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朝、目が覚めると
陸は左腕をじっと見つめた
イルが付けた傷が瘡蓋になっている
枕元のリストバンドを着けて
制服に着替えた陸は
ズボンのポケットに 交換したイルのカッターを入れて
机の上の洗顔シートで顔を拭いた
今、洗面所に行けば空と鉢合わせになる
母親の顔も見たくなかったため
朝食も食べずに玄関へ向かう
松崎文
松崎陸
松崎文
松崎陸
松崎文
松崎文
陸は母親の感情が理解できなかった
食事はちゃんと作るし決して家事に手を抜いてはいない
陸の洋服も空と同じように洗濯しアイロンもきちんとかけてくれている
それなのに口を開けば文句ばかりで
特に成績のことでネチネチとしつこく絡んでくる
何もせずに放置してくれた方が陸にとっては気が楽だった
松崎文
松崎文
母親は陸に弁当箱を投げつけ
台所に戻っていく
投げつけられた弁当箱を拾い上げると
まだほのかに温かくて
陸は黙ってそれを鞄に入れて家を出た
駅までの足取りはいつもよりも軽く
もしかしたらまたイルに会えるかもしれない
微かな期待を胸に電車に乗るも
結局イルに会うことはなかった
陸の高校は駅の東側に位置していて
イルの高校は反対の西側にあるため
駅の改札はいつも両校の生徒達でごった返していた
そんな人混みに紛れつつ
陸は学校のある東側へと進んでいく
松田麻衣子
相変わらずのテンションで声をかけてくる麻衣子
いつものようにそれを無視して歩く陸
昨日あれだけ冷たい態度を取ったにも関わらず
麻衣子はめげることなく近寄ってきた
陸の脳裏にイルの姿が浮かぶ
陸と同じように自傷行為をする少女
陸と同じように強くなりたいと願い
もう二度としないと誓い合った
麻衣子とはまるで違う
弱々しい部分もあるけれど
それでも精一杯生きようとするイルの姿が
陸の頭に焼き付いて離れなかった
浜松イル
イルの言葉が頭の中に浮かぶ
松崎陸
松田麻衣子
松崎陸
松田麻衣子
麻衣子から逃れるように
陸は学校に向かって全速力で走る
松田麻衣子
松田麻衣子
麻衣子は陸の態度に苛立ちつつも
松田麻衣子
より一層、陸への思いを募らせていた
麻衣子から逃れ校舎に辿り着いた陸は
教室には行かずにそのまま屋上に向かっていた
屋上の鍵はなぜかいつも空いていて
扉のすぐ横には梯子がある
その先にある塔屋と呼ばれる場所には滅多に人が来ないため
時々、身を隠すために利用していた
しばらくして始業のチャイムが鳴るも
陸は教室には戻らなかった