テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
26
78
214
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
雨は、夜になっても止まなかった。
図書館の明かりだけが、
静かに空間を照らしている。
橘遥樹は、机に肘をついたまま 外を見ていた。
眠そうでもなく、
かと言って起きている感じもしない。
ただ、ぼんやりと。
橘遥樹 タチバナハルキ
ぽつりと呟く。
桜月は本を閉じながら、小さく頷いた。
雨嶺桜月 アマミネサツキ
その言葉に、遥樹は少しだけ笑う。
橘遥樹 タチバナハルキ
軽い口調。
けれどその視線は、どこか遠かった。
しばらく沈黙が続く。
雨音が二人の間を埋めていた。
その時。
橘遥樹 タチバナハルキ
突然、遥樹が言った。
桜月が顔を上げる。
遥樹は、自分の手元を見ていた。
橘遥樹 タチバナハルキ
橘遥樹 タチバナハルキ
指先が、机の上をなぞる。
橘遥樹 タチバナハルキ
その声は、少し低かった。
桜月は何も言わない。
遥樹は、ゆっくりと話し始める。
橘遥樹 タチバナハルキ
橘遥樹 タチバナハルキ
雨音が、少しだけ強くなる。
橘遥樹 タチバナハルキ
小さく笑う。
橘遥樹 タチバナハルキ
橘遥樹 タチバナハルキ
言葉が、途中で切れる。
橘遥樹 タチバナハルキ
静かな声。
桜月は動かない。
遥樹は続ける。
橘遥樹 タチバナハルキ
橘遥樹 タチバナハルキ
橘遥樹 タチバナハルキ
少しだけ眉をひそめる。
橘遥樹 タチバナハルキ
短く息を吐く。
橘遥樹 タチバナハルキ
その言葉は、とても小さかった。
雨が、窓を叩く。
遥樹は目を伏せたまま言う。
橘遥樹 タチバナハルキ
橘遥樹 タチバナハルキ
少しだけ肩をすくめる。
橘遥樹 タチバナハルキ
軽く言ったつもりの言葉。
でも、どこか固かった。
桜月は静かに聞く。
雨嶺桜月 アマミネサツキ
遥樹は一瞬だけ黙る。
そして、少しだけ笑った。
橘遥樹 タチバナハルキ
視線は、机の上の本へ向く。
『橘遥樹』
橘遥樹 タチバナハルキ
ぽつりと落ちる言葉。
橘遥樹 タチバナハルキ
その一言だけが、やけに真っ直ぐだった。
桜月は、何も言えなかった。
言葉にしてしまえば、
壊れてしまいそうで。
遥樹は椅子から立ち上がる。
窓の近くまで歩いて、手を伸ばす。
ガラス越しに、雨粒が指先と重なる。
橘遥樹 タチバナハルキ
小さく呟く。
橘遥樹 タチバナハルキ
その声は、少しだけ遠かった。
その時、
本棚の奥で、一冊の本が小さな音を 立てた。
桜月の視線がそちらへ向く。
見慣れた背表紙。
『橘遥樹』
__さっきまで机の上にあったはずの本。
いつの間にか、棚に戻っている。
桜月はゆっくりと立ち上がる。
本に近づき、そっと手を伸ばす。
触れた瞬間、
ページがひとりでに開いた。
そこに書かれていたのは_____
「あの日、 彼は泣かなかった。」
ページが、静かにめくれる。
「泣かなかったのではなく、 泣けなかったのだと_____」
桜月の呼吸が止まる。
さらに文字が浮かび上がる。
「彼は知っていた。」
「ここで泣けば、 何かが終わってしまうことを。」
雨音が、強くなる。
桜月が顔を上げる。
窓の前に立つ遥樹。
その背中は少し小さく見えた。
本は最後にこう記した。
「だから彼は、 涙を選ばなかった。」
ページが閉じる。
音はしなかった。
ただ静かに、物語だけが残る。
桜月は本を抱えたまま、動けなかった。
その時、
橘遥樹 タチバナハルキ
遥樹の声がする。
振り返ると、
彼は少しだけ困ったように笑っていた。
橘遥樹 タチバナハルキ
橘遥樹 タチバナハルキ
胸に手を当てる。
ほんのわずかな動き。
でもそれは、確かに変化だった。
桜月は、ゆっくりと口を開く。
けれど_____
何も言えなかった。
言葉にしてしまえば、
追い詰めてしまいそうで。
ただ確かに、そばにいることしかできない。
外の雨は、まだ止まない。
けれど、
その音の奥で、
何かが少しずつ揺れ始めていた。
まだこぼれない。
_____涙の、前触れのように