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アキラ
ベニ
アキラ
ベニ
アキラ
ベニ
アキラ
ベニと俺は最近付き合いだしたばかりだ。バスケ部のマネージャーとして入部してきたベニに俺が、ベタ惚れし、親友のトシの協力を得てベニと付き合うことができた。ベニの腰まであるストレートの髪や白い肌、170cmの俺に対して155cmと小柄で小動物的なところがたまらなくかわいい。
突然、スマホのプッシュ通知音がクラス中のあちこちから流れ始めた。
ベニ
そうなのだ、最近、この手の緊急避難警報が度々、俺らの地区で発信されている。これのお陰で、俺たちの部活が潰されることも多々ある。今日もそうなるだろうな。
アキラ
ベニ
アキラ
ベニ
ベニが教室を出ると同時に他の生徒も帰り支度を始めていた。皆、考える事は一緒だな。俺も帰り支度を終えるとスマホゲームをしながらベニを待つ事にした。外はまだ、明るいが秋風が香るようになった今、日没は早い。
高校2年の夏なんてあっという間だったなーなんて事をふと思った時だった。
生徒
生徒2
先生
その怒号、阿鼻叫喚は、あまりに突然だった。俺は、何がなんだか分からず、席をおもむろに立った。廊下では、何かから逃げるように走る生徒、俺と同じように戸惑う生徒。その中に血相を変えたトシの姿があった。
アキラ
トシ
アキラ
トシ
トシの言っている意味が頭にうまく入らなかった。トシは、俺の親友だ。嘘をつくような奴じゃないことは知ってる。不審者??大勢???
トシ
アキラ
トシ
赤い斑点模様の上に生徒が倒れていた。その上に覆いかぶさるように人がのっている。その斑点は、一つ、また一つと数を増やしていく。
アキラ
明らかに人が人を襲っていた。しかも、一人二人ではない。大勢だ。一人を三、四人で捕まえて、まるで食べているようだった。あちこちから響く悲鳴。まさにそこは、地獄絵図である。 理科室に着くとベニと他数名が固まりあって震えていた。
ベニ
アキラ
ベニ
彼女は血の気の引いた唇を震わせながら涙を流し始めた。
グランドで見えたあれが不審者??いや、あれは、まるで血肉をすするゾンビじゃないか。
トシ
アキラ
トシが中心となり机、椅子を移動させて扉、窓と塞いでいく。標本のガイコツを横目に俺たちは足早に作業を進めていく。窓の外からは止まない悲鳴が続く。酷い寒気と悪寒が空気を殺していた。
全ての作業を終えると俺はベニに寄り添い彼女の柔らかい髪を撫でた。彼女は、ただひたすらに震えていた。
彼女を守らないと…………でも、どうやって??ここで待っていたら助けが来るのか??いつまで待てばいいんだ??
そんな疑問が後から後から湧いてくる。俺たちは、助かるのか???
ベニ
アキラ
ベニ
お婆ちゃんとは、この学校の校長だ。ベニは校長の孫なのだ。
アキラ
ベニ
ベニには両親がいない。理由は、知らないが校長が、ベニの親代りなのは知っている。
俺は、さっきよりも強く彼女を抱きしめた。それで、不安が取り除かれるわけでは無いが、彼女の折れそうな心を少しでも楽にしてやりたかった。
トシ
アキラ
トシ
アキラ
トシ
アキラ
ベニ
中には、長い筒状の袋が入っていた。急いで、窓に端を投げ落とす。蛇腹状のホースが地面に向かって伸びていくそれは、30秒もたたずして避難経路となった。
斜行式避難袋の入り口である小窓を見ながら呟いた。本来であれば、避難袋の出口には安全用にマットが敷かれ、さらには、傾斜をもつようにしなければならない。
だが、今は、ただ下に垂れ下がっているのみだ。ここは、3階。下は地面とはいえ骨折してもおかしくない高さだ。
アキラ
トシ
アキラ
トシ
トシは、こういう時、いつでもそうだ。誰かが危険な状態にあると必ず自分が先陣に立つ。俺には決して真似できない。
臆病者で、卑怯な俺には決してトシには勝てない……。
トシ
アキラ
そう言うとトシは、カーテンを引きちぎり、準備室にあったハサミでロープを作っていく。他の動ける奴にも手伝ってもらいながら紐の先端を固く結び、長いロープを作っていった。
一通りロープが出来上がるとトシは、身体に紐を結わえ、紐がほどけないか各箇所を確認していく。避難袋の箱に入ってきたカナヅチと袋を固定するペグを持ち、
トシ
静かに俺は頷くとトシは、ニッと笑いロープを俺に渡した。緊張している時、笑うのがコイツのクセだ。やせ我慢しやがって………。
俺とあと数名が、紐をもちトシが降りていくのをゆっくり見送る。外は、すでに日が落ちてきていた。茜色に染まる背景が、まるでさっき見た赤い斑点模様を薄めているようだった。
避難袋の中に消えるトシ。ロープを通してあいつの命の重さを感じる。トシが降りていくたびに強くしなるロープ。
俺は…………。
しばらくするとロープが軽くなった。トシが地面に降りたのだ。
ベニ
アキラ
ベニ
血の気が引いた。全ての穴という穴から汗が吹き出ているのが分かる。すぐさま、俺は、バリケードの前に行った。
バリケードの机や椅子が、外から押されているのがはっきり分かる程に強く揺れていた。
無理だ、ここは、破かれる!
アキラ
ベニ
アキラ
生徒
アキラ
外から人のうめき声が響く。あれは、不審者じゃない。絶対、違う何かだとはっきり分かる。
ベニ
すぐに俺たちは、アルコールをテーブルと椅子にまいた。泣きながら、恐怖と戦いながらひたすらまく。
生徒
アキラ
俺は、無我夢中だった。椅子が落ち始め、通路の窓ガラスが激しい音を立てて割れた。
生徒
窓ガラスの先には地に汚れたドス黒い手が伸びていた。何かを求めるようにうごめく何本という腕。無機質な動きのそれは、ゆっくりとしかし、確実に俺たちを狙っていた。
アキラ
チャッカマンでアルコールに火をつけようとするが指先に力が入らない。
アキラ
ベニ
2本、3本、まともにマッチがすれない。
その間にも外野は待ってはくれない。8本目にしてようやく着いた。まるで、奇跡の炎だ。
慌てて椅子の端に火を灯す。
が…………
アキラ
火がつかないのである。
そう、理科室の机は薬品や火を使うために特殊な材質で作られているのである。俺はそれを知らなかった。
ベニ
その瞬間、バリケードの机が倒れてきた。その先には、制服姿の死体がうごめいていた。血の気の引いた皮膚は、白く、口元は血で染まってる。
目は青く光り、喉の奥から唸る声をあげる。ふらふらと揺れる身体、手。
何十人という動く死体がそこに立っていた。
アキラ
ベニ
俺は動けなかった。
ベニ
死体が俺の身体をつかんだ。
冷たく、そして痛い。
痛い。
痛い。
嫌だ!! 痛い!!
アキラ
ベニ
ベニが俺の身体にしがみついた。
腕に激しい痛みが走る。死体が俺に噛みついたのだ。
全身が痛い。
感覚が鈍る。
ベニ…………ごめん。
ごめんよ………。
やっぱ、俺、トシみたいにはなれんわ。
トシ、ごめん。
お前にベニを任せればよかった。
ごめん。
俺は、こうして屍になった。
第2話に続く