夏の気配を感じる日差しが、
大きな窓から差し込んでくる。
依頼人の入江正憲(いりえ まさのり)は、
額に浮かんだ汗をハンドタオルで拭った。
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江は深々と頭を下げる。
風都(かざと)
風都は少しめんどくさそうに、
本を読んでいる星崎に尋ねた。
星崎(ほしざき)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
顔を上げた入江は、
鞄の中からくしゃくしゃになった
数枚の履歴書を取り出し、
風都に手渡した。
風都(かざと)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
風都(かざと)
風都(かざと)
風都(かざと)
風都(かざと)
入江(いりえ)
星崎(ほしざき)
星崎(ほしざき)
星崎(ほしざき)
星崎(ほしざき)
入江(いりえ)
風都(かざと)
風都(かざと)
風都(かざと)
風都(かざと)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
風都(かざと)
風都(かざと)
入江(いりえ)
風都(かざと)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
風都(かざと)
入江(いりえ)
頷いた瞬間、
汗が額から流れ落ち
入江は慌てて汗を拭う。
風都(かざと)
風都(かざと)
星崎(ほしざき)
星崎(ほしざき)
珍しく星崎が口を挟んでいた。
入江(いりえ)
星崎(ほしざき)
星崎に見つめられ、
入江はその手が微かに震える。
入江(いりえ)
入江(いりえ)
そして、
何かを誤魔化すように
また額を拭った。
星崎(ほしざき)
入江(いりえ)
星崎(ほしざき)
入江(いりえ)
入江は視線を彷徨わせ、
腹をくくったように
入江(いりえ)
と答えた。
風都(かざと)
風都(かざと)
風都(かざと)
風都(かざと)
風都(かざと)
風都は首を傾げ、
事務所から出て行く二人の後を追った。
・
・
没入型お化け屋敷
【キリコの呪い】は
最寄りの駅から徒歩五分、
雑居ビルの四階にあった。
入江の話しによれば、
スタッフが三人いなくなった日から
臨時休業をしているという。
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江はブツブツと文句を言いながら、
お化け屋敷の扉を開けた。
・
・
中は真っ暗で、
何故か線香の香りが漂っていた。
入江(いりえ)
入江はそう言い置いて、
非常口と書かれた扉を開け
中に入っていった。
星崎(ほしざき)
風都(かざと)
風都(かざと)
風都(かざと)
風都はスマホで調べた情報を伝える。
星崎(ほしざき)
風都(かざと)
風都(かざと)
そう言ったところで
部屋の電気が点いた。
・
壁も扉も真っ黒で、
短い廊下の先に
長い髪の女の子が
俯き加減で立っていた。
元は真っ白なワンピースだったのだろう。
ところどころ赤黒い血に染まり、
足や手には痛々しい痣が、
右腕は変な方向に折れ曲がっていた。
風都(かざと)
星崎(ほしざき)
ほぼ無感情に星崎は答えた。
入江(いりえ)
入江(いりえ)
星崎(ほしざき)
星崎(ほしざき)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江を先頭に三人は歩みを進める。
最初のシーンは、
傘をさして歩いているキリコ。
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
星崎(ほしざき)
星崎(ほしざき)
入江(いりえ)
先に進むと、
地面に傘とクマのぬいぐるみが落ちていて、
ビルの中に引きずり込まれるキリコの姿が。
必死の形相で助けを求めるその様は、
あまりにもよく出来ていて
一瞬それが人形であることを
忘れるほどだった。
その次にあったのは、
埋められ
地面から折れ曲がった
右手だけが出ているシーン。
風都(かざと)
風都は痛々しい顔をして
右手を見つめる。
その部屋を出て短い廊下を進む。
入江(いりえ)
入江(いりえ)
その言葉通り、
今までと雰囲気ががらりと変わる。
・
色鮮やかになり、
可愛らしいクマや
ウサギのぬいぐるみがあるのだが、
それはところどころ
赤黒い血痕が付いていたり、
耳が欠けていたり、
裂かれた腹から中綿が飛び出していた。
さらに先に進むと、
ぬいぐるみが大きくなり、
その手にはバールやハンマーなど
凶器を持っている姿に変わる。
可愛らしい表情も
凶悪なものになっていた。
風都(かざと)
バールを振りかざすクマを見つめ、
風都がぽつりと呟く。
それは恐怖から心を守るため、
本能的に記憶が捻じ曲がること。
入江(いりえ)
入江(いりえ)
風都(かざと)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
星崎(ほしざき)
入江(いりえ)
言いながら三人は廊下に出る。
・
星崎(ほしざき)
立ち止まって星崎が足元に視線を落とす。
風都(かざと)
風都が足元を覗き込むと、
そこにはガラス板がはめられ、
その下に
風都(かざと)
顔面が腫れあがって
原型を留めていない
キリコの頭が。
それと目が合った瞬間、
背筋に冷たいものが走った。
風都(かざと)
星崎(ほしざき)
星崎はキリコを凝視する。
風都(かざと)
星崎(ほしざき)
入江(いりえ)
入江はどこか自慢げに声をかけてきた。
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
風都(かざと)
星崎(ほしざき)
星崎(ほしざき)
次の部屋には、
人形がたくさん並んでいた。
・
だが、その中には頭が無かったり、
腕や足がねじ曲がっていたりと
どれもこれも異様な姿をした
人形たちばかりだった。
風都(かざと)
風都(かざと)
風都(かざと)
入江(いりえ)
入江はどこか嬉しそうに言った。
風都(かざと)
風都(かざと)
風都(かざと)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
風都(かざと)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
風都(かざと)
風都(かざと)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
風都(かざと)
星崎(ほしざき)
お化け屋敷の出口付近まで進んでいた星崎が、
振り返って尋ねてきた。
入江(いりえ)
出口横の関係者以外立ち入り禁止
と書かれた扉を開けると、
そこはごく普通の廊下があった。
・
入江(いりえ)
入江(いりえ)
休憩室は簡易的なテーブルと
パイプ椅子が置かれ、
電子レンジや電気ポットもあった。
大きな窓もあり窮屈な感じはしない。
その隣の更衣室は、
ダイヤル式の鍵がついたロッカーがあり、
それぞれ【キリコA】【キリコB】
【案内人】【真犯人①】【真犯人②】
と書かれていた。
それをまじまじと星崎は見つめる。
風都(かざと)
入江(いりえ)
風都(かざと)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
風都(かざと)
風都(かざと)
入江(いりえ)
星崎(ほしざき)
入江(いりえ)
星崎(ほしざき)
風都(かざと)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
星崎(ほしざき)
星崎(ほしざき)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
風都(かざと)
風都は信じられないという顔をする。
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
星崎(ほしざき)
星崎(ほしざき)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
入江(いりえ)
星崎(ほしざき)
星崎(ほしざき)
星崎(ほしざき)
入江(いりえ)
入江はきっぱりと言い放った。
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風都(かざと)
風都(かざと)
風都(かざと)
帰りの車の中、
風都は星崎に尋ねる。
風都(かざと)
風都(かざと)
風都(かざと)
星崎(ほしざき)
星崎(ほしざき)
風都(かざと)
星崎(ほしざき)
星崎(ほしざき)
風都(かざと)
風都の脳裏を過ったのは、
暑くもないのに汗を流し、
星崎に見つめられて怯える入江の姿だった。
風都(かざと)
星崎(ほしざき)
風都(かざと)
風都(かざと)
星崎(ほしざき)
星崎(ほしざき)
風都(かざと)
風都は明るく返事をし、
すぐに作業に取り掛かった。
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