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七不思議その7

真夜中に屋上に行った者は、

─誰一人、帰ってこない。

ヒスイ

刹那、目の前の霊から感じていた呪力が、急に強くなった。

─正確には、気配が増えたと言うべきだろうか。

???

あ゛あ゛…ァ…あ゛

???

あづぃ…ぁづいよぉお…

???

おがあ゛さ…死に゛たぐな゛い゛ぃ

???

みず…みずぅ゛…だれ゛かぁ゛…

ヒスイ

ヒスイ

(……沢山の犠牲者の声が、)

ヒスイ

(目の前の霊に集まってくる…。)

ヒスイ

翡翠が上の制服の裾を捲り、

腰に隠して付けていたホルダーから、霊符を取り出す。

ヒスイ

ヒスイ

(…不本意だけど、)

ヒスイ

(祓うしかないのかな…?)

一触即発の張り詰めた雰囲気の中、

???

ヒスイ

─っバンッ

ホノカ

ホノカ

翡翠ちゃんっ!

勢いよくドアを開けたのは、

ヒスイ

ヒスイ

ヒスイ

…帆乃香さん?!

翡翠を追ってきた帆乃香だった。

???

???

……人…だぁあ…

???

生ぎてる゛…人…だ…

ヒスイ

ヒスイ

(…これは…マズイ…)

ホノカ

ホノカ

ねぇ、翡翠ちゃん、隣のモヤモヤって……

ヒスイ

ヒスイ

(中途半端に見えてちゃってる…)

???

ヒト…だぁ……私…と…お゛な゛じ!!!!

ヒスイ

目の前の霊が、帆乃香に向けて勢いよく手を伸ばす。

ヒスイ

帆乃香さんっっ!!!

ホノカ

えっ、わぁ!!!

翡翠が横に何回転かして帆乃香を抱き上げ、

霊からの攻撃を避けた。

帆乃香を狙って外した手は、地面に衝突し、屋上の床を抉(えぐ)る。

ホノカ

ホノカ

……え…?

つい先程まで、自分が立っていた床が抉れているのを見て、

帆乃香の顔が途端に青ざめていく。

ホノカ

…な、何が起こって……

ホノカ

……っひ、翡翠ちゃん…?

ヒスイ

(そりゃそうだ…、より簡単に殺せそうな相手を狙うに決まってる)

ヒスイ

ヒスイ

……帆乃香さん、

ホノカ

…へ…?

ヒスイ

目を瞑って、私が良いと言うまで開けないで。

帆乃香を床に下ろし立ち上がり、ホルダーから霊符を抜き、

霊と相対する。

ヒスイ

ヒスイ

その間に、

ヒスイ

─全て終わらすから。

???

う゛ぅ゛う…ぁあ…

ヒスイ

(…にしても、)

ヒスイ

(無理に祓うのは最終手段だな…。)

ヒスイ

(だとしたら、どうやって還そうか。)

???

ひぐ……う…あ゛ぁ…

ヒスイ

ヒスイ

(…可哀想に。)

???

???

み…ずぅ…み゛ずぅう…あ

ヒスイ

(水…。)

ヒスイ

ヒスイ

(─っそうか!!)

翡翠はポケットから、もう1枚の霊符を取り出す。

ヒスイ

龍神非吊符…。

ヒスイ

ヒスイ

(…上手くいくかどうかわかんないけど、)

ヒスイ

ヒスイ

……やるしかないな。

左手で札を目の前に掲げ、

右手の人差し指と中指を立て、宙に印を切る。

そして、息を吸う。

ヒスイ

─千早(ちはや)ふる、

ヒスイ

神もみまさば立ちさばき

ヒスイ

天のとがはの樋口あけたまへ

─と、

一瞬の静けさのあと、

ヒスイ

─ポツン。

???

ポツ、

ヒスイ

─ザァァアァア─

ヒスイ

ヒスイ

ヒスイ

(上手くいった…?)

降ってきた雨に手を翳(かざ)しながら、翡翠が霊の方を見やると、

???

???

あ、ぁあ…

???

みず…水だぁあ……

ヒスイ

ヒスイ

(…心の底から、“これ”を求めていたのに、)

???

???

死にたくないなぁ…

???

???

…もっと、生きてたかった。

ヒスイ

ヒスイ

(それを得れば、自身が消えてしまう。)

ヒスイ

(…なぜなら、)

この世に残ってまで得たかったモノを、得てしまったから。

霊を形作るのは、主に「未練」や「望み」。

─それが消えた今、“この子達”が イるのはここではない。

ヒスイ

ヒスイ

……

徐々に薄くなっていく霊を、

翡翠は見届けた。

やがて雨と共に見えなくなった霊が、

きっと還ったのだろうと見た翡翠は、

しゃがみこんで目を瞑ってじっとしている帆乃香に歩み寄り、

声をかけた。

ヒスイ

…帆乃香さん、もういいよ。

ホノカ

言われて、恐る恐る目を開ける帆乃香。

ホノカ

ひすい…ちゃん。

ヒスイ

うん。

ホノカ

…あのユーレイは?

ヒスイ

ヒスイ

……イるべき場所に、還ったと思う。

ホノカ

ホノカ

……そっか、

ホノカ

ホノカ

……って、納得しかけたけど!!

ホノカ

…結局翡翠ちゃんは、

ホノカ

なんであの時学校に戻ったの…?

ホノカ

ホノカ

…ひすいちゃんは、

聞いていいことなのか、

一瞬躊躇った帆乃香だったが、

ホノカ

ホノカ

…翡翠ちゃんは、何者なの?

ヒスイ

ヒスイ

ヒスイ

──私は、【陰陽師】。

ヒスイ

ヒスイ

…霊を還したり、悪霊を祓うのがツトメ。

ホノカ

ホノカ

ホノカ

おんみょう…じ?

ヒスイ

うん。

ヒスイ

ヒスイ

…この世界の凡百(あらゆる)ものには、

ヒスイ

呪力(じゅりょく)と呼ばれる力が流れていて、

ヒスイ

空気のようにそこら辺に存在してたり、

ヒスイ

生物には勿論、

ヒスイ

モノに宿ることもある。

ホノカ

…私にも、翡翠ちゃんにも?

ヒスイ

うん、魂があるモノならなんでも。

ヒスイ

ヒスイ

そして、呪力は簡単に言えば霊的ナニカの力で、

ホノカ

(…アバウトだなぁ。)

ヒスイ

勿論霊そのものにも宿っている。

ヒスイ

ヒスイ

主に、
陰─マイナスな力と、

ヒスイ

陽─プラスな力に別れてて、

ヒスイ

私たちが普通持っている力が「陽」、

ヒスイ

負の感情なんかが原因で生まれるのが「陰」。

ヒスイ

【悪霊】と呼ばれる類やら、

ヒスイ

【呪物】とかの、いわゆる「曰く(いわく)付き」のものなんかに流れてるのが、

ヒスイ

マイナスな陰の力。

ヒスイ

これらの「陰」を「陽」の力をもって祓うのが【陰陽師】。

ホノカ

ホノカ

はい、質問いいですか?

ヒスイ

はいどうぞ帆乃香さん。

ホノカ

ホノカ

…陰を祓うのはなんで?

ヒスイ

陰に限った話じゃなくても、

ヒスイ

霊は、そもそもこの世にイるべき存在じゃないんだ。

ヒスイ

恐らく本人(本霊?)たちも、好きで留まっているワケじゃない。

ヒスイ

あの世に還すっていうのが近いかな?

ヒスイ

悪霊の場合、さっきみたいに危害を加えてくるから、

ヒスイ

最終手段として、無理やりあの世に還す、

ヒスイ

─祓うっていう手段を取ったりするんだ。

ホノカ

なるほど

ホノカ

続けてください

ヒスイ

わかりました。

ヒスイ

ヒスイ

─元々呪力の宿る全てのモノには、

ヒスイ

「魂」が存在してるハズで、

ヒスイ

その魂が、和御魂(にぎみたま)と言われる、

ヒスイ

陽の気によって形作られたモノなのかと、

ヒスイ

荒御魂(あらみたま)と呼ばれる、

ヒスイ

負の感情に呑まれた、陰の気からなるモノなのかの違いがあるんだ。

ホノカ

ホノカ

…負の感情に、呑まれる?

ヒスイ

うん。

ヒスイ

元々陽の気が流れていても、

ヒスイ

負の感情や陰の気に呑まれてしまうこともあるんだ。

ヒスイ

─私たちが【陰堕ち(かげおち)】って呼んでるモノなんだけど。

ホノカ

なるほど…。

ヒスイ

ヒスイ

…そして、

ヒスイ

そんな荒御魂が宿ってるモノを、

ヒスイ

─私たちは、まとめて【マガコト(禍事)】って呼んだりする。

ヒスイ

ヒスイ

……だいぶカッコよく説明すると、

ヒスイ

こんな感じかな?

ホノカ

うんすごい厨二心擽られるカンジ。

ホノカ

ホノカ

…つまり、マイナスはプラスでしか相殺できないけど、

ホノカ

結局はどっちも呪力をぶつけてるんだね。

ヒスイ

そういうことになるかな。

ホノカ

ホノカ

……じゃあ、さっきのは「マガコト」?

ヒスイ

そうだね。

ホノカ

なるほど…

ヒスイ

ヒスイ

…あの子達は負の感情に飲まれてて、マガコトになっていた

ホノカ

ホノカ

…何か、辛いことがあったのかな。

ヒスイ

ヒスイ

……そうかもしれない。

2人はただ、静まり返った夜空を見上げた。

「真夜中の七不思議」

〜おまけ〜

「陰陽師カミングアウト」

あの後の帰り道、

私の話したことや、屋上の霊の話を

他のみんなにも教えてあげたいと言った帆乃香さんに、

「5人だけの秘密にして欲しい」と伝え、話すことにした。

放課後:空き教室

ヒスイ

───と、

ヒスイ

こんなところ…かな。

ヒスイ

ざっくり、私が分かったとこまでの七不思議の真相と、

ヒスイ

…陰陽師や、マガコトのこと。

コトハ

コトハ

……えっと、

コトハ

コトハ

マジデ?

ヒスイ

うん、マジで。

カナウ

カナウ

…つ、つまり翡翠ちゃんは、

カナウ

その、陰陽師として、

カナウ

この学校にイた霊を祓いにきたってこと…?

ヒスイ

…うん、そうだね。

ホノカ

…私も知らなかった、

ホノカ

そうだったんだ…。

ミナミ

…なんだぁ、そうだったんだ…(泣)

ミナミ

……え、待て待て、

ミナミ

私たち取り憑かれたりとかなんかなったりしてない?!?

ミナミ

大丈夫コレ?!?!

ヒスイ

うーん…大丈夫な気がするけど…

ホノカ

ホノカ

─っその!!

カナウ

コトハ

どした帆乃香っち

ミナミ

びびびびっくりした急におっきい声出すじゃん

ホノカ

……ごめん、私のせいで……。

ホノカ

たまたま翡翠ちゃんがいたから、無事だったのかもしれない。

ホノカ

ホノカ

…誘っちゃって、皆を巻き込んで、

ホノカ

その、ごめんなさい。

コトハ

コトハ

……イヤならイヤって拒否ってるし、

コトハ

アタシだって乗り気やったんやもん。

コトハ

帆乃香1人が気にすることちゃうよ。

峯岸さんの言葉に、心海さんがすごい勢いで頷く。

ミナミ

翡翠ちゃんとも仲良くなれたし、

ミナミ

結果オーライでは???

コトハ

よく言うわ、あんなにビビっとったくせに…。

ミナミ

うるせぇな今くらいカッコつけさせろよ

カナウ

あははw

カナウ

─うん、私も。

カナウ

屋上の幽霊さん?も助けてあげられたんじゃないかな。

ホノカ

ホノカ

……みんなぁぁあ〜(泣)

ヒスイ

(……あれ、なんの話してたっけ。)

ヒスイ

ヒスイ

(…まあいっか、楽しそうだし。)

ホノカ

ホノカ

─翡翠ちゃん、

ヒスイ

ヒスイ

どうしたの帆乃香さん?

ホノカ

ありがとう、あの時助けてくれて。

ヒスイ

…ううん、

ヒスイ

私も、勝手に引き返してごめんなさい。

ホノカ

いや、追いかけたのは私だから!!!

ホノカ

ホノカ

あと、

ホノカ

帆乃香でいいよ。

コトハ

…っあ、アタシも!!

コトハ

琴葉って呼んで〜☆

ミナミ

心海!

カナウ

叶羽でいいよ!

ヒスイ

…うん、ありがとう。

笑いかけてくれたみんなに、私も微笑み返す。

ヒスイ

帆乃香…叶羽、琴葉…心海。

慣れない下呼びに、あからさまに皆が喜び、また笑いかけてくれる。

ヒスイ

…私も、翡翠でいいよ。

目の前の笑顔を見て、

…陰陽師として、人を救えたと思えた瞬間だった。

コトハ

ひすい!

ホノカ

翡翠、

カナウ

翡翠…ちゃん(?)

ミナミ

ひすい〜!

ヒスイの不可思議事件手帳

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