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赤 side
こさめと出会ってからの日々は俺にとって
雨に打たれているようなものだった
雨に打たれるって言っても、冷たくはない
例えるなら、暖かくて優しい慈雨
ずっとそのまま振り続けて欲しいと
そう、願ってしまうような心地の良い雨だった
暗くて黒い恐怖心
深い所まで沈んで、戻れなくなった俺に
あいつは光を刺したんだ
ナツ
今の依頼を受けるとき
俺の意見を聞こうとこちらを向いたいるまにそう返した
淡々と言ったものの
心の奥底では…迷いもあったと思う
いるまには拾ってもらって
住む所も仕事もくれた恩があるから、いいんだけど
……俺はあまり上の身分の奴と関わりたくない
親しくなりたくない
好きになりたくない
〝兄〟みたいになるのが怖かったから
トラウマがあるとはいえ、自分が避ければ良い話
自分が仕える姫と親しくならなければ、特別な感情を持つことはあり得ないのだから
俺はそんな単純な考えで
今回もいるまの受けた依頼についていくことにした
まぁ…実際は、そうはいかなかったんだけど
コサメ
コサメ
コサメ
まさか、実際に仕えることになった姫が
俺と仲良くなりたかったのにって
怒って泣きじゃくるとは思わないじゃん?w
完全に予想外
姫であるのにこさめは
無邪気で子供っぽくて甘えん坊で
俺の中の〝姫〟という身分の前提を崩してきたから
あいつを見てると、身分差なんて忘れられた
ナツ
いつの日か
そう思い始めたときには既に…
俺は、慈雨に打たれていたのかもしれない
本当はやめるべきだった
突き放すべきだった
だけどあれから俺は
こさめという女の子のことを、深く知ってしまった
コサメ
コサメ
コサメ
コサメ
コサメ
コサメ
知れば知るほど
俺は……
自分の想いに気づき始めてはいた
けど、見ないふりをしていた
そんなときに
忘れかけていた感情は甦らされる
イルマ
イルマ
いるまが、自分より身分の高い奴を
らんを…好きになったと言ったから
怖く、なった
わかっている
昔とは違う
今のシクスフォニアなら、その程度で罰せられることはない
けど…
お前も…兄さんみたいになるんじゃないかって
相棒の心配をする一方で、より俺に恐怖心を与えたのは
こさめのことが頭から離れなくなっていた自分自身だ
ナツ
息を吸って、吐いて
何とか呼吸を落ち着かせると
俺はペンを握った
なんて書いたらいい…?
美味しかった?
心配するな?
優しさなんて…残していいのだろうか
例え、傷つけてしまうとしても
中途半端に優しくするのは
より深く、傷つけてしまうことになるんじゃないか
ナツ
〝もう俺に構うな〟
書く手は震えていた
俺はその文字が書かれた紙をお粥の入っていた器に添え
籠に戻してから、部屋の外に置いた
ナツ
これで…いいんだ
きっとこうすれば
あいつは最低な俺のことなんか忘れてくれるから
忘れて…しまうだろうから、
ナツ