テラーノベル
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「もう夏なんだね」
君が隣でそう言っていた。
特別なことなんてない 平凡な毎日だった。
学校の帰り道、坂を登っていた。
初夏の匂い、何故か苦しい心臓、 水路、見下ろした先の河川敷。
赤い自販機、木漏れ日 湿気った風、小さな花。
眩しい日差し、蝉の声、入道雲 明るい青色の空、君の背。
何も無い ただただ平和な日々だった。
今思えばの話だが その日々は酷く幸せだった。
怖いくらい幸せなのに、 その幸せを知らずに居た。
僕は何も知らなかった。 分かっていたフリをした。
それでも、 君だけは憶えていた。
蝉の声、木陰、花、夏の幽霊。
昔とは違う夏だった。
今日は八月の最後
流れてくるような 夏の匂いを感じながら
君が居た夏の想い出に浸っている。
コメント
1件
思い出もいつか忘れてしまう、既にもう少しずつ忘れている、ってことで短くしました。言い訳ですすみません。