って
おいて、録音はしていない
きっと来年の今頃は、ボクらの
立ち位置が逆になるんだろうな、
なんて考えたりする
女子
あっ、相川君おはよ!

女子
おはよ〜!

女子
久しぶりだね!

真冬
あ、お、おはよっ

席に座ってとも君と話していると、
同クラスの女子達が話しかけてきた
姉さんとか96ちゃん達はまだいい
けど、こうしてあからさまな好意を
向けられるのは、やっぱり慣れない
髪を染めた時からそうだけど、
椛祭で正体バレした後は、さらに
エスカレートして……
真冬
(偶に、他の学年からもたまに来るようになっちゃったしなぁ……)

……まぁ、ああやって毎日のように
囲まれてる彼方先輩よりは、
断然マシだと思うけど……
女子
そうだ、私投稿してた曲聞いたよ!

女子
あっ私も! めちゃくちゃよかった!

女子
そうそう! 特にサビの部分とか……

真冬
あ、ありがとうっ

曲の感想を直接聞けるのは少し照れる
けど、嬉しいポイントではある
投稿した次の日にこんな風に教えて
もらえるし、どんな曲がみんなに
刺さったのかを知れるから
ボクは作りたい曲を作って歌ってる
だけだから、知ったところで、それに
合わせることはしないけどね
智弥
それ俺も聞いた! たしか、前も似たような曲出してたよね?

真冬
うん。なんか、シリーズみたいな?

最後が疑問系なのは、まさか1曲目を
作った時に、そうなるとは
思わなかったから
女子
シリーズって面白いね!

女子
今回の曲って、何かきっかけとかあったの?

真冬
たまたま近所で野良猫を見かけたんだけど、その時、僕が近づいても、全然気にしてない感じで……

猫は人の目を気にせずに生きてて、
ちょっと羨ましいなぁ、
とか思ったりして……
真冬
……僕も猫になって、何も考えず伸び伸び生きてみたいなー、なんて……。

真冬
……あっ

いつのまにかぼーっとしてて、半笑い
みたいに口角もちょっと上がってた
それに加えてぶつぶつ話してたし、
明らかにやばいヤツじゃん……!
真冬
えー、っと〜……

ど、どうしよう、僕こんなこと
言って引かれてない!?
真冬
あっあと、猫になるのも楽しそうだなぁって!

真冬
ほら、ジャンプして家のドアガチャって開けたりさ、ちょっと面白そうじゃない!?

なんで例えを“家のドアを開ける”って
いう小さいことに絞ったんだ……!!
女子
あ、あ〜! たしかに面白そうだよね!

女子
高いとこに登るのも楽しそうじゃない?

女子
た、たしかにやってみたいかも!

智弥
なら俺さ、ティッシュを箱からバーッてしてみたい! やった後は絶対怒られるだろうけど

……あ、テレビでペットのいたずら
って紹介されるのを偶に見る、
ティッシュの早抜きのこと?
智弥
あと、トイレットペーパーをガラガラって出してみたりとかさ。そうやっていたずらするのも面白いと思う!

すぐいたずらに走るところが、
何だかとも君らしい考えというか
智弥
……いや、そんなことばっかしてると、いつか彼方兄に背後からキュウリ置かれそう……

ここまでの自分の行いに気づいた
のか、遠い目をしてそう呟いたとも君
女子
あははっ、キュウリを見たらヘビだと思ってびっくりするやつだよね!

女子
ちょっと可哀想だけど可愛いよね〜

女子
私は王子にならされてもいいなぁ……!

ここまで聞いてて気づいたけど、
とも君のおかげで、猫に関する
話題が続いてるような
咄嗟に変なことを口走った僕とは
違って、とも君は人と会話するのが
上手いんだよね
言葉のキャッチボールって
よく言うけど、とも君から飛んでくる
ボールは、どれも受け止めやすい
逆にこっちがどんな変化球を
投げても、上手いことキャッチ
してくれる
その能力で、彼方先輩とか妹の
九葉ちゃんとも論破対決を
よくしてるんだよね
けど、相手の返しが一枚上手なのか、
あんまり勝ててるところは
見たことないけど
強いて言うなら、途中でボールを
キャッチすることを諦めてる
蒼井君ぐらいだし
智弥
……ん? 俺の顔なんか付いてる?

またいつのまにか、とも君の顔を
じっと見ていたらしい
真冬
ううん、相変わらず赤いなあと思って

智弥
いや、それはまふ君もお互い様じゃん!

僕らって並ぶと紅白になるから、
ちょっと縁起がいいかもなーとか、
たまに考えたりするけど
女子
あ、そういえば香月君の赤髪って……

女子
しかも名前が“とも”や君だし……

女子
たしかに……もしかして、香月君……

あれ、なんかとも君、
急にバレそうになってる……?
智弥
えっ、い、いや、何の話!? 俺、赤が好きだからこの色に染めただけだけど……!?

とも君も気づいたのか、慌てて
言い訳をしようとしてる
智弥
あっ、ほら、それよりもうすぐチャイム鳴るよ!

女子
えっ? ……あ、本当だ!

女子
2人ともじゃあね!

女子
またね〜!

教室の時計を見ると、もう朝の時間が
終わろうとしているところだった
智弥
あ、危なかった……

そういえばとも君、活動の
ことをここまで隠せてるの、
何気にすごいなぁ……