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港町は、まだ目を覚ましていなかった。 薄い朝靄が水面を覆い、桟橋の木板は夜の冷えを残したまま静かに鳴る。 ルアは、潮の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。 この匂いを覚えている限り、迷わない——そう信じている。
サフィ
サフィ
背後から、落ち着いた声がする。 サフィだった。金色の髪は朝の光を含んで、砂のようにやわらかく揺れている。
ルア
ルア
ルアは胸元を軽く叩き、笑った。 サフィはその仕草を見て、ほんの少しだけ口元を緩める。
二人は双子だった。 同じ日に生まれ、同じ空を見て育ち、違うものに心を惹かれながらも、いつも並んで歩いてきた。 海と砂の境界で。
サフィ
確認するような言葉だったが、止める響きはない。 サフィは知っていた。ルアの決意が、潮の流れのように戻らないことを。
ルア
答えは短い。 それで十分だった。 船の帆が、風を受けてふくらむ。 町の鐘が遠くで鳴り、夜と朝の境目がほどけていく。
二人は同時に、船へと足を踏み出した。 この旅が、どこへ続くのか。 何を失い、何を得るのか。 ——まだ、知らない。 けれど、確かなことが一つだけあった。 潮と砂が混じり合うその先に、 ふたりの道がある。
菜猫
菜猫
菜猫
菜猫
菜猫
菜猫
菜猫
菜猫