真琴
待って!!
そう言った途中で
…お兄ちゃんじゃないことに、 気づいた。
振り返ったその人は、
ピンク色のぶた頭だった。
ぶた頭
…よくわからないけど、
ぶた頭
人違いだと思いますよ
真琴
…すいません
真琴
間違えました
ぶた頭
いや、大丈夫
ぶた頭
僕が誰だかなんて、
ぶた頭
この姿じゃ誰も分からない
と思うし
と思うし
ぶた頭の彼はそう言った。
真琴
…あなたも、
真琴
記憶をなくして
しまったんですか?
しまったんですか?
ぶた頭
…そうですね
キリンさん
真琴さん!!
キリンさんが、走って 私のところに追いついた。
キリンさん
…あれ?
キリンさん
お兄さんじゃ
なかったんですね
なかったんですね
真琴
うん、
人違いだった
人違いだった
ぶた頭
あ、
ぶた頭
あなたも動物の
頭だ
頭だ
キリンさんを見て、 ぶた頭の彼は言った。
ぶた頭
僕以外の動物頭の
方を見たのは、
方を見たのは、
ぶた頭
初めてです
キリンさん
…どうやら、
この世界は
この世界は
キリンさん
記憶をなくした人は
キリンさん
自分の顔も忘れて
しまっているため
しまっているため
キリンさん
動物の頭に変わって
しまうようですね
しまうようですね
ぶた頭
はは、酷いですよね
ぶた頭
僕なんて豚ですよ?
ぶた頭
まぁ、記憶なんて
取り戻さなくていいけど
取り戻さなくていいけど
真琴
あなたは、
真琴
記憶を取り戻したいと
思わないんですか?
思わないんですか?
ぶた頭
…別に記憶なんて
どうだっていいです
どうだっていいです
ぶた頭
もしかしたら、僕は
ぶた頭
生前嫌なことがあって
ぶた頭
記憶を忘れたかったの
かもしれませんね
かもしれませんね
私のお兄ちゃんは 見かけていないと教えてくれた、
ぶた頭の彼にさよならを 言ってから
また、それぞれ別々の道を 歩き出した。
真琴
(…なーんだ)
真琴
(すぐに願いなんて、
叶わないじゃん)
叶わないじゃん)