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17件
ぶくしつ!
ブクマ&マイリスト失礼します!!🙇🏻♀️
設定とか表現の仕方とかストーリーの展開とかもう全部好きです…。フォロー失礼します
とても
綺麗な人だった
命が尽きるまで
強く
美しく
生きた人だった
𝑁.
𝑁.
体に異変が起きて
検査をしたところ
ステージ4の癌が見つかり
余命1ヶ月と宣告された母さん
母さんは泣くことはなかった
母さん
そう聞かれて言葉が詰まった
母さん
母さんは紫色の布を縫いながら
笑っていた
母さん
二人しかいない病室に
母さんの声は
いやに響く
母さん
母さん
母さんの左手に繋がれた
点滴の中身は
ゆっくりと落ちていく
母さん
母さん
母さん
𝑁.
母さん
母さん
𝑁.
二人の声を遮るように
母さんの手から
鈴の音がした
母さん
母さん
母さん
母さん
母さん
母さん
母さんが謝る時は
決まって
俺たちのことだった
𝑁.
当の本人が笑っているのに
俺が笑えなかったら
どうにもできないから
精一杯笑った
𝑁.
必死に
溢れ出す感情を抑え込んだ
𝑁.
𝑁.
母さん
𝑁.
座っていた椅子から立ち上がって
母さんに背中を向ける
まだダメ
まだ泣いちゃダメ
溢れそうになるものを
必死に抑えつける
母さん
母さん
静かで
凛とした声
母さん
母さん
母さん
ああ
母さんには敵わない
見透かされた心が
スースーする
母さん
後ろも向かず
相槌も打たず
病室の扉を開けて
しっかりと閉まるのを確認してから
崩れ落ちた
脳裏に鈴の音が聞こえて
その音は消えなかった
自然に
驚くこともなく
夢から覚める
頬についた
まだ温かいものを
手で拭う
𝑁.
昨日は仕事をしたまま
机に突っ伏して寝てしまったようだ
肩が少しだけ痛い
さっき拭った手も
いつの間にか乾いている
𝑁.
昨日さとみくんと買いに行った
すっかり常温になってしまった
レモンティーの蓋を開けて
少しだけ口に入れる
少しの甘さと
酸っぱさと
後を引く苦さが
口に広がる
目覚ましにはちょうどいいかもな
背中を伸ばすと
肩にかかっていたものが
ずるり、と落ちる
𝑁.
俺のベッドに置いてあるはずの ブランケットが肩にかかっていた
ふと、手の隣を見ると
ノートの切れ端のようなメモに
幼い頃から人よりも字を たくさん書いているからか
歳の割には綺麗な
俺が1番見慣れた字で
″ お疲れ様 ″
と書かれていた
ブランケットは彼の仕業だろう
素敵なプレゼントがあったおかげで
少し、明るい気持ちになれた
机に置きっぱなしの
検査についての書類を読み返してから
椅子から立ち上がって
リビングへと降りる
𝑆.
𝐶.
𝑁.
𝑁.
朝からゲームをしているのは 触れないでおこう
𝑁.
𝑆.
𝑆.
ちょっと悔しそうな顔で
キッチンの方を見る
𝑁.
𝑁.
𝑅.
莉犬くんは
寝坊することがない
寝坊した日は大体、体調が 悪い日と決まっている
𝑁.
𝑅.
丁寧に返答しながらも
目線は手元から離さず
スピードを変えずに料理をしている
最初の頃に比べたら
かなり慣れていて
手際もよくなっている
𝑁.
𝑅.
𝑅.
𝑁.
時々莉犬くんは
俺よりもお兄ちゃん みたいなことを言う
𝑅.
𝑅.
𝑁.
𝑁.
𝑁.
𝑁.
なんの言い訳にもならない言葉を
空中に書くように並べる
𝑅.
𝑅.
𝑁.
𝑅.
𝑅.
𝑁.
𝑅.
𝑅.
𝑁.
若干落ち込みながら
冷蔵庫からお茶を取り出すと
𝐽.
眠そうなジェルくんが入ってきた
𝑅.
𝑁.
𝐽.
𝑁.
𝑁.
𝐽.
𝐽.
𝑁.
𝐽.
𝐽.
𝑁.
𝑁.
𝐽.
𝐽.
𝑁.
𝐽.
𝑁.
しょぼんの顔文字を
顔で表現しながら
手をさする
𝑁.
𝐽.
𝑁.
𝑁.
𝐽.
𝐽.
𝐽.
𝐽.
𝑁.
𝐽.
𝐽.
𝑅.
ケラケラ笑っている次男と
土下座しそうな勢いの五男
𝑁.
俺も人のこと言えないけど...()
𝐽.
莉犬くんの笑い声を バッグミュージックに
しょんぼりとするジェルくん
𝑁.
𝑁.
そう言いながら
頭を撫でると
途端に目をキラキラさせる
𝐽.
手に頬を擦り付けてくる動作が
めっちゃ可愛い
しばらくしたら
満足したのか
小さな手で
俺の手をいじり始めた
漫画だったら、ふにふに、という 効果音がつきそうな
ちょっとマッサージに近い
いじり方
𝐽.
𝑁.
𝑁.
𝐽.
ちょっと寂しそうな顔をする弟が
とんでもなく愛おしい
𝑁.
𝐽.
𝑅.
𝐽.
ふんす、と
むくれたような
喜ぶような
そんな表情をして
リビングの方へと走っていった
𝑁.
𝑅.
𝑁.
𝑅.
𝑁.
𝑁.
𝑅.
𝑅.
𝑁.
𝑅.
すこしむすっとしながら
お皿に料理を並べている
𝑁.
𝑅.
𝑁.
𝐶.
𝐽.
𝑆.
𝐶.
𝑆.
𝐶.
𝐶.
ゲーム機を放り出して
逃げ回るころちゃんを
さとみくんが追いかけ回している
𝐽.
𝑁.
𝑁.
𝑁.
𝐽.
𝐽.
むふむふいいながら
席につくジェルくんを眺めて
るぅとくんたちの部屋に向かう
𝑁.
ベッドで気持ちよさそうに寝てる弟に
声をかける
𝑁.
とても眠そうに
片目を擦りながら
目を開けてくれる
𝑅.
むくり、と起き上がる
𝑁.
扉の方に体を向けて
部屋から出ようとしたら
𝑁.
服を掴まれた
𝑁.
振り返って
るぅとくんの方を見ても
るぅとくんは俯いたまま
𝑁.
ベッドに近寄って
頭を撫でながら話しかけても
俯いたまま
俺の服を掴んでいる
𝑅.
𝑅.
口ごもりながら
視線を泳がせる
𝑁.
𝑁.
𝑅.
少し悩んでから
決心したかのように
顔をあげる
圧にならないように
るぅとくんの横に座る
𝑅.
𝑅.
瞬間
地面が揺れた
咄嗟に
弟を抱きしめる
𝑅.
𝑁.
予震はまだ続いている
かなりの強さの地震が来る
下の4人は大丈夫だろうか
るぅちゃんを押し倒すような形で
ベッドに寝転ぶ
𝑁.
𝑅.
𝑁.
ジェルくんの机の上のペンが はねている
莉犬くんとさとみくんが
気づいたみたいで
リビングから大声が聞こえてくる
と
急に家が揺れ出す
″ 地震です ″
身震いをするような効果音と共に
耳に入ってくる音
″ 最大震度 5弱 ″
震度5弱
かなりの揺れだ
幸い
家が壊れる音は聞こえてこない
必死に弟から離れないように
強く抱きしめる
弟たちの机から
物が落ち始める
𝑅.
体が震えているのが
伝わってくる
𝑁.
弟に言い聞かせる
𝑁.
𝑅.
弟の手が
俺の背中にまわるのを感じて
弟の背中をさする
𝑁.
しばらくすると
揺れが収まってきて
震えたままの弟を
抱えて
リビングへ降りる
リビングでは
机の下に
莉犬くんがジェルくんを
さとみくんがころちゃんを
抱きしめた状態で
隠れていた
𝑁.
𝑆.
𝑅.
𝑅.
𝐽.
左腕の一部に
赤いそれがついている
𝑁.
𝐽.
𝐽.
𝐽.
𝑁.
𝑁.
𝑆.
𝐶.
𝑆.
𝑅.
𝐽.
𝑁.
𝑁.
𝑁.
𝑁.
𝑅.
𝑁.
𝑅.
抱えていたるぅとくんを
そのまま莉犬くんに渡す
𝑁.
𝐽.
傷は浅くて
3日ほどで治るだろう
𝑁.
消毒液が着いたコットンを 彼の手に当てる
𝐽.
少し痛そうに目を瞑る
包帯を腕に巻き付けてあげながら
彼の頭を撫でる
𝑁.
彼の口角が緩むのを見ながら
包帯を結ぶ
𝑁.
𝐽.
4人は1度上に行ったらしく
割れたお皿をゴム手袋で袋に集めて
掃除を始める
𝐽.
𝑁.
𝐽.
階段を駆け上がっていくのを 見送りながら
箒でお皿の破片を集める
さっき、るぅとくんは
なにを言おうとしてたんだろう
僕のお母さん、と 言いかけていた気がする
𝑁.
朝ごはんは食べ終わっていたらしく
床に散乱しているのは
割れたお皿やコップだけだった
昔、母さんが地震対策と言って
家具は固定していたので
倒れている家具はなかった
𝑅.
𝑅.
𝑁.
𝑁.
𝑁.
𝑅.
ぱたぱたと
キッチンに走っていく莉犬くん
𝑅.
𝑅.
𝑁.
𝑅.
𝑁.
𝑅.
𝑁.
𝑅.
𝑁.
𝑅.
𝑁.
𝑆.
𝑅.
𝐶.
𝑁.
𝑆.
𝐶.
𝑆.
𝐶.
𝑆.
𝑆.
𝑅.
𝑆.
𝑆.
𝐶.
𝐶.
𝑅.
𝑅.
𝑅.
𝑁.
幸い
部屋はあまり荒れていなかった
机に乗った書類を
カバンに入れて
必要なものを放り込んでいく
ふと、
手に紫色の御守りが当たった
同時に
ちりん、と
神々しい音がする
この鈴の音は
あの病室で何度も聞いた
𝑁.
触れていないのに
頭の中で
鈴の音が響いた気がした
𝑡𝑜 𝑏𝑒 𝑐𝑜𝑛𝑡𝑖𝑛𝑢𝑒𝑑...