テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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カワノベさん

第3話 - 第3話死霊

2025年03月08日

#一次創作

#ホラー

#バトル

#幽霊

宵月シノ

川野辺喜雨

ふう。……おはよう、萩。

太賀萩

おう、おはよ。

川野辺喜雨

……今日の昼休み、屋上行かない？

太賀萩

屋上か……。

太賀萩

分かった。昼休み、行くぞ。

川野辺喜雨

ありがとう。

川野辺喜雨

それじゃ、昼休みに屋上で。

昼休み

川野辺喜雨

本当に居るんだよね？全く姿見えないんだけど……。

太賀萩

呼んでみりゃ分かるだろ。
他の奴は居ないだろうし。

川野辺喜雨

ま、元々立ち入り禁止だからね。

太賀萩

だからな。

太賀萩

カワノベー！！！

太賀萩

出てこーい！！！

萩がそう叫ぶと、灰色のカーディガンを着た青年がすっと空中から姿を現した。

『カワノベさん』

本当に来てくれたんだね〜。

『カワノベさん』

今はお昼かな？みんな自由にしてるし。

『カワノベさん』

ま、僕は寝てたからよく分からないんだけど。

川野辺喜雨

守護霊に睡眠とかあるの？

『カワノベさん』

あはは、でも今日はそんなことが気になって来たわけじゃないんでしょ？

『カワノベさん』

どうしたの？

川野辺喜雨

うーん……まあまずは君についてかな。

川野辺喜雨

君のことについてよく知らないから。

『カワノベさん』

ん〜……。

『カワノベさん』

どうしようかな。

太賀萩

何かやましいことでもあるのか？

『カワノベさん』

うーん……。
あると言えばあるし無いと言えば無い……。

川野辺喜雨

随分曖昧な返事だね。

川野辺喜雨

君は俺達のことを知ってるのに、俺達は君のことを知らないなんてフェアじゃないでしょ？

喜雨がそう言うと、カワノベは首を捻りながらぶつぶつと呟いているようだった。

太賀萩

なんだよ。本当に何かあるのか？

『カワノベさん』

うーん……でも……。

『カワノベさん』

いや、そうだなぁ……。

『カワノベさん』

……まあいいよ。
ただ、条件があるけどね。

川野辺喜雨

条件？その条件は何？

『カワノベさん』

学校の死霊を1人残らず祓ってほしいんだ。
きっとキミ達になら出来るよ。

『カワノベさん』

……それに、死霊を祓えるのはキミ達だけじゃないみたいだからね。

川野辺喜雨

どういうこと？

『カワノベさん』

まあまあ。そのうち分かるよ。

『カワノベさん』

ほら、早く食べないと昼休み終わっちゃうんじゃないかな？

太賀萩

それもそうだな。

太賀萩

今日の放課後もここに来る。
またその時に何か教えてくれないか？

川野辺喜雨

え、放課後？

萩が放課後にまた来ると言った瞬間、喜雨は少し不満気な顔をした。

川野辺喜雨

今日の放課後はちょっと……。

太賀萩

どうしてだよ？

太賀萩

なにか外せない用事でもあるのか？

川野辺喜雨

あ、いや。
帰ってゲームしたいだけだけど。

川野辺喜雨

分かった、今日の放課後は空けとくから。

太賀萩

空けとくも何もお前はゲームしたいだけなんだろ？

川野辺喜雨

まあね。

川野辺喜雨

それじゃ、放課後にまた来るから。

『カワノベさん』

うんうん！歓迎するよ。
話し相手ができて嬉しいなぁ。

そう言うと、喜雨はぱっと立ち上がって屋上の扉に手をかける。すると、カワノベが何かを思い出したかのように声を上げた。

『カワノベさん』

……キミ達、結局お昼は？

太賀萩

……あ。

『カワノベさん』

……ああ、やっと来たね。

『カワノベさん』

それじゃあ、この学校に居る死霊について僕が知っていることを話そうか。

太賀萩

ああ。頼むぞ。

放課後、喜雨と萩が屋上に到着すると同時に、カワノベが当然かのように空中から現れた。

カワノベの正体を知っている2人は、当然ツッコまずに話を進めた。

『カワノベさん』

この学校に居る死霊限定じゃないけど、死霊はそれぞれ縄張りを持っているんだ。

『カワノベさん』

それは昨日も話したよね？

『カワノベさん』

その死霊の縄張りは、基本的に死霊と目を合わせることによって侵入できるよ。

『カワノベさん』

死霊の縄張りに入ると、行動範囲が一時的に死霊の縄張り内だけになるんだ。

『カワノベさん』

死霊の縄張りから出る為には死霊を倒すしかないね。

『カワノベさん』

死霊の縄張りは現実世界とは少し違う場所で、縄張り内で壁に文字を書いてもそれは現実世界には共有されない。

『カワノベさん』

でも、朝になると一時的に縄張りじゃなくて現実世界に戻される。

『カワノベさん』

まあ、それでも縄張りから出ることは出来ないから、縄張りから出るには死霊を倒すしかないね。

『カワノベさん』

……さて、改めて説明するとこんな感じだよ。

川野辺喜雨

なるほど……。

川野辺喜雨

まあ何となくは分かったよ。

川野辺喜雨

つまり、結局は危険だから俺達に死霊を倒してほしいってことなんだよね？

『カワノベさん』

そう。

『カワノベさん』

キミ達の能力は属性能力といった基礎的な能力だよ。でもその分強いんだ。

『カワノベさん』

そうそう、言い忘れてた。
属性能力は炎、水、氷、風、土、雷だよ。

『カワノベさん』

死霊ごとに弱点の属性があるから、
覚えておいた方がいいかもね。

喜雨はカワノベから聞いたことをメモしていた。意外と死霊退治に対するやる気はあるようだ。

太賀萩

そういえば……俺達以外にも死霊を祓える奴がこの学校に居るとか言ってなかったか？

『カワノベさん』

ああ、彼らのことだね。
確かに彼らも強力な能力持ちだよ。

『カワノベさん』

……うん、そうだね。
まずは4人かな。

川野辺喜雨

4人……。

『カワノベさん』

ちなみに、その内の3人はキミ達とは別学年だから頑張って探してね。

川野辺喜雨

別学年……。

太賀萩

おっしゃ、じゃあ明日から頑張って探すか！

太賀萩

……つっても通りすがりの奴に能力持ちか聞く訳にもいかないしなぁ。

『カワノベさん』

まあ、何となくで探していくしかないね。

『カワノベさん』

キミ達なら何とかなるよ。

川野辺喜雨

はあ、当てずっぽうになるのか……。

『カワノベさん』

まあまあ。

『カワノベさん』

少しずつ仲間を増やして強くなっていってるみたいでいいと思うよ♪

太賀萩

お前は待ってるだけだから楽だろ。
俺達多分大変だぞ？

太賀萩

能力を持ってる奴を見分けなきゃいけないしな。

『カワノベさん』

僕だって勿論協力するさ。

『カワノベさん』

……ってことで、今日はここで───

キャアアアア！！！

『カワノベさん』

……おや？気付かなかったなあ。
でもどうして……。

川野辺喜雨

死霊ってことだよね？
倒すしかないでしょ。

『カワノベさん』

待ってて。今場所を調べるから。

太賀萩

カワノベは死霊の場所を調べることが出来るのか？

『カワノベさん』

うん。姿を現している死霊なら気配を探知できるよ。

川野辺喜雨

それで分からなかったということは……

『カワノベさん』

……先程まで姿を現していなかったか、僕が気配を探知できないくらい強いのかも。

『カワノベさん』

───分かったよ。

『カワノベさん』

死霊の場所は1階の学習室みたいだよ。

川野辺喜雨

1階の学習室……ここからじゃ少し遠いね。

『カワノベさん』

でも、キミ達には倒してもらわないと。

『カワノベさん』

安心して、僕も手伝うから。

太賀萩

それじゃあさっさと行くか。

カーテンは閉まり切り、照明も付いていない薄暗い教室の中。 1人の少女がスマホの画面を見つめていた。

スマホの画面の中では可愛らしい服を着たツインテールの少女がステッキを手にし戦っていた。少女は魔法少女物のアニメを見ているようだった。

？？？

ああ……。

？？？

ミーア……。

少女はミーア、という名を呟いた。どうやら画面の中の少女の名前のようだ。

魔法少女ミーア。それが画面の少女の名前だ。ミーアの登場するアニメは中高生にも人気の魔法少女アニメで、猫の魔法少女ミーアが主人公だ。

少女は、アニメに登場する魔法少女ミーアが大好きだった。

？？？

わたしもこうなってみたい……。

キャアアアア！！！

？？？

……なに？

？？？

あ、早く帰らないと……。

？？？

おばあちゃん、心配しちゃうよね。

次回：2025年3月15日

カワノベさん

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宵月シノ

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