TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

主。

みなさんこんにちはっ!!

主。

こちら、『太陽が沈む、その前に。』の第六話となります

主。

注意事項等はプロローグ参照

主。

それでは、いってらしゃいませ!!

Prに連れられてAkのお見舞いに行った次の日の放課後、 オレは海岸に来て相変わらずぼーっと海を眺めているAtに声をかけた

Mz

At、来たぞー

いつも通り海水に足をつけている彼は、 オレの声を捉えると緩慢な動作でこちらに視線を向けた

At

また、来てくれたんだ

At

今日は?

Atのとても短い質問の意図をいつもと同じものだろうと解釈したオレは、 何も言わずに首を振るだけして返事をした

At

今日も、ただ単に俺と話に来たんだ

オレがあえて言葉にしなかったことをわざわざ言語化してきたAtに、 オレは少し頰が熱くなる感覚と共にボソリと文句を言う

Mz

恥ずいから言わなかったのに、、、

At

え?何で恥ずかしいの?

Atにぶつけられた至極真っ当な質問で、オレはやっとおかしな自分に気がつく

Mz

(確かに、それだけにわざわざ恥ずかしいって思うのも変な話だよな)

しかし、その自分の不思議な感情の原因は自分でも分からなかった

Mz

何でだろ、?

At

俺が聞いてるんだけど?

Mz

悪い

オレの言葉を聞いたAtはいつもと同じような少し大人びた笑みを浮かべる

しかし、この前は何も感じなかったその笑顔は、 本当に楽しいと思っている人間の笑顔にしては いささか不自然なものであるように感じた

Mz

(人の笑顔に不自然とか、、、失礼すぎだろ)

オレは自分の失礼な思考回路を心の中でたしなめ、 海岸でAtに会ったら伝えようと思っていたことを伝えることにした

Mz

今日は、Atにお礼を言おうと思って

At

お礼、?

Mz

そう

Mz

この前さ、学校でオレと話してくれる奴ができたって言ったじゃん

At

確かに言ってたね

At

それがどうかしたの?

Mz

最近、そいつと友達になってさ

Mz

色々あって、そいつと仲がいい奴とも友達になって

Mz

その2人と一緒にいるのが楽しくて心地よくて、
オレ最近前よりもずっと幸せなんだ

At

へぇ、よかったじゃん

Mz

それで、Atがあの日オレを止めてくれなかったら、
こんな気持ち知らないまま死んでただろうし

Mz

本当は心の中で救いを求めていたことなんて気づかないで
この世から去っていただろうなって思って

Mz

Atのおかげだよ、ありがとう

オレがそう言うと、彼は遠くを見つめたままこんなことを聞いてきた

At

……Mzは、これからも生き続けるの?

数日前なら、「近いうちに自殺するつもりだ」って答えたに違いない 彼の質問に、オレは笑って答える

Mz

もうしばらくは、生きるよ

その返答を聞いてAtはこちらを向き、 今度は不自然な感じなど微塵もない優しい優しい笑顔を浮かべた

Mz

!!///

At

……そっか

At

生きる意味、見つけられて良かったね

その笑顔にありえないくらい心臓を高鳴らせている自分に気づいて、 オレは生まれてこの方一度も経験したことがないような 得体の知れない自分の体の反応に混乱を起こす

Mz

(何、これ)

Mz

(こんなの、知らないっ、!!)

Atはオレの人生を変えてくれた恩人であるし、 仲良くなりたいと思っているのは間違いのないことであろう

でも、仲良くなりたいと思っているのはAkやPrも同じのはずで、 しかしその誰とも異なる心臓の動きにオレは困惑した

Mz

(何で、こいつだけ、?)

At

Mz、大丈夫?

At

いつもとちょっと違うけど、、、

Mz

だ、大丈夫のはず、多分

At

そっか、?

そこで会話が途切れ、その場には沈黙が落ちる

普段は心地いいと感じるはずのその沈黙だが、 今日は何故だかそれが寂しいものであるように感じた

Mz

(もっと、話したい、、、)

Mz

(あるかな、何か話題、、、)

オレが話題を探してキョロキョロと辺りを見回すと、 自分の通学カバンからチラリとのぞくAtに教えてもらったラノベが目に入る

Mz

(これだ!!)

Mz

あ、あのさ、At

At

どうしたの?

オレは自身の通学カバンから 先日図書室で借りた例のラノベを取り出し、Atに見せる

彼はオレが手に持っているその本の表紙を見ると 少しだけ驚いた様子を見せて、それって、とつぶやいた

Mz

そう、Atがおすすめしてくれたやつ

Mz

この前学校の図書室で借りたんだ

At

Mzのこと、題名を聞きはしたものの
結局は読まないタイプの奴だと思ってた、、、

Mz

だって、普通にAtが見ている世界知りたいし

At

そうなの、?

Mz

うん、仲良くなりたいやつの好きなことは知りたいじゃん

Atはオレの方を見てしばらく呆然としていたが、 その後少しだけ下を向く

Mz

(どうしたんだろ、?)

彼の不思議な言動に疑問が湧くが、 彼が変わった奴であるのは今に始まった事ではないので オレは構わず続けることにした

Mz

それでさー、最初は読書とか抵抗あったんだけど、
やっぱりAtの好きなものが知りたくて読んでみたわけ

Mz

そしたらこれ想像以上に面白くてさ、
もうすぐ一巻読み終わるから近いうちに続き借りてくる予定

At

そう、なんだ

オレがその後もこのシーンが良かっただの あそこのヒロインのセリフが刺さっただのと話を繋いでいく

オレが会話を続けて行くうちに、下を向いていた彼は少しずつ顔をあげて 最終的にはオレの方を向きながら話を聞いてくれた

やがてその表情を安心したようなものに変えた彼は、 オレの瞳をじっと見つめながらこんなことをつぶやく

At

きもいって思われなくて、良かった

Mz

そんなん思うわけねーじゃん、
誰が何好きだろうと結局は本人の自由だろ

Atはオレの返答を聞いて少し嬉しそうにするが、 しばらくすると何かに驚いたように目を見開いて固まった

At

あれ、俺何で、、、

Mz

どうかした?

少し様子が変わったAtに心配になってオレがそう尋ねると、 彼はいや、と否定の言葉を放ってこういう

At

別に、何でもないよ、、、

Mz

そーなん?ならいいけど、、、

こういうときに何でもないという人間は大体何かあるものだが、 その“何か”を隠したい気持ちもわかるのでオレは下手に追及しない事にした

Mz

(詰め過ぎて嫌われるとか、絶対嫌だし)

オレはパラパラとラノベをめくりながら、 一巻の感想やら何やらをAtに話しつつ、何物にも代えがたい、 AkやPrといる時とは違う心地よさのある時間を過ごしていく

そんなこんなでAtとラノベについて話していると、 あっという間に太陽が沈む時間になった

Mz

そろそろ孤児院に戻らなきゃいけないかな

At

あれ、もうそんな時間?

Mz

そうだよ、ほら

そう言ってオレが自身のスマホの時計を見せると、 Atは本当だ、もうすぐ夜じゃんと口にする

Mz

Atは今日も残る?

At

うん、残ろうかな

Mz

わかった

オレはいつも通りAtを海岸に残して孤児院に戻ろうとしたが、 今までとは異なり少し寂しいと感じている自分に気がついて驚く

Mz

(なんでだろ、小説について話してたからかな)

Mz

(なんか最近、Atに関することだけ
自分がいつもと違うような気がするけど、、、)

Mz

(考えてもわかんないし、まあいいか)

PrーのすけがMzちを連れてきた放課後から数日が経ち、 今日は金曜日だ

Ak

(明日はMzちもきてくれるってPrーのすけも言ってたし、楽しみだなあ)

現在はちょうど昼ごはんを終えたくらいの時間で、 午前中に最近頑張っているリハビリを済ませたオレは サイドテーブルに置いてあるPrーのすけが借りてきてくれた 文庫本を手に取り、読み進めていく

普通の子は学校がある時間帯で、 Prーのすけが来るのも2、3時間くらい先の話だ

Ak

(Prーのすけ、基本毎日来てくれるんだよね)

Ak

(優しいよなあ、、、)

オレのためにわざわざ故郷を飛び出してついてきてくれた 大好きな友人の優しさに胸がくすぐったくなりながら、 オレが窓から差し込む陽光を受けながら読書するという 贅沢な時間を楽しんでいると、コンコンと病室の扉がノックされる音がした

Ak

(こんな時間に誰だろ、PrーのすけとかMzちじゃないよね)

Ak

(看護師さんかな?でも看護師さんたちは
ノックしてすぐに入ってくるはず、、、)

一瞬本を交換しているあの子かもしれないと思ったものの、 そういえばお互いの病室は知らないんだったと思い出してその説は消えた

オレが得体の知れない扉の向こう側にいる誰かに 怪訝な気持ちになっていると、今度は先ほどより乱暴に扉がノックされた

Ak

(え、なになになに!?怖、、、)

これは絶対に居留守を使ったほうがいいと判断し、 オレは息をひそめてガンガンと扉を叩く誰かに無視を決め込む

その状態が1分ほど続いた頃、聞き覚えのある声がした

クラスメイト(大阪)

いるのはわかってるんだからね、Ak!!

クラスメイト(大阪)

さっさと開けなさいよ、ほんとに鈍臭いんだから!!

Ak

!!

扉の向こうにいるのは、 あの日オレを屋上から突き落とすように男子たちに指示した 大阪の学校の同級生だった

Ak

どうしよ、

正直言って、自分に危害を加えた相手になんか会いたくない

このまま放置しておけば看護師さんたちも気づいて、 彼女を止めてくれるはずだと無視を決め込んでいたが、 はぁ、とため息をついて女の子はいった

クラスメイト(大阪)

Prくんが自分優先してくれたからって調子のんじゃねーよ、
本ばっか読んでる陰キャが

彼女は乱暴にそう吐き捨てると、ガラッと勝手に扉を開けて この病室に入ってきた

Ak

!!

Ak

入ってこないで、!

クラスメイト(大阪)

なに、私に命令するつもり?

クラスメイト(大阪)

学校でも女子のリーダーをやっていた私に?

クラスメイト(大阪)

ずいぶん偉くなったものね

Ak

っ、!

自分はなにも悪くない、そう心の中では思っていても、 かつて彼女から受けた体や言葉の痛みを思い出して何もいえなくなってしまう

クラスメイト(大阪)

ほんと、あんたのせいで私の人生めちゃくちゃなんだけど

クラスメイト(大阪)

あんたを屋上から突き落としたあいつら、
先生たちに問い詰められた時に私のこと売りやがったし

クラスメイト(大阪)

その件で私は退学処分、
親からもこっぴどく叱られて大変だったんだから

クラスメイト(大阪)

しかも親と揉めて今じゃこっちで一人暮らし、
安いアパートで女1人住んでバイトばっかの毎日だよ

クラスメイト(大阪)

あんたさえいなければ私はあのまま学校卒業して、
親とも揉めないで平和に暮らしてたはずなんだけどなあ

Ak

……。

クラスメイト(大阪)

なんであんた生きてんの?あの時死んじゃえばよかったのに

Ak

!!

彼女はオレを憎しみのこもった目線で射抜く

それは君の自業自得だ、そんな当たり前のことが心に浮かんだが、 死んでしまえばよかったと真正面から言われて かなり傷を受けたオレにはそんなこと言えるわけがなかった

クラスメイト(大阪)

あっはは、その顔サイコーw

クラスメイト(大阪)

あんたなんか一生その顔しながら人生に絶望していればいいのよ

彼女は自分の言葉で傷ついているオレを見て、 楽しそうに笑っている

クラスメイト(大阪)

てゆーか、Prくんも可哀想だよね

クラスメイト(大阪)

あんたみたいな愚図なんかと友達にならなければ、
今頃大阪でみんなにチヤホヤされながら
幸せに暮らしてたかも知れないのに

きっと昔のオレなら、その言葉を聞いてオレなんかと友達にならなければ Prーのすけはもっと幸せだったかも知れないと考えるだろう

でも、わざわざオレのために住み慣れた故郷から一緒に上京してくれた 彼の姿が教えてくれたその暖かくて強い友愛を目の当たりにして、 そんなに卑屈になるのはかえって彼に失礼だと考えるようになっていた

クラスメイト(大阪)

Prくんも、あんたなんかのために上京したの後悔してるよw

バカにするようにそう告げた彼女の姿に、オレは怒りを覚えた

その理由は、決して自分をバカにされたからではない

オレのためにここまでしてくれる優しい彼のあふれんばかりの友愛を、 侮辱されたように感じたからだ

Ak

……帰って

クラスメイト(大阪)

は?何よあんた私に向かって、、、

最初と同じようなことを言い募ろうとする相手だが、 オレの心境は最初のものとは違った

Ak

いいから帰って!!これ以上話したくない!!

今までのおとなしくて従順な姿とは打って変わったように 瞳にはっきりとした敵意を灯しながら叫んだオレに、 彼女は面食らった様子を見せる

クラスメイト(大阪)

ど、どうしたのよ急に、、、

Ak

君、そもそもオレの許可もなく入室したよね?

Ak

オレの手元にはナースコールがあって、
これを鳴らせばすぐに看護師さんが来るよ

Ak

このままオレが看護師さん達を呼べば、
病院で不審な行動をしている上に
オレに罵詈雑言を吐いている君がどうなるか、、、

Ak

わからないわけじゃ、ないでしょ?

クラスメイト(大阪)

!!

Ak

もしかしたら、今のバイトすらも失っちゃうかもね?

クラスメイト(大阪)

っ、覚えておきなさいっ!!

彼女は態度が豹変したオレに怯えた様子を見せながら足早に病室を後にし、 ずんずんと病院の外に向かって歩いて行った

数分後彼女が病院から出て行く姿を窓から確認することができ、 オレは安心しながらはぁっ、と息を吐く

Ak

Prーのすけを侮辱されたように感じたから、
すごく強気な態度を取っちゃったけど、、、

先ほど彼女がオレに放った「死んじゃえばよかった」という言葉が 何度も頭の中をリフレインして、心をジクジクと痛めつける

Ak

やっぱり、あそこまで言われると刺さるなぁ、、、

久しぶりに心に受けた言葉の刃がオレの瞳から水滴を押し出し、 オレは1人で静かに涙をこぼしていた

Ak

(心配なんかかけたくないから、
Prーのすけが来る前に泣いた跡隠しておかないと、、、)

いつも通り俺が放課後Akのお見舞いに行くと、 彼はいつも通り本を読んでいた

Pr

Ak、お見舞いきたでー?

Ak

あっ、Prーのすけ!!

俺に気がつくと彼は嬉しそうな顔をしてキラキラと笑うが、 普段はドキリと高鳴るはずのその笑顔には 今日はときめきよりも違和感を感じた

Pr

(あれ、?)

Pr

Ak、今日は何かあったん、?

Ak

俺の言葉を聞いたAkは一瞬図星をつかれたMzのような表情をするが すぐにそれを繕い、にへら、と嘘くさい笑みを浮かべる

Ak

なんでも、ないよ、?w

Pr

(嘘や、絶対なんかある)

Pr

(親友としてもAkのことが好きな1人の人間としても、
助けてあげたいけど、、、)

Pr

(俺が触れても、いいんやろーか、、、)

Ak

Prーのすけ、?

Pr

あ、悪い

結局その日はそればっかり考えてしまって、 Akの嘘くさい笑顔の理由に迫る勇気を持つことはできなかった

太陽が沈む、その前に。

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

1,016

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚