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もう、みんな、辛すぎる...1番好きな小説です。
ぶくしつ!
ブクマ&マイリスト失礼します!!🙇🏻
斑模様になった服で
急いで受付で伝えられた場所に走る
𝑅.
そこには
びしょ濡れの服を
貸してもらったのか、 タオルで覆っている長男がいた
𝑁.
焦点が合ってない
なのに
無理やり笑おうとする
𝑁.
𝑅.
𝑁.
彼の目線の先にあったのは
集中治療室
しばらくの間、
沈黙が続いた
ひとつ上の兄も
次男も
そして僕も
なにも言えなかった
言ってしまったら
もっとその場にいた彼を 傷つけてしまう気がして
彼は、俯いたまま
表情が読めない
と、
受付の方から騒がしい物音がして
𝐶.
息を切らした四男が来た
𝑅.
𝑁.
𝑁.
細い声だった
消えそうな声とは真逆の
作ったような笑顔
いちばん上の兄は
貼り付けたような笑みが多いけれど
精神的に限界なのか
今日は精度が低い
𝐶.
𝑁.
𝑁.
𝐶.
びっくりして肩が跳ねる
4人分の視線を受けながら
長男の方へずかずかと歩み寄る
成長期で長男と同じくらいの 目線の四男は
それだけでも迫力があった
急に大きな音が響く
最初はなんの音か分からなかった
𝐽.
兄の目線の先に
右頬が赤くなった長男と
左手が赤くなった四男がいた
𝐽.
𝑅.
次男が五男を手で制す
間に入るのを止められたのは
𝐶.
彼が泣いていたから
𝐶.
𝐶.
泣きながら声を荒らげる
𝐶.
𝐶.
𝐶.
声が小さくなるとともに
その場にしゃがみこむ
長男は前髪で目が隠れて
どんな表情かわからない
𝑅.
背中をさすりながら
彼の隣に一緒にしゃがむ
彼の嗚咽が静寂を刺す
隣にいたひとつ上の兄も
微動だにしない長男のそばに行き
そっと、彼に後ろから抱きついた
ぼく、は
なにもしなかった
なにもできなかった
だって
僕はこの悲劇の傍観者だから
僕はこの事件の登場人物には なれない
吐き出しそうな嫌悪感を
どうすればいいのか
自分でも分からなかった
ぱっ、と
緑のランプが消える
医師
𝑁.
すぐに顔を上げる
その顔に涙の跡はなかった
医師
医師
𝑅.
𝑅.
いちばん上の兄が
後ろにいる彼の手を握る
𝐽.
医師
𝑁.
医師
再び医師は緑のランプが 消えた部屋に入っていく
さっきまで一切反応しなかった彼が
膝から崩れかけたのを
僕は見ていた
𝐽.
ぎりぎりで受け止めたジェルくんが
抱きとめたまま
彼の背中を壁につける
𝑁.
口元を
手の甲で抑えたまま
俯く
𝑅.
𝐶.
目が真っ赤になった四男に
彼が肩を貸す
今すぐに
ここから消えたかった
気持ちを堪えながら
どうにか逃げないように
この場から走り去らないように
自分で自分の手を握り締める
お腹の傷を縫われた彼がいる
個室の病室に入る
入る時に
少しだけ
次男の顔が曇った気がした
𝑁.
静かな別世界みたいな空間
𝐶.
彼は手を伸ばして
ベッドにいる兄の頬を撫でた
𝑅.
𝑅.
𝑅.
𝑅.
𝑁.
𝑁.
𝐽.
𝑅.
心配そうに兄たちを見上げる五男
僕は
家にもここにも
いたくない
なんて
言ったら怒られるかな
𝑅.
𝑅.
𝑅.
そんなこと言われたら
断れるわけないじゃん
病室から
少しふらつきながら
長男が出ていく
彼を追って出ていこうとする兄に
𝑅.
𝐽.
𝑅.
なにか、耳打ちをした
𝐽.
𝐽.
振り返らずに出ていく兄を
ぼーっと眺めてから
ちらりと後ろをむく
そこにある光景は
美しいと思えた
夜ご飯を食べる気にもなれなくて
いつも一緒にご飯を食べていた彼は
ご飯を用意して 部屋に戻ってしまった兄を
追いかけるように
二階へ上がっていってしまったため
また、
この広いキッチンにひとり
昨日まであんなに 騒がしかったリビングからも
今はなにも聞こえてこない
このまま寝ようかとも考えたけれど
どうにも目が冴えてしまって
デカフェの紅茶でも飲もうかと
いつも遊ぶ時には 必ず紅茶を淹れてくれる大好きな兄が
どこからティーバッグを とっていたか思い出す
そういえば
𝑅.
𝑅.
ティーバッグをコップにいれて
水が沸騰するのを待つ
時折
二階から
声が聞こえたのは
空耳か
しゅー、と
湯気が出たやかんを
ミトンで持って
恐る恐るコップに注ぐ
いつもする
ふわっとした甘い香りも
今は淹れ方が違うのか、
少し薄い
色づいてきたお湯を見て
ティーバッグの水をきって
ゴミ箱に捨てる
ふぅーっ、と
息を吹きかければ
いつもみたいに
白い湯気がたつ
少し薄い香りを感じながら
ずずっ、と
紅茶をすする
危うく舌を火傷しかけた
胃まで焼きそうな熱さ
熱さに隠れた
いつもはない苦味
分からなくなった甘さ
わからない
なぜ
急に
気持ちがせり上がってきたのかは
わからない
急な破壊衝動
持っていたコップを
思いっきり持ち上げる
肌が焼けるような
冷たいのか熱いのか わからないような感覚も無視して
床に振り下ろす
かちっ
耳に小さな音が響いて
時計が時を刻んだ
ああ
そうだ
このコップ
莉犬にぃのお気に入りの コップだったな
そう思い出して
腕を急に失速させる
反動で
手全体に熱湯を浴びる
痛いのに
このままでいいと思えてしまえて
嫌いだ
頑張って呼ばないようにした
僕特有の兄たちの呼び方も
分かったつもりでいた
普通が幸せであることも
なにひとつ理解出来てない
失わないと気づかない
バカみたい
この手の痛みも
僕にちょうどいい制裁に思えて
上から聞こえてくる泣き声も
莉犬にぃがジェルにぃの横で 呟いた言葉も
ころにぃがさとにぃを想う気持ちも
どれも
僕には
到底叶わない
知ってる
知ってるのに
受け入れたはずなのに
なぜ僕は
求めてしまうのか
わからない
その場に座り込んで
膝を抱えて
熱がこもりやすいよう丸くなったのは
手は熱くて熱くてたまらないのに
背中は
寒くて寒くて
到底温まりそうになかったからだ
𝑡𝑜 𝑏𝑒 𝑐𝑜𝑛𝑡𝑖𝑛𝑢𝑒𝑑...