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主。
主。
主。
主。
Prに連れられてAkのお見舞いに行った次の日の放課後、 オレは海岸に来て相変わらずぼーっと海を眺めているAtに声をかけた
Mz
いつも通り海水に足をつけている彼は、 オレの声を捉えると緩慢な動作でこちらに視線を向けた
At
At
Atのとても短い質問の意図をいつもと同じものだろうと解釈したオレは、 何も言わずに首を振るだけして返事をした
At
オレがあえて言葉にしなかったことをわざわざ言語化してきたAtに、 オレは少し頰が熱くなる感覚と共にボソリと文句を言う
Mz
At
Atにぶつけられた至極真っ当な質問で、オレはやっとおかしな自分に気がつく
Mz
しかし、その自分の不思議な感情の原因は自分でも分からなかった
Mz
At
Mz
オレの言葉を聞いたAtはいつもと同じような少し大人びた笑みを浮かべる
しかし、この前は何も感じなかったその笑顔は、 本当に楽しいと思っている人間の笑顔にしては いささか不自然なものであるように感じた
Mz
オレは自分の失礼な思考回路を心の中でたしなめ、 海岸でAtに会ったら伝えようと思っていたことを伝えることにした
Mz
At
Mz
Mz
At
At
Mz
Mz
Mz
At
Mz
Mz
Mz
オレがそう言うと、彼は遠くを見つめたままこんなことを聞いてきた
At
数日前なら、「近いうちに自殺するつもりだ」って答えたに違いない 彼の質問に、オレは笑って答える
Mz
その返答を聞いてAtはこちらを向き、 今度は不自然な感じなど微塵もない優しい優しい笑顔を浮かべた
Mz
At
At
その笑顔にありえないくらい心臓を高鳴らせている自分に気づいて、 オレは生まれてこの方一度も経験したことがないような 得体の知れない自分の体の反応に混乱を起こす
Mz
Mz
Atはオレの人生を変えてくれた恩人であるし、 仲良くなりたいと思っているのは間違いのないことであろう
でも、仲良くなりたいと思っているのはAkやPrも同じのはずで、 しかしその誰とも異なる心臓の動きにオレは困惑した
Mz
At
At
Mz
At
そこで会話が途切れ、その場には沈黙が落ちる
普段は心地いいと感じるはずのその沈黙だが、 今日は何故だかそれが寂しいものであるように感じた
Mz
Mz
オレが話題を探してキョロキョロと辺りを見回すと、 自分の通学カバンからチラリとのぞくAtに教えてもらったラノベが目に入る
Mz
Mz
At
オレは自身の通学カバンから 先日図書室で借りた例のラノベを取り出し、Atに見せる
彼はオレが手に持っているその本の表紙を見ると 少しだけ驚いた様子を見せて、それって、とつぶやいた
Mz
Mz
At
Mz
At
Mz
Atはオレの方を見てしばらく呆然としていたが、 その後少しだけ下を向く
Mz
彼の不思議な言動に疑問が湧くが、 彼が変わった奴であるのは今に始まった事ではないので オレは構わず続けることにした
Mz
Mz
At
オレがその後もこのシーンが良かっただの あそこのヒロインのセリフが刺さっただのと話を繋いでいく
オレが会話を続けて行くうちに、下を向いていた彼は少しずつ顔をあげて 最終的にはオレの方を向きながら話を聞いてくれた
やがてその表情を安心したようなものに変えた彼は、 オレの瞳をじっと見つめながらこんなことをつぶやく
At
Mz
Atはオレの返答を聞いて少し嬉しそうにするが、 しばらくすると何かに驚いたように目を見開いて固まった
At
Mz
少し様子が変わったAtに心配になってオレがそう尋ねると、 彼はいや、と否定の言葉を放ってこういう
At
Mz
こういうときに何でもないという人間は大体何かあるものだが、 その“何か”を隠したい気持ちもわかるのでオレは下手に追及しない事にした
Mz
オレはパラパラとラノベをめくりながら、 一巻の感想やら何やらをAtに話しつつ、何物にも代えがたい、 AkやPrといる時とは違う心地よさのある時間を過ごしていく
そんなこんなでAtとラノベについて話していると、 あっという間に太陽が沈む時間になった
Mz
At
Mz
そう言ってオレが自身のスマホの時計を見せると、 Atは本当だ、もうすぐ夜じゃんと口にする
Mz
At
Mz
オレはいつも通りAtを海岸に残して孤児院に戻ろうとしたが、 今までとは異なり少し寂しいと感じている自分に気がついて驚く
Mz
Mz
Mz
PrーのすけがMzちを連れてきた放課後から数日が経ち、 今日は金曜日だ
Ak
現在はちょうど昼ごはんを終えたくらいの時間で、 午前中に最近頑張っているリハビリを済ませたオレは サイドテーブルに置いてあるPrーのすけが借りてきてくれた 文庫本を手に取り、読み進めていく
普通の子は学校がある時間帯で、 Prーのすけが来るのも2、3時間くらい先の話だ
Ak
Ak
オレのためにわざわざ故郷を飛び出してついてきてくれた 大好きな友人の優しさに胸がくすぐったくなりながら、 オレが窓から差し込む陽光を受けながら読書するという 贅沢な時間を楽しんでいると、コンコンと病室の扉がノックされる音がした
Ak
Ak
一瞬本を交換しているあの子かもしれないと思ったものの、 そういえばお互いの病室は知らないんだったと思い出してその説は消えた
オレが得体の知れない扉の向こう側にいる誰かに 怪訝な気持ちになっていると、今度は先ほどより乱暴に扉がノックされた
Ak
これは絶対に居留守を使ったほうがいいと判断し、 オレは息をひそめてガンガンと扉を叩く誰かに無視を決め込む
その状態が1分ほど続いた頃、聞き覚えのある声がした
クラスメイト(大阪)
クラスメイト(大阪)
Ak
扉の向こうにいるのは、 あの日オレを屋上から突き落とすように男子たちに指示した 大阪の学校の同級生だった
Ak
正直言って、自分に危害を加えた相手になんか会いたくない
このまま放置しておけば看護師さんたちも気づいて、 彼女を止めてくれるはずだと無視を決め込んでいたが、 はぁ、とため息をついて女の子はいった
クラスメイト(大阪)
彼女は乱暴にそう吐き捨てると、ガラッと勝手に扉を開けて この病室に入ってきた
Ak
Ak
クラスメイト(大阪)
クラスメイト(大阪)
クラスメイト(大阪)
Ak
自分はなにも悪くない、そう心の中では思っていても、 かつて彼女から受けた体や言葉の痛みを思い出して何もいえなくなってしまう
クラスメイト(大阪)
クラスメイト(大阪)
クラスメイト(大阪)
クラスメイト(大阪)
クラスメイト(大阪)
Ak
クラスメイト(大阪)
Ak
彼女はオレを憎しみのこもった目線で射抜く
それは君の自業自得だ、そんな当たり前のことが心に浮かんだが、 死んでしまえばよかったと真正面から言われて かなり傷を受けたオレにはそんなこと言えるわけがなかった
クラスメイト(大阪)
クラスメイト(大阪)
彼女は自分の言葉で傷ついているオレを見て、 楽しそうに笑っている
クラスメイト(大阪)
クラスメイト(大阪)
きっと昔のオレなら、その言葉を聞いてオレなんかと友達にならなければ Prーのすけはもっと幸せだったかも知れないと考えるだろう
でも、わざわざオレのために住み慣れた故郷から一緒に上京してくれた 彼の姿が教えてくれたその暖かくて強い友愛を目の当たりにして、 そんなに卑屈になるのはかえって彼に失礼だと考えるようになっていた
クラスメイト(大阪)
バカにするようにそう告げた彼女の姿に、オレは怒りを覚えた
その理由は、決して自分をバカにされたからではない
オレのためにここまでしてくれる優しい彼のあふれんばかりの友愛を、 侮辱されたように感じたからだ
Ak
クラスメイト(大阪)
最初と同じようなことを言い募ろうとする相手だが、 オレの心境は最初のものとは違った
Ak
今までのおとなしくて従順な姿とは打って変わったように 瞳にはっきりとした敵意を灯しながら叫んだオレに、 彼女は面食らった様子を見せる
クラスメイト(大阪)
Ak
Ak
Ak
Ak
クラスメイト(大阪)
Ak
クラスメイト(大阪)
彼女は態度が豹変したオレに怯えた様子を見せながら足早に病室を後にし、 ずんずんと病院の外に向かって歩いて行った
数分後彼女が病院から出て行く姿を窓から確認することができ、 オレは安心しながらはぁっ、と息を吐く
Ak
先ほど彼女がオレに放った「死んじゃえばよかった」という言葉が 何度も頭の中をリフレインして、心をジクジクと痛めつける
Ak
久しぶりに心に受けた言葉の刃がオレの瞳から水滴を押し出し、 オレは1人で静かに涙をこぼしていた
Ak
いつも通り俺が放課後Akのお見舞いに行くと、 彼はいつも通り本を読んでいた
Pr
Ak
俺に気がつくと彼は嬉しそうな顔をしてキラキラと笑うが、 普段はドキリと高鳴るはずのその笑顔には 今日はときめきよりも違和感を感じた
Pr
Pr
Ak
俺の言葉を聞いたAkは一瞬図星をつかれたMzのような表情をするが すぐにそれを繕い、にへら、と嘘くさい笑みを浮かべる
Ak
Pr
Pr
Pr
Ak
Pr
結局その日はそればっかり考えてしまって、 Akの嘘くさい笑顔の理由に迫る勇気を持つことはできなかった
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