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久しぶりに降りた駅は、
少しだけ知らない場所みたいだった。
改札も
コンビニも
全部少しずつ変わっているのに___
胸の奥に残っている感覚だけは、
あの頃のままだった。
夏宮 茉菜 ナツミヤ マナ
小さく呟いて、
夏宮茉菜は歩き出す。
向かう先は、決まっていた。
_____あの公園
住宅街を抜けて、見えてきた錆びた遊具。
ペンキが剥げたブランコも、 少し傾いた滑り台も。
夏宮 茉菜 ナツミヤ マナ
ほっとしたように、でも少し苦しくなる。
ゆっくりとブランコに座る。
足で地面を軽く蹴ると、
ギィ、と小さな音が鳴った。
その音を聞いた瞬間、思い出す。
あの日のこと。
___引っ越しが決まった日。
本当は、ちゃんと会って伝えたかった。
"またね"じゃなくて、
"ありがとう"も"さよなら"も。
でも結局_____
夏宮 茉菜 ナツミヤ マナ
会いに行く勇気がなくて。
どうせすぐまた会えるって、
どこかで甘えて。
気づいたら、何も言えないまま 離れていった。
ポケットの中に手を入れる。
指先に触れる
小さなキーホルダー。
昔もらったもの。
ずっと捨てれなかった。
夏宮 茉菜 ナツミヤ マナ
小さく笑って、目を伏せる。
その時だった。
背後から、声。
息が止まる。
ゆっくり、振り返る。
そこにいたのは_____
夏宮 茉菜 ナツミヤ マナ
黒﨑 湊 クロサキ ミナト
黒﨑湊。
少し背が伸びて、
声も低くなって、
あの時より大人っぽくなっていたけど、
間違えるはずがなかった。
黒﨑 湊 クロサキ ミナト
軽く言うその声に、胸が締め付けられる。
責めるでもなく、
でも_____
確かにそこにある時間の重さ。
夏宮 茉菜 ナツミヤ マナ
やっと出た言葉は、それだけだった。
喉の奥に、もっとたくさん詰まっているのに。
会いたかったことも。
忘れたことなんて一度もなかったことも。
全部、言えない。
湊が少しだけ目を細めて、こっちを見る。
黒﨑 湊 クロサキ ミナト
試すみたいな声。
心臓が、うるさく鳴る。
逃げたくなる。
あの頃みたいに。
でも_____
夏宮 茉菜 ナツミヤ マナ
ぎゅっとキーホルダーを握りしめる。
一歩、息を吸って。
夏宮 茉菜 ナツミヤ マナ
それを選んだ。
一瞬、湊の表情が止まる。
驚いたみたいに目を見開いて、
すぐに、少しだけ力が抜けたみたいに 笑った。
黒﨑 湊 クロサキ ミナト
短い言葉。
それだけで、充分だった。
風が吹いて、ブランコが揺れる。
あの頃より、少しだけぎこちない距離。
でも_____
確かに、繋がってる距離。
湊がポケットに手を入れて、 何かを取り出す。
黒﨑 湊 クロサキ ミナト
差し出されたのは、
色違いのキーホルダー。
思わず自分のを握りしめる。
夏宮 茉菜 ナツミヤ マナ
黒﨑 湊 クロサキ ミナト
それだけ言って、少しだけ目を逸らす。
照れたみたいに。
ああ、変わってないな、って思った。
夏宮 茉菜 ナツミヤ マナ
黒﨑 湊 クロサキ ミナト
夏宮 茉菜 ナツミヤ マナ
今度は、逃げない。
ちゃんと向き合う。
そういう意味を込めて。
湊は一瞬黙ってから、
黒﨑 湊 クロサキ ミナト
そう言って、少しだけ笑った。
その笑い方が、昔と同じで、
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
ブランコが、ゆっくり揺れる。
今度は、一人じゃなくて、
少しだけ近い距離で。
夏の風が、二人の間を通り抜けていった。
コメント
1件
わ~.ᐟ.ᐟひなさんの小説久しぶり✨話の構成も題名も神ですっ.ᐟ.ᐟ🥹💕