私は今、独りで花園に来ている。
鈴
……花なんて嫌いなのに……。
何でこんなに綺麗って思えちゃうんだろ。
野良猫
にゃぁ……?
鈴
……野良猫?
野良猫
にゃっ、にゃっ!
ついて来て、と言っているみたいだから、その猫を追った。
野良猫
にゃーっ。
鈴
……この花……?
鈴
(確かに綺麗)
ブチッ
野良猫
にゃあっ!
猫が引っ掻いて、その花の茎を ちぎってくわえて持ってきた。
野良猫
にゃんっ!
鈴
……くれるの?
ありがと……!
ありがと……!
手に持った瞬間、〝 何か〟 が流れ込んでくる感覚がする。
鈴
あれ……?
鈴
私、何で……?
鈴
なんで手が光って……!?
野良猫
にゃあああ!
ぴょい、と野良猫が私の手に乗っかった。
その時
知らないイケメン
フゥ、やっと野良猫から戻れた。
鈴
あ、あなた、だれ……?
知らないイケメン
ああ俺?
知らないイケメン
俺はさっき野良猫だった、
「ゆーま」って名前だ。
「ゆーま」って名前だ。
ゆーま
元に戻してくれてありがとな!
鈴
あの、さっきのお花は何……?
ゆーま
ああ。
ゆーま
「月乃花(つきのばな)」
の事か?
の事か?
ゆーま
アレは、俺が人間に戻る為だけに咲いた花だ。俺が野良猫じゃ無くなったら、
もう時期枯れるさ。
もう時期枯れるさ。
鈴
……そう……。
ゆーま
じゃあ、お前。俺と一緒に逝かないか?
鈴
え!?
ゆーま
綺麗な花園を見せてやるよ。
鈴
やっと理解した。
鈴
アレを発動して、例えば私が猫から戻ったら、私は消えちゃう。その、戻らせてくれた人も一緒に。そうでしょ?
ゆーま
察しがいいな。その通りだ。
スゥゥ、と身体が透けていく。
そして、綺麗な花園が見える。