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アキラ

あー! 今日の授業マジでキツイ!

ベニ

アキラはいつもキツイしか言ってないじゃん

アキラ

ベニがいなかったら学校なんて来ても意味ねーし

ベニ

はいはい、知ってる!

アキラ

ベニは今日もかわいいなー

ベニ

別に、口に出さなくていいから!

アキラ

いや、本当のことだから

ベニと俺は最近付き合いだしたばかりだ。バスケ部のマネージャーとして入部してきたベニに俺が、ベタ惚れし、親友のトシの協力を得てベニと付き合うことができた。ベニの腰まであるストレートの髪や白い肌、170cmの俺に対して155cmと小柄で小動物的なところがたまらなくかわいい。

突然、スマホのプッシュ通知音がクラス中のあちこちから流れ始めた。

ベニ

やだ、また?

そうなのだ、最近、この手の緊急避難警報が度々、俺らの地区で発信されている。これのお陰で、俺たちの部活が潰されることも多々ある。今日もそうなるだろうな。

アキラ

いい加減に犯人捕まえろよって話じゃん。何してんだよ警察。

ベニ

でも、不審死の話、もうこれで何人目??

アキラ

とりあえず、もう、帰ろうぜ。今日の授業も終わったし、このせいで部活も無しだ。

ベニ

うん、そうだね。私、先生のところ行って確認してくる。

ベニが教室を出ると同時に他の生徒も帰り支度を始めていた。皆、考える事は一緒だな。俺も帰り支度を終えるとスマホゲームをしながらベニを待つ事にした。外はまだ、明るいが秋風が香るようになった今、日没は早い。

高校2年の夏なんてあっという間だったなーなんて事をふと思った時だった。

生徒

キャーーー!!!!!

生徒2

何?! ちょっ!!

先生

生徒は、部屋に戻れ!!! 早く!!!

その怒号、阿鼻叫喚は、あまりに突然だった。俺は、何がなんだか分からず、席をおもむろに立った。廊下では、何かから逃げるように走る生徒、俺と同じように戸惑う生徒。その中に血相を変えたトシの姿があった。

アキラ

トシ!

トシ

アキラ! 不審者だ!!!

アキラ

はっ???

トシ

しかも、一人じゃない!大勢だ!!今、先生が防火壁を塞いでる!!お前も逃げろ!!

トシの言っている意味が頭にうまく入らなかった。トシは、俺の親友だ。嘘をつくような奴じゃないことは知ってる。不審者??大勢???

トシ

B棟ならまだ、行ってないはずだ!理科室へ逃げ込もう!!

アキラ

いやっ、まだ、ベニが…………

トシ

ベニはもう、理科室へ行った!!早くお前も来い!!

赤い斑点模様の上に生徒が倒れていた。その上に覆いかぶさるように人がのっている。その斑点は、一つ、また一つと数を増やしていく。

アキラ

何だよあれ…………

明らかに人が人を襲っていた。しかも、一人二人ではない。大勢だ。一人を三、四人で捕まえて、まるで食べているようだった。あちこちから響く悲鳴。まさにそこは、地獄絵図である。 理科室に着くとベニと他数名が固まりあって震えていた。

ベニ

アキラ!!!

アキラ

ベニ!!良かった!! 何があったんだ?!

ベニ

分からないの! 気づいたら不審者が、いて、みんな、突然………

彼女は血の気の引いた唇を震わせながら涙を流し始めた。

グランドで見えたあれが不審者??いや、あれは、まるで血肉をすするゾンビじゃないか。

トシ

とにかく、バリケードをはるぞ!!

アキラ

おっ、おう!

トシが中心となり机、椅子を移動させて扉、窓と塞いでいく。標本のガイコツを横目に俺たちは足早に作業を進めていく。窓の外からは止まない悲鳴が続く。酷い寒気と悪寒が空気を殺していた。

全ての作業を終えると俺はベニに寄り添い彼女の柔らかい髪を撫でた。彼女は、ただひたすらに震えていた。

彼女を守らないと…………でも、どうやって??ここで待っていたら助けが来るのか??いつまで待てばいいんだ??

そんな疑問が後から後から湧いてくる。俺たちは、助かるのか???

ベニ

お婆ちゃん…………

アキラ

えっ?

ベニ

どうしよう、お婆ちゃん置いてきちゃった…………

お婆ちゃんとは、この学校の校長だ。ベニは校長の孫なのだ。

アキラ

きっと………大丈夫さ

ベニ

お婆ちゃん…………

ベニには両親がいない。理由は、知らないが校長が、ベニの親代りなのは知っている。

俺は、さっきよりも強く彼女を抱きしめた。それで、不安が取り除かれるわけでは無いが、彼女の折れそうな心を少しでも楽にしてやりたかった。

トシ

アキラ! こっち来てくれ!

アキラ

どうした?

トシ

避難袋があった。これで外に出よう

アキラ

外に?

トシ

グランドはダメだが、ここなら校舎裏だ。見た感じ、奴らの姿は見えない。蓋が硬くて開かないんだ、手伝ってくれ!

アキラ

…………分かった。ベニ、ここで待ってろ。

ベニ

………うん。

中には、長い筒状の袋が入っていた。急いで、窓に端を投げ落とす。蛇腹状のホースが地面に向かって伸びていくそれは、30秒もたたずして避難経路となった。

斜行式避難袋の入り口である小窓を見ながら呟いた。本来であれば、避難袋の出口には安全用にマットが敷かれ、さらには、傾斜をもつようにしなければならない。

だが、今は、ただ下に垂れ下がっているのみだ。ここは、3階。下は地面とはいえ骨折してもおかしくない高さだ。

アキラ

無理だろ………。

トシ

…………俺が先に下に降りて傾斜を作ってくる。

アキラ

はぁっ?!! 正気かよ?!!

トシ

今は一二を争う時だ!!

トシは、こういう時、いつでもそうだ。誰かが危険な状態にあると必ず自分が先陣に立つ。俺には決して真似できない。

臆病者で、卑怯な俺には決してトシには勝てない……。

トシ

おい、カーテンをロープにするから切るのを手伝ってくれ。理科室のカーテンは、光を遮るために斜行式になってるし、防火用にもなってるから丈夫で安全なはずだ。

アキラ

分かった。

そう言うとトシは、カーテンを引きちぎり、準備室にあったハサミでロープを作っていく。他の動ける奴にも手伝ってもらいながら紐の先端を固く結び、長いロープを作っていった。

一通りロープが出来上がるとトシは、身体に紐を結わえ、紐がほどけないか各箇所を確認していく。避難袋の箱に入ってきたカナヅチと袋を固定するペグを持ち、

トシ

じゃぁ、行ってくる。 2回ずつ紐を引いたら危険な合図。3回だったら避難完了の合図だ。しっかり持っててくれ。

静かに俺は頷くとトシは、ニッと笑いロープを俺に渡した。緊張している時、笑うのがコイツのクセだ。やせ我慢しやがって………。

俺とあと数名が、紐をもちトシが降りていくのをゆっくり見送る。外は、すでに日が落ちてきていた。茜色に染まる背景が、まるでさっき見た赤い斑点模様を薄めているようだった。

避難袋の中に消えるトシ。ロープを通してあいつの命の重さを感じる。トシが降りていくたびに強くしなるロープ。

俺は…………。

しばらくするとロープが軽くなった。トシが地面に降りたのだ。

ベニ

アキラ!!!

アキラ

どうした?!!

ベニ

あいつらが、来た!!!

血の気が引いた。全ての穴という穴から汗が吹き出ているのが分かる。すぐさま、俺は、バリケードの前に行った。

バリケードの机や椅子が、外から押されているのがはっきり分かる程に強く揺れていた。

無理だ、ここは、破かれる!

アキラ

アルコール持ってこい!!

ベニ

えっ?!

アキラ

ここは、無理だ!! アルコールランプとアルコール持ってきて、燃やそう!!

生徒

何言ってるんだよ!! 死ぬ気か?!!

アキラ

今、トシが避難袋の設置してる! 火が回る前に降りれば問題ない!!防火用のカーテンもまだ、あるだろう!準備室のドアにかぶせて火の回りを遅くするんだ!

外から人のうめき声が響く。あれは、不審者じゃない。絶対、違う何かだとはっきり分かる。

ベニ

あっ、アルコールあった!!

すぐに俺たちは、アルコールをテーブルと椅子にまいた。泣きながら、恐怖と戦いながらひたすらまく。

生徒

アキラ! トシから避難完了の合図がきた!!

アキラ

分かった!! 女子から先に降りろ!! 俺は火をつける!!

俺は、無我夢中だった。椅子が落ち始め、通路の窓ガラスが激しい音を立てて割れた。

生徒

きゃーーー!!!!

窓ガラスの先には地に汚れたドス黒い手が伸びていた。何かを求めるようにうごめく何本という腕。無機質な動きのそれは、ゆっくりとしかし、確実に俺たちを狙っていた。

アキラ

早く降りろ!!!

チャッカマンでアルコールに火をつけようとするが指先に力が入らない。

アキラ

くそっ、チャッカマンじゃダメだ!!

ベニ

マッチ、あった!!

2本、3本、まともにマッチがすれない。

その間にも外野は待ってはくれない。8本目にしてようやく着いた。まるで、奇跡の炎だ。

慌てて椅子の端に火を灯す。

が…………

アキラ

嘘だろ…………

火がつかないのである。

そう、理科室の机は薬品や火を使うために特殊な材質で作られているのである。俺はそれを知らなかった。

ベニ

アキラ!! 逃げよ!!

その瞬間、バリケードの机が倒れてきた。その先には、制服姿の死体がうごめいていた。血の気の引いた皮膚は、白く、口元は血で染まってる。

目は青く光り、喉の奥から唸る声をあげる。ふらふらと揺れる身体、手。

何十人という動く死体がそこに立っていた。

アキラ

わぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

ベニ

アキラ!!!!!

俺は動けなかった。

ベニ

アキラ!!!!!

死体が俺の身体をつかんだ。

冷たく、そして痛い。

痛い。

痛い。

嫌だ!! 痛い!!

アキラ

嫌だ!嫌だ!嫌だ! 離せよ!離せよ!!!

ベニ

アキラ!!!!

ベニが俺の身体にしがみついた。

腕に激しい痛みが走る。死体が俺に噛みついたのだ。

全身が痛い。

感覚が鈍る。

ベニ…………ごめん。

ごめんよ………。

やっぱ、俺、トシみたいにはなれんわ。

トシ、ごめん。

お前にベニを任せればよかった。

ごめん。

俺は、こうして屍になった。

第2話に続く

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