嘘つきの街
### 『十三時の鐘が鳴る町』
この町には、奇妙な噂がある。
――夜十時になると、町の誰かがひとつだけ嘘をつく。
そして、その嘘を見破った者は、翌朝には町から消えてしまう。
高校二年生の少女・美桜は、そんな噂をくだらないものだと思っていた。
しかし、ある夜十時。
いつも十回で終わるはずの時計塔の鐘が、十三回鳴った。
その直後から、町の様子がおかしくなり始める。
思い出せない誕生日。
消えていく家族の写真。
名前を失っていく人々。
そして美桜の前に現れたのは、十年前に死んだはずの少年・雨宮蓮だった。
「俺たちは、昔会ってる」
蓮の言葉をきっかけに、美桜の中で少しずつ蘇っていく十年前の記憶。
そこには、彼女自身が忘れていた秘密と、二人が交わした約束が隠されていた。
やがて美桜は知ることになる。
この町では、人々の「記憶」が何者かによって管理されていること。
そして、蓮が死んだ本当の理由。
すべてを思い出せば、町は壊れる。
すべてを忘れれば、蓮は消える。
それでも美桜は、もう一度彼を忘れることを拒む。
「約束した相手を、今さら忘れられるわけないじゃん」
記憶を取り戻すほど、明らかになっていく過去。
十三時を指す時計。
町に隠された嘘。
そして、十年前の約束。
果たして美桜は、失われた記憶をすべて取り戻し、蓮を救うことができるのか――。
これは、忘れることを選ばなかった少女と、忘れられた少年の、最後の約束の物語。