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次回待ってます!
第1話待ってました!!タイトル名や最後の文章はポップンミュージックの曲の一つだよね…!?(ポップン勢)次回の第2話も楽しみにしてます!!✨️
ついにキタ━(゚∀゚)━!
青藍色に深く染まった空にぽつりと浮かぶ、黒い人影。 目を凝らさないと見えないほどに微かな気配をしたその人影は、手にしている大鎌に話しかけていた。
と、大鎌の言葉に答える人影。
人影はそう告げると、『おうよ』と気合の入った大鎌の声を合図に、闇に溶けるようにして姿を消す。
静まり返る晩の空。
そこにはもう、誰もいない。
春が訪れ、イヤフォンから流れるJ-POPは、キラキラとした曲調に乗せて“ステキな夜”を歌っている。
しかし、実際の夜道はというと
塾帰りの道。家々の明かりは灯っているのに、まるで全てが眠りについてしまったかのように静かだった。
時たま住居から響き渡る、聞くも温かそうなシャワーの音を羨みながら、彼女はふと、行きの電車で起こった出来事を思い返す。
電車に揺られる中、風香はバッグの重さが普段よりも何か足りないことに気づいた。
違和感があった。何か、大事なものを忘れているように思えた。 心臓がざわつくのを感じながら、バッグの中を探る。 財布、ハンカチ、勉強道具……揃っている。
なのに、何かが足りない。
クマのマスコットが取り付けられた、ピンク色の手のひらに収まる長四角のモノ…
よりによってこんな日に…
少しの間、思考が止まった。
無意識にポケットや制服の中を探る。 ない。どこにもない。
東季崎ぁ、東季崎でございまぁす
アナウンスが車内に響いた瞬間、風香の顔から血の気が引いた。
風香は、携帯を忘れてしまったのだ。
街灯の光が、頼りなく夜道を照らしている。
嫌になってしまった風香は、この道から一刻も早く抜け出すべく歩調を速めた。
―――時だった。
…ピタ
……ピタ
………ピタ
曲越しから聞こえる、ずぶ濡れの靴を履いた時の足音にも似た音。
じっとりと水を含み、這いずり回るようなその音を聞き、風香は思わず足を止めた。
――――何…?この不気味な音。
イヤフォンを外し、耳を澄ませる。
…ピタ
……ピタ
どんどん大きさを増していくその音。
嫌な汗が背筋にじっとりにじむ。
そう思っても、足が言うことを聞かない。
恐る恐る、ゆっくり振り返ってみる。
月明かりがぼんやりと差す歩道の先、そこには
……ピタ!
ぬめりを帯び、大小無数のいぼにまみれた肌。 よどんだ目がぎょろりとこちらを見据える、ガマガエルのような“何か”がいた。
世にもおぞましい姿形に、風香は声にならない叫びを上げた。
ピタ…
ピタ…
目を瞑りながら、すぐさまに踵を返した。
ピタ…ピタ!
ずんぐりむっくりした体型に反し、そいつはどんどん足を速めていく。
生温く、ぶよぶよとした感触が腕を走る。
恐怖か、はたまた疲れからか、喉も身体も凍てついたまま。
なすすべもないこの状態で、感情が読めないまん丸の瞳と、風香の瞳が重なった。
わたし、食べられちゃうんだ
その時、風香は死を覚悟した。
しかし、そんな覚悟も一瞬にして打ち砕かれることとなった。
勇ましい声と共に、怪物はいともたやすく斬り裂かれた。
耳障りな断末魔と残酷な光景。 風香はとっさに目と耳を塞いだ。
聞き覚えのある少年の声と、どこか軽そうな青年の声が、風香の耳に飛び込んできた。
青年の声に従い、ゆっくり瞼を上げる。
視界が鮮明になりつつあった時、風香は目を丸くした。
背丈ほどの大きさのある大鎌を軽々と持つ、宮廷服を纏った少年が、風香の瞳に映し出されていた。
艷やかな銀色の髪に落ち着いた声、そして、何よりも自分を射抜くような鋭い眼差し。
今までの記憶が風香の脳内を駆け巡り始めた。
授業開始が迫る中でも、困った様子を見せる生徒に親身になって相談に乗る彼。
去り際に拾ったハンカチを、すぐさまに持ち主へ返す彼。
―――間違いない…
恐怖、驚き、そして片思いの相手が助けてくれたという興奮。
様々な絵の具を混ぜようとすると、結局は黒に行きつくように、いくつもの感情に心を乱されると人間は何も口に出せなくなるのだろう。
沈黙が落ちた後、風香はぽつりとそう言った。
二人きりのはずのこの場に、見知らぬ青年の声が再び。
いきなりのことに、しどろもどろになってしまう風香。
赤月先輩は「驚かせちゃったか」と申し訳なさそうに言い「コイツが言ってるんだよ」と、大鎌を指さした。
思わぬ答えに、風香は気の抜けた声を出してしまった。
―――いや!そもそも、怪物だとか、先輩がこんな王子様みたいな服着てる時点でファンタジーのソレ…なんだけど!
その返事はなんだかこそばゆいな、と彼は照れ笑い。 普段は見せない茶目っ気に、興奮がより強まる。
以前から“魔法少女”や“変身ヒーロー”に強く憧れていた彼女にとって、その言葉はあまりにも魅力的に聞こえたのだ。
大鎌――シャドウは『よっ!』とでも言いたげな挨拶をした。
かくつきながらも、風香も手を上げてみる。
彼女の緊張が少しずつ解けてきたのを見て、ダスクはふっと微笑んだ。
ふと、ダスクが真剣な眼差しで告げ、シャドウが鼻を鳴らすようにそう言った。
唐突な言葉に戸惑う風香を横目に、さながらマジシャンのようにダスクは指を鳴らした。
パチーン―――
乾いた指の音が夜の空気に弾けた瞬間、風香の視界が一転した。
空間がゆらぎ、まるでシャボン玉の中に包まれるような感覚。
叫ぼうとした時、風香はベッドの上に転がっていた。
白い天井、アイドルのポスター、そして、ピンクの携帯電話。
紛れもなく、そこは風香の部屋だった。
夢から覚めたような感覚だったが、高鳴る胸の鼓動と冷や汗は、確かに本物だ。
心を落ち着かせる為に、風香は窓を覗くことにした。
暗く沈む紺碧の海に、ラメをぶちまけたかのように眩い星々が散りばめられていた。
そして、そんな海を優しく照らす三日月。
息を呑むほどの絶景に、風香は目を奪われていた。
ねぇ、見上げてみて 今夜の夜空
見えているでしょ? お月様
愛の奇跡をみせてあげる
Do you believe in LOVE?
Yes,I'm just feeling now.
――――MiracleMoon∼お月様が中継局∼