TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

〜前回のあらすじ〜

〜前回を読めば分かるので省略〜

大石優 1票 谷口寛也 1票 星晴真 1票 斉川冬樹 1票 奥村修 1票 荒川和重 1票

奥村修

これで……また1票ずつになりましたね

大石優

あ、ああ……

奥村修

ええと、皆さん投票の順番は……

斉川→大石→荒川→奥村→星→谷口→斉川→……

奥村修

……で合ってますね

奥村修

じゃ、じゃあ皆さん、部屋の真ん中に携帯を置いて……もう操作はしないで下さい

奥村修

これで全員出られますから……あとは時間が来るまで待ってましょう

谷口寛也

そうだな……

大石優

(……一番年下の奥村君が、仕切り役になっちまったな)

大石優

(まあ、仕方ないか……奥村君以外は、全員裏切ってるんだから……口挟める資格なんてない)

星晴真

…………

荒川和重

…………

大石優

(どうして……どうして荒川先生は冬樹に投票したんだ……?)

大石優

(先生は……冬樹の事情を知ってるのか? だから援助しようとと思ったとか……)

大石優

(でも……担任じゃないんだし、冬樹だって自分から言う訳ないのに、なんで知ってるんだ……?)

大石優

(もっと謎なのは星先輩だ……。谷口先輩に票を入れたくなかったのは分かるけど、どうしてその代わりに先生を選んだんだ?)

大石優

(先生は金に困ってなんかいないだろうし、そこまで大きな恩もあるとは思えないのに……)

奥村修

あの……鳳凰院さん

奥村修

もう僕たち携帯触りませんから、これでもう終わりにして、早く解放させてくれませんか?

………………

奥村修

鳳凰院さん……?

谷口寛也

おい、返事くらいしろよ

………………

大石優

な……なんだ……?

星晴真

なんで何も言わないんだよ……

谷口寛也

おい! だんまりコイてんじゃねぇぞ! なんとか言えよ!

………………

奥村修

ま……まさか……

奥村修

鳳凰院さんは……本当に僕たちを手にかけるつもりなんじゃ……

大石優

はっ……!?

星晴真

そ、そんな訳ねーだろ! あんなグダグダやってた女が!

奥村修

でも、いきなり何も話さなくなるのはおかしいじゃないですか!

奥村修

僕たちを騙して疑心暗鬼にさせてから、本当に抹殺するつもりじゃ……!

斉川冬樹

えっ……!? な、なんだアレは……!?

大石優

うわっ……!

谷口寛也

なんだよあの白い液体は!?

荒川和重

は、離れましょう皆さん!

斉川冬樹

でも、逃げる場所がないのに、どこへ……!

奥村修

……え?

大石優

ね、猫……?

タバサ

こらダイラタンシー! また逃げ出して!

ダイラタンシー

にゃーん

タバサ

すみません皆様。お嬢様の飼い猫が逃げ出して、マイクをかじって壊してしまいました

谷口寛也

……勘違いさせんじゃねぇ!

大石優

猫は液体って本当だったんですね……

奥村修

……騒いでごめんなさい

タバサ

マイク機能が壊れてしまいましたので、お嬢様のお言葉を代わってお伝えさせて頂きます

タバサ

まず、マイクの修理に時間がかかるので、以降のゲームは全て中止し、投票後に全員解放致します

大石優

……予備のマイクとかあるんじゃないんですか?

タバサ

ええ、故障に備えて4300本用意しておいたのですが、全てこのダイラタンシーが破壊してしまったので……

谷口寛也

その猫はマイクに一族郎党殺されたのか?

ダイラタンシー

にゃん

タバサ

また、先程のボーナスについてですが、流石に6人全員に20万をお配りすると今月のお小遣いが底を尽きてしまうとのことですので、条件を変更させて頂きます

大石優

逆に今まで全部お小遣いの範囲で賄えてたのか……

タバサ

ボーナスの総額は60万円で固定です。これを最多票を獲得した人同士で均等に分配致します

タバサ

つまり、最多票を獲得した人数に応じて……

1人→60万円 2人→各30万円 3人→各20万円 4人→各15万円 5人→各12万円 6人→各10万円

タバサ

……となります

タバサ

脱落によるペナルティはございません。最多票者同士でお互いに投票し合っていても、ボーナスは問題なく受け取れます

タバサ

ただしお嬢様が仰った通り、自分への投票は無効票扱いと致します

タバサ

投票時間の切り上げについては認められません。お手数ですが時間終了までお待ち下さい

タバサ

それでは

大石優

…………

大石優

(1人か2人の時は多く貰えるけど、4人以上だと少なくなる……)

大石優

(もちろん、最低の10万でも俺たちにとっちゃかなりの大金だけど……)

大石優

(……でも……)

谷口寛也

……修。俺と星の携帯持ってきてくれ

奥村修

え……ど、どうして……?

谷口寛也

おい星……お前は斉川に入れろよ。俺は投票止めるから

星晴真

……お前、金はいいのかよ?

谷口寛也

いいよ俺は。けど修は……金がないんだろ?

奥村修

そ、そんなことないよ、別に……

谷口寛也

だってお前、画材が高騰してて、部費だけじゃ足りないって前に言ってたじゃねぇか

奥村修

それは……!

大石優

(だから谷口さんは、さっき奥村君に投票したのか……)

奥村修

ヒロ君だって、サッカー部の部費が足りないって言ってたじゃないか

谷口寛也

冗談に決まってんだろ。サッカーなんて部費が足りなくてもなんとかなるし、最悪カンパすればいいしよ

谷口寛也

けど美術部は、画材が買えなかったらどうしようもないし、部員だって少ねぇんだから……

奥村修

そ、そうだけど……

谷口寛也

塾講師のバイトだって、画材代を稼ぐために始めたんだろ?

谷口寛也

でもそれも結局、身体が持たなくてすぐ辞めちまって……

谷口寛也

画材がどれくらいするかは知らねぇけど、10何万もあったら結構足しになるだろ?

奥村修

……そう思ったから、さっきは僕に投票したの?

谷口寛也

……そうだよ。そんなん言わなくても分かんだろ

奥村修

…………

奥村修

……ごめんなさい、ヒロ君

谷口寛也

……は? なんで、お前が謝んだよ

奥村修

ヒロ君は結局、僕のことを大切に考えてくれてたんだね

奥村修

それなら僕だって、さっきのカウントダウンの時に、ヒロ君に投票し直すべきだったのに……

谷口寛也

ば、馬鹿っ、何言ってんだよ! それで良いんだよ取り決めしてたんだから!

谷口寛也

俺が約束破って、勝手に修に入れただけなんだから……

奥村修

ヒロ君……ありがとう。ヒロ君みたいな人がいてくれて、本当に良かった……

谷口寛也

…………

奥村修

ヒロ君? どうしたの?

谷口寛也

ほっとけ!

星晴真

ふっ……

谷口寛也

笑ってんじゃねぇぞテメェ!

星晴真

……斉川に投票したぞ

谷口寛也

俺も票戻した

奥村修

これで順番は……

斉川→大石→荒川→奥村→星→斉川→……

奥村修

……になりますね

星晴真

ああ……

大石優

(谷口先輩……自分だって金は欲しいだろうに、真っ先に降りるなんて……)

大石優

(……俺も見習わないとな。別に金に困っちゃいないんだから、本当に必要な人に譲るべきだ)

荒川和重

…………

大石優

(それは多分……荒川先生も同じだろう)

大石優

(先生は多分、冬樹の事情を知ってるんだ。家庭調査票は提出してるはずだから、調べようと思えば調べられるはず)

大石優

(疑問なのはどうして調べようかと思ったことだけど……まあ置いておこう)

大石優

……冬樹

斉川冬樹

……なんだよ

大石優

俺も、俺も良いよ。俺も投票止めるから

大石優

で、あの……先生もいいんですよね?

荒川和重

えっ……?

大石優

先生もさっき、冬樹に投票してたじゃないですか

荒川和重

そ、そうですが……

大石優

奥村君、俺と冬樹と先生の携帯を持ってきてくれ

大石優

俺と先生が投票を止めて、冬樹が奥村君に投票すれば……3人になるから、元の20万に……

星晴真

……止めろよ

大石優

え……?

星晴真

何お前、先生巻き込んでんだよ

星晴真

辞退したいんだったら1人でしろよ。勝手に先生まで辞退させんじゃねーよ

大石優

それは……だって、先生は一番お金いらないじゃないですか

荒川和重

…………

大石優

いくらかは知りませんけど、それなりの給料は貰ってるんでしょう? だったらこのボーナスも……

星晴真

だから、勝手に決めんじゃねーよ!

星晴真

給料貰ってるからなんなんだよ! 先生だって奥村みたいに事情があって、金が足りてないかも知れねーじゃねーか!

大石優

そ、そんな事情、先生にあるとは……

荒川和重

…………

大石優

(えっ……?)

大石優

せ、先生もお金に困ってるんですか?

荒川和重

いや……それは……

大石優

(この反応……まさか本当に困ってるのか?)

大石優

(でも、それならどうして、さっきは冬樹に投票したんだ……?)

谷口寛也

……おい、星

星晴真

なんだよ

谷口寛也

お前、先生の何を知ってるんだよ?

星晴真

は、はあ?

谷口寛也

お前の言い分も分かるけど、そこまでかばうのも変だろ

谷口寛也

さっきの投票だって、お前先生に票入れてたじゃねぇか

星晴真

そ、それは……先生にはお世話になってるから……

谷口寛也

だからって、20万もの大金を渡すほどじゃねぇだろ

谷口寛也

どうしてそんなに先生に金あげたいんだよ?

星晴真

うるせーよ!! 人の事情に口出すんじゃねー!!

奥村修

ほ、星先輩! 落ち着いて下さい……!

荒川和重

…………

大石優

……分かりました。それなら代わりに、星さんが辞退してくれませんか?

星晴真

は、はぁ……?

大石優

個人的には、冬樹以外なら誰が辞退してくれても構わないんです

大石優

本音を言えば冬樹だけにして、60万を貰って欲しいんですけど、奥村君や他の皆さんだって事情はあるでしょうし

大石優

だからとりあえず、冬樹を含めて3人が最多票になって欲しいんですよ

大石優

そうすれば最初の追加ルールと同じ金額を渡せますから……

星晴真

大石……お前はどうしてそんなに斉川の肩持つんだよ?

大石優

それは……皆さん分かるでしょう?

斉川冬樹

……めろよ……

大石優

冬樹は特待生だし、毎日バイトと勉強詰めで大変なんですよ

星晴真

それは皆一緒だろ。俺たちだって部活があるし、お前だって生徒会の仕事が……

大石優

いや、一番大変なのは冬樹なんですよ! ゆっくりできる時間だってないんですから!

大石優

先生だって、それ知ってるからさっきは冬樹に投票してくれたんですよね?

荒川和重

そ……そうですが……

斉川冬樹

止めろよ……

大石優

お願いしますよ星先輩! 野球部の予算がほしいなら、俺がなんとか都合つけますから──

斉川冬樹

止めろっつってんだよッ!!

大石優

うあっ!?

斉川冬樹

ふざけんな!! お前に何が分かるんだよ!!

谷口寛也

や、止めろ斉川! 落ち着け! 落ち着けよ!

斉川冬樹

お前、何様のつもりだよ!?

大石優

何様って……なんだよその言い方! 俺たちは友達じゃねぇのかよ!

大石優

俺は小さい頃から、冬樹、お前の頑張ってるところを間近で見てきた……!

大石優

お前の頭ならもっと上の学校だって目指せるんだ! 金がないからって諦めて欲しくないんだよ!

斉川冬樹

勝手に……勝手に人の人生を決めつけるな!!

斉川冬樹

お前は昔からそうだ……! 僕につきまとっては、勝手に同情して、勝手に茶々を入れてくる!

斉川冬樹

そういう哀れみが一番ムカつくんだよ! もう僕に関わるな!

大石優

なんだよ……なんだよその言い方!?

谷口寛也

止めろ! 止めろよ2人とも!

星晴真

落ち着けよ、おい!

荒川和重

…………

奥村修

せ、先生も止めて下さい! 先生!

大石優

なんでそんなに嫌がんだよ! お前だって金は欲しいだろ!?

大石優

お前が毎日苦労してるから、こっちは少しでも家計の足しになればと思って……!

斉川冬樹

苦労なんかしてない! 勝手に決めつけるなって、何回言えば分かるんだ!!

斉川冬樹

そうやって哀れんでくるのが嫌なんだって、何回言えば分かるんだよ!!

大石優

う……うるせぇよ!! そんなに同情されるのが嫌なら、親父さんの遺産使えばいいだろうが!

大石優

お前がつまんねぇ意地張ってるせいで、おばあさんたちも苦労してんのが分かんねぇのか!!

斉川冬樹

お前が口を挟むなッ!! あんな男の金なんか、誰が──!!

荒川和重

……使ってくれ……!

斉川冬樹

は……?

荒川和重

頼む、冬樹……! 金を使ってくれ……!

荒川和重

私はもう、見たくないんだ……! お前が苦労する姿は……!

大石優

せ、先生……?

星晴真

ど、どういうことだよ父さん! まさか……!?

谷口寛也

あぁ!?

星晴真

あっ──!

奥村修

今……父さんって……

星晴真

ち、違う! 言い間違いだ! 口が滑っただけで──

荒川和重

……いや、いいんだ晴真……

荒川和重

私は謝らないといけないんだ……お前にも、冬樹にも……

斉川冬樹

な、何を勘違いしてるんですか! 僕の父はとっくに──

荒川和重

……それは嘘だ……彼女のご両親と交わした嘘なんだ

大石優

……まさか……

荒川和重

ああ……。晴真も、冬樹も……私の息子なんだ

荒川和重

全ての始まりは、私の愚かな過ちだった

荒川和重

17年前……晴真を産んだ妻は、産後の心身不良でひどく機嫌が悪く、私たちは喧嘩ばかりしていた

荒川和重

言い争いの日々に嫌気が差した私は、短期の出張で地方に行った際、独身だと嘘を付き、現地の女性と行きずりの関係を持ってしまったんだ

大石優

まさか、それが……冬樹のお母さん……?

荒川和重

ああ……。翌日、事の重大さに気付いた私は、何も言わずに姿を消した

荒川和重

浮気はバレなかったものの、出張から帰って間もなく、妻からは三下り半を突きつけられた

荒川和重

慰謝料も請求されたが、喧嘩の証拠や周囲の証言から、裁判では双方に非があると認められ、払わずに済んだ

荒川和重

晴真も、親権こそ取れなかったが、定期的な面会は確約させた

荒川和重

後はただ、息子への生活費だけを払い続けていればいい……そう思っていたんだ

星晴真

…………

荒川和重

……1年以上続いた裁判が、終わった直後だ。あの時の浮気相手の両親が、私に接触してきたのは……

荒川和重

そこで初めて知ったよ。彼女が人知れず私の子供を身ごもり、出産していたこと

荒川和重

そして、産後の肥立ちが悪く、彼女が亡くなっていたことを……

荒川和重

娘を傷物にされた怒りを元に、ご両親は僅かな手がかりから私の素性を突き止めたんだ

斉川冬樹

…………

荒川和重

私は焦った。ご両親に騒がれたら、別れた妻に浮気の事実が知られてしまう

荒川和重

そうなれば慰謝料も改めて請求されるのは確実だ。息子とも会えなくなってしまうかも知れない

荒川和重

私は浮気をもみ消すために、方々を駆けずり回って金を借り、慰謝料と将来分の養育費を一括で渡したんだ

大石優

……その時に、自分も亡くなったことにしたんですね

荒川和重

ああ……騙して捨てた女性との子供なんて、会える資格はない

荒川和重

ご両親が出した条件に、従う他なかったんだ……

荒川和重

……それから15年が経った。皮肉なことに、私が過ちを犯した場所のすぐ近くにある学校に辞令が下された

荒川和重

しかも、その学校は、息子が……晴真がいる学校だったんだ

星晴真

……面会で話を聞かされた時は驚いたよ

星晴真

まさか離婚してるとは言え、自分の父親が俺の学校に来るなんてよ。そんなんやって良いのかよ?

荒川和重

いや……通常なら、身内が通う学校に赴任されることはない

荒川和重

ただ……もう15年も前のことだ。私が離婚していることを知る人はほぼいなくなり、調書でも見落とされてしまったんだろう

荒川和重

……何より驚いたのは……同じ学校に、浮気相手の子供も入学してきたことだったけどね

斉川冬樹

……名字で疑って、家庭調査票を調べて発覚した。そんな所でしょう?

荒川和重

……そうだ。君が金銭面で苦労していると知って、最初は疑問だったんだ。あの時、決して安くない金を渡したというのに……

荒川和重

君は……御祖父母からどれだけ話を伺っているんだい?

斉川冬樹

母親は病気で亡くなった……それを知った父親は、1人で育てる自信がなく、自分たちに僕を押し付けて失踪した

斉川冬樹

やっとのことで消息を突き止めたら、事故死していた……そう聞かされた

斉川冬樹

僕を……子供を捨てて逃げた男なんて、父親失格だ

斉川冬樹

幼稚だと言われようと、そんな男の遺産なんて使いたくなかったんだ

荒川和重

……そうか……

谷口寛也

アンタ……最低の親父じゃねぇか

星晴真

っ……! うるせーよ! テメーに何が分かんだよ!

谷口寛也

あぁ……!?

星晴真

俺も母さんも、もう父さんのことは許してんだよ

星晴真

半年前に打ち明けられたんだ……俺が生まれたばかりの頃に浮気して、子供までいるって

星晴真

その子のために借金までして養育費を渡して……今も返済に追われてるって……

星晴真

全部聞いて……その上で俺も母さんも許したんだ。外野がどうこう言うことじゃねーんだよ!

奥村修

じゃ、じゃあ……星先輩は知ってたんですか? 斉川先輩が先生の子供だって……

星晴真

それは……

荒川和重

……それだけは、話せなかった。もし2人が会ってしまったらと思うと……言い出せなかった……

荒川和重

所詮私は、最低の人間だ……

荒川和重

自分の秘密がバレるのが怖くて、蓋をして逃げ続けてきた、父親失格の男なんだ……!

星晴真

父さん……

大石優

せ、先生……

斉川冬樹

そんな……そんな訳、ないじゃないか!!

荒川和重

…………!

大石優

冬樹……?

斉川冬樹

確かに貴方は、父親としては失格かも知れない……

斉川冬樹

でも、決して最低の人間なんかじゃない!

斉川冬樹

先生はずっと……僕につきっきりで、勉強の面倒を見てくれたじゃないですか……!

荒川和重

……再来年の共通は、過去の出題傾向から見て、古典の題材はこれ、古文はこの辺りが出る可能性が高いですね

斉川冬樹

はい

荒川和重

もちろん来年の出題次第で変わるかも知れませんから、他の範囲の勉強も怠らないようにしましょう

荒川和重

各予備校の予想問題も、発表され次第取り寄せられるよう手配しておきますね

斉川冬樹

…………

荒川和重

あと、現代文の方は……

斉川冬樹

あの……先生

荒川和重

どうしましたか?

斉川冬樹

どうして先生は……僕をそこまでサポートしてくれるんですか?

荒川和重

……何を言ってるんですか。頑張っている生徒を教師が支えるのは当然でしょう

斉川冬樹

それでも、ここまでしてくれる理由が分かりません

斉川冬樹

他の先生から聞きました。学校にない問題集や参考書は、先生が自腹を切って買い揃えてるって……

斉川冬樹

今日だって、もう時間過ぎてるのに、僕のために遅くまで付き合ってくれて……

斉川冬樹

他の教科も、担当の先生が見られない時は一緒に考えてくれたりして……こんなの、どう考えても一教師の範囲を超えてます

斉川冬樹

どうして、そこまで……

荒川和重

……君の家庭の事情は、調査票で伺っていますから

荒川和重

これだけ努力している人が、家庭の事情で夢を諦めてしまうなんて、あってはなりません

荒川和重

君の努力が実を結ぶまで……私は喜んで協力します

斉川冬樹

先生……

斉川冬樹

あの時思ったんです……この人が、僕の父さんだったら良かったのにって……

荒川和重

それは、違う……ただの、ただの贖罪の気持ちに過ぎないんだ

荒川和重

金を渡すだけで、今までなんの世話もしてやれなかったから……せめて勉強だけでも、助けになってやりたいと思って……

斉川冬樹

それでも僕は嬉しかったんだ! 父親に捨てられた僕に、こんなに親身になってくれる人がいたことに……!

斉川冬樹

僕が今まで勉強を続けてこれたのは、間違いなく先生なんだ

斉川冬樹

そんな、そんな人を……憎めるはずが、ないじゃないか……!

荒川和重

ふ……冬、樹……

荒川和重

済まなかった……済まなかった、冬樹……

斉川冬樹

もういい、もういいんだよ……父さん……

大石優

……冬樹……

星晴真

父さん……

奥村修

……あ……

谷口寛也

どうした修?

奥村修

モニター見て。カウントが……とっくに終わってる

大石優

…………本当だ。けどなんで、0になったのに何も起きないんだ?

谷口寛也

なんだよ鳳凰院の野郎……今度は何企んでやがんだ!

タバサ

いえ、マイクの故障の影響でそちらのスピーカーもエラーが起きて停止しているだけです

タバサ

だいぶ前から把握していたのですが、お取り込み中でしたので邪魔をしないよう待っておりました

谷口寛也

そうかよ……

奥村修

マイクの方は直ったんですか?

タバサ

ええ、現在●oogle本社から急遽ヘッドハンティングしたトップエンジニアグループによって、突貫工事での修復が進められています

ダイラタンシー

にゃん

大石優

世界経済の損失ですから直り次第速やかに●oogleに戻してあげて下さい

タバサ

こちらのスピーカーでも接続作業を行いますので、少々お待ち下さい

タバサ

てい! はあ! とー!

ダイラタンシー

にゃー!

星晴真

どう見ても叩いてるようにしか見えねーんだが

タバサ

大丈夫です! 私の必殺技のモンゴリアンチョップ(※違います)にかかればイチコロです!

奥村修

電化製品にイチコロって表現を使わないで下さい……

斉川冬樹

……優……さっきは、悪かった

大石優

冬樹……

斉川冬樹

俺も意固地になってたんだ……おばあさんたちから嘘の話を言われて……

斉川冬樹

逃げたのに金は残していったことが、かえって責任逃れしているみたいで……許せなかったんだ

大石優

い、いいよ別に! お前が素直になってくれたんなら……

タバサ

直りました! お騒がせ致しました

星晴真

マジかよ……

タバサ

あとは再セットアップするだけですね。少々お待ち下さい

斉川冬樹

……タバサさん。貴方たちは僕たちの事情を何もかも知っていたんですか?

タバサ

斉川様の経済状況や、星様と荒川様の親子関係については、身辺調査により把握しておりました

タバサ

ですが……斉川様と荒川様の関係までは把握しておりません

タバサ

荒川様が事情をお話しになられた際は、お嬢様はめっちゃ焦っておられましたよ

星晴真

目に浮かぶな……それで結局、どうして鳳凰院の奴は俺たちをこんなゲームに参加させたんだ?

タバサ

そ、それは……私の口からは……

奥村修

お願いです、教えて下さい。鳳凰院さんは話してくれそうにないですから

谷口寛也

俺たちをここまで引っ掻き回しといて、だんまりコイてんじゃ──

大石優

あ……画面点いた

鳳凰院紫

あぁぁぁぁぁあーーーーー!!! 尊いーーーーー!!!

大石優

うあぁっ!?

鳳凰院紫

良きーーーー!! すごく良きーーーーー!!

谷口寛也

う、うるせぇなぁあの野郎!

星晴真

静かにしろ鳳凰院!

鳳凰院紫

良かったぁぁぁぁぁ!! 本当に良かったぁぁぁぁ!!

谷口寛也

おい聞けよ! うるせぇんだよお前!

奥村修

駄目だ、全然聞いてない……

大石優

た、タバサさん! 黙らせるよう言ってきて下さい!

タバサ

か、かしこまりました!

鳳凰院紫

はああああ……良い……良い……良かったぁぁあ……!!

斉川冬樹

あ、あれがあの女の素顔か……

奥村修

なんか見覚えある……確か昼休みに中庭でビュッフェみたいなのやってたかも……

谷口寛也

なんなんだよアイツ……さっきから何が良いって言ってんだよ?

奥村修

さ、さあ……

鳳凰院紫

良いよ、良いよ……本当に良かったぁぁぁぁ……これで、これで……

鳳凰院紫

これで次の新刊、落とさなくて済む……!

鳳凰院紫

こんなに尊い絡みが見れるなんて、ホントに拉致ってきてよかったぁ……!

大石優

………………

鳳凰院紫

いいよぉほんと良い……安楽死不可避……

鳳凰院紫

まさか、まさかの、ここに来ての和×冬……和冬ーーーー!!

鳳凰院紫

ねえ凄くない!? ゲーム前は単に先生と教え子ってだけのありがちカプだったのが、ここに来て一気に最大手に躍り出ましたよ!? 誰が予想できるコレぇ!?

元●oogleエンジニア

Huh, what……?

鳳凰院紫

しかも見た!? 和冬前のすぐタンのエグい絡み!

鳳凰院紫

何アイツ人前であんなエロいすがり方してんだよ! ヤり捨てされるメンヘラかよ! 誘ってんじゃねぇぞ総受け会長がよぉ!

鳳凰院紫

その点ねぇ〜ヒロオサの王道カプはねぇ〜! 最初にヤりあった時は滾ったけどぉ〜!

鳳凰院紫

後からあんな濃厚な色恋沙汰見せられたら流石に負けますわ! こんなんじゃ供給足りねぇよぉ!

鳳凰院紫

こりゃあ次も全員さらうしかねぇなぁ! 次はやっぱ●ックスしないと出られない部屋かぁ!? あーはっはっは!

タバサ

お嬢様! 全部聞こえてます! モニターも点きっぱなしです!

大石優

………………

谷口寛也

………………

星晴真

………………

斉川冬樹

………………

奥村修

………………

荒川和重

ええと……どういう意味なのでしょうか……?

鳳凰院紫

………………

ゲームマスター

……さて……諸君、誰に投票をするか決まったかね?

大石優

…………

斉川冬樹

…………

奥村修

…………

ゲームマスター

ん……? おい、谷口と星はどこへ行った?

荒川和重

…………

ゲームマスター

なんだお前ら、黙ってないでさっさと……

どごおおおおおお

ゲームマスター

いやーーーーーー!!!

後編 終わり

フハイゲーム 〜腐りし野望に堕とされた犠牲者達〜

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

6

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚