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頼んだわけでもないのに、翔太が囮となって見張りをどこかへと連れて行ってしばらく。
ひなた
様子を伺っていた日向であるが、これ幸いとばかりに玄関脇のガレージへの扉に手をかける。
正面から突っ込んでも構わないのであるが、しかしさすがに家の中の構造も分からなければ、どうやって瑠奈に目にものを言わせるのかさえ考えていない。
ひなた
今さら後悔したって遅かった。
なんせ、法令の発令から施行までの猶予が短すぎる。
やはり、実情はあまり考慮せず、机の上だけで物事を考える人達が作り出した法案である。
現場のこと――すなわち、実際に法令に適用とされる人間のことなんて考えちゃいない。
むしろ、これだけの短時間で、これまでの罠を用意できたのは上等だと言えよう。
ひなた
ひなた
ひなた
ひなた
日向は周囲を見回す。
ガレージの中は暗く、手探りで何かを探すにしても、時間がかかりそうだ。
日向はあらかじめ用意していたペンライトの明かりを点けると、それで周囲を確認する。
ひなた
ひなた
ふと、そこで学校のことを思い出す。
ひなた
ひなた
学校は燃やしてしまったし、何よりも先生を含めて数名の生徒をすでに殺してしまった。
いくら罪には問われずとも、これまでと同じように、何事もなかったかのように過ごすことは不可能だ。
ひなた
日向はもう後戻りができない。
だからこそ、前に進むしかなかった。
前に進むだけ進んで、たどり着いたその先には……果たして何があるのだろうか。
ひなた
人間というものは、この理性というものが外れてしまった時が一番怖い。
いわゆる無敵の人――と呼ばれる状態は、自分のことはどうなっても構わない、後先考えない、いわゆるトランス状態のようなもの。
そこに常識はないし倫理観もない。
むろん、人の心なんてものもない。
ひなた
溜め息混じりに呟いた時、見慣れないものが目に入った。
ひなた
ペレットストーブとは、家全体を温めるための暖房器具。
中にペレットと呼ばれる粒状の燃料を入れ、それを燃焼させることで家を温める。
ひなた
日向はストーブに近づくと、中を確認する。
時期が時期ということもあり、ペレット燃料は入っていない。
ひなた
続いて周囲を探索すると、日向はガレージの奥にペレット燃料が袋詰めされて保存されているのを発見。
しかも、その袋のうちひとつは開封済みで、まだ半分ほどのペレット燃料が残っていた。
ひなた
ひなた
これはもう運命なのであろう。
瑠奈の家にペレットストーブが設置されているのも、そして――。
同じものが、昔から日向の家にあるのも。
すなわち、ペレットストーブの知識が日向にあるということ。
それが、こんなところで役に立つとは。
ひなた
ひなた
これはもはや、神のお膳立てだ。
日向は小さく笑みを浮かべると、早速準備へと取り掛かった。