これまでの 「とある物書きの挑戦譚」
異世界に転生した小説家の志瀬花子はシゼ・ノーディンとして
城で暮らすマリアに仕えていた。
ある日、有力貴族のセオドア達と共に外出していたところ
城の方で謎に包まれた第三王子、 クロエがやってくることに…。
数分後
ガタンッ!
ルドルフ
よーっし!
ルドルフ
城にとーちゃくっと
セオドア
着いたか。
セオドア
ん?
セオドア
ルドルフ、少し城周辺の兵が増えてないか?
ルドルフ
!、ほんとだ…何かあったくせぇな、ちょっと見てくる。
セオドア
頼む。
シゼ
…。
シゼ
シゼ
セオドア様…。
セオドア
?
セオドア
(シゼ、どうしたんだろう?)
シゼ
実は、お渡ししたいものがあるんです。
ぴらっ(セオドアに手紙を出す)
シゼ
あの…
シゼ
実は、アレンとアークと一緒のいる時、お手紙を書いたんです。
セオドア
?…シゼが…僕に?
セオドア
ありがとう、すっごくうれしいよ。
シゼ
は、はい…それで
シゼ
この手紙は…その、自分がいなくなった後に読んでほしくて。
セオドア
?、今じゃダメなの?
シゼ
はい…その
セオドア
(どうしたんだろう、顔を真っ赤にして)
シゼ
素直な気持ちを書いたので、自分がいる時に読まれると恥ずかしいので。
セオドア
?…
セオドア
そうなのか…よくわかんないけど、わかった…。
シゼ
はい。
シゼ
…それでは、私はもう帰りますね。
セオドア
えっ?なんで?
シゼ
セオドア様とこうして二人でいるところを兵士さん達に見られたら、変な誤解を受けるかもしれませんし。
セオドア
!、そうか…。
ルドルフ
セオドアー!
セオドア
?、ルドルフ、なんだ?
ルドルフ
いますぐシゼちゃんと別れて!
ルドルフ
セシルのおっさんがこっちに来てる!
セオドア
!、なに?
シゼ
!
シゼ
(あの怖いおじさんが!?)
シゼ
じゃ、じゃあ…帰りますね。
セオドア
あ、ああ…ごめんね、シゼ。
シゼ
いえいえ、
シゼ
それでは、また。
たたたっ…
シゼ
…。
シゼ
…わ
シゼ
わ。
シゼ
渡しちゃったー…。
シゼ
(セオドアに…手紙)
シゼ
(『短い間ですがありがとうございました。セオドア様にいつも助けられました』)
シゼ
(『…だいすきでした。』)
シゼ
(…って!!!)
シゼ
((失恋ってわかってるけど、でも…生まれて初めて好きなこと伝えた…。))
シゼ
(こんなドキドキした気持ち、生まれて初めて…世の恋する女の子たちはこんな気持ちになってたのか。)
シゼ
どうせあの手紙は、捨てられてしまうだろうけど…でも
シゼ
自分の思いを伝えないままお別れなんて、私にはできなかった。
シゼ
(この気持ちは…綺麗なものだもん、どうせなら罪でないなら、美しく散らせてあげたい)
シゼ
(悲しいけど、これくらいならクリジア人でもしていいよね…?アレン…。)
セオドア
…シゼ。
セオドア
(シゼの心は、曇りのない宝石のようだ。)
セオドア
(そんな彼女の、素直な気持ち…とっても気になる。)
セオドア
でも、開けちゃダメって言われたしな。
セオドア
ルドルフ、これ預かっておいてくれ
ルドルフ
?、了解。
セオドア
セオドア
(さぁ、父さんを待とう)
ルドルフ
お久しぶりです。セシル様っ。
セシル
…。
セシル
おお、来ていたかセオドア。
セオドア
…お久しぶりでございます、お父様。
セシル
うむ。
きゅるん!(ルドルフが猫を被る)
セシル
おお、ルドルフ。
セシル
その様子…元気そうだな、会えて嬉しいぞ。
ルドルフ
えへへ、僕もお会いできて嬉しいです。
セシル
その服は俺が仕立てたものか、ちゃんと着ていて偉いな。
ルドルフ
当然です、セシル様は僕の恩人なのですから…。
セオドア
…。
セオドア
(父さん…相変わらずルドルフと俺とで態度が違いすぎる。)
ルドルフ
あのあのっ、セシル様。
ルドルフ
本日は…どのようなご用件ですか?
ルドルフ
この周辺の兵は一体…?
セシル
おや、まだ聞いていないのか。
セシル
セシル
つい先ほど、この城とクリジアを支配するローゼ女王が退位なされた。
ルドルフ
!
セオドア
女王が…!?
ルドルフ
それは急ですね一体なぜですか…?まだ女王は20歳、退位するには早すぎると思いますが。
セシル
理由は二つある
セシル
女王は若さゆえに政治が甘く、クリジア人への制裁がなっていないとからだ。
セシル
もう一つは大臣たちがみなクロエ王子の即位を望んだからだ。
セオドア
!、そんな…嘘だ!
セオドア
大臣たちはみな女王を信頼していたし、クロエ王子は暴君で…
セシル
うるさい。
ギロッ!(セシルがセオドアを睨む)
セシル
大臣たちはみな嘘の顔を持っている。
セシル
女王を信頼していたというのは彼らの表向きの顔というのは周知の事実。
セシル
…そんなことも知らないのか?お前は城で何年も働いているとは到底思えんな。
セシル
クロエ王子がお前を捨てたのも納得だ。
セオドア
!
セオドア
[クロエ王子が…俺を捨てる?]
セシル
ああ。
セシル
早速玉座につかれたクロエ王子がお前の処遇を言い渡してきた。
セシル
ベルへの精神的虐待と、持ち前の無能さ故に…
セシル
お前を外交補助官から外す、との仰せだ。
セオドア
!、えっ…?
ルドルフ
セオドアが…?
ルドルフ
は?待てよ待てよ。
セシル
反論は受け付けない、王の仰せのことは絶対だ。
セシル
俺もお前が有能な子供なら庇ってやることを考えたんだが。
セシル
残念ながら、お前は無能そのものだ。
セシル
おまけに
セシル
ルドルフを俺の養子にして、
セシル
セオドアの代わりにしろなんて言われたら…なんにもいえなくなってしまった。
セシル
あまりにも、その条件が魅力的すぎて…
セシル
処理に困っていたゴミ掃除に王が手を貸してくださったのだ、
セシル
これで俺の望みがみな叶った。ははは…!
ルドルフ
俺が…外交補助官?
セシル
ああ、そうさ。よかったな、ルドルフ。
セシル
お前は今日から[ルドルフ・レティオール]
セシル
俺の自慢の息子だ。
つづく