その日、クジラが頭上を泳いだ。
私
私
私
ぼんやりそんなことを考えながら見上げていた。
初めて目にするクジラは大きくて
まるで世界の王様に見える。
そんな王様に挨拶するように
私は小さく口を開けた。
だけど世界は静かだった。
私の口からも、言葉がでない。
王様が優雅すぎるのか
それとも世界が幻想的すぎるのか
きっと誰もが言葉なく
この雄大な世界を見上げていた。
そんなときふわりと泳ぐクジラが
私を見下ろした気がした。
私
その目は私を、私たちを哀れんでいた。
小さな国土が大きく揺らいで
崩れた大地と、崩れた街。
今は瓦礫とともに、音もなく
沈んでいくしかない私たち。
いや、音はあった。
ゴボリと音を立てて、最期の空気が逃げていく。
助けなんて来はしない。
私
遠のく視界で、そう唱える。
あの日読んだクジラ雲のように
王様は私たちの魂を乗せてくれるだろうか。






