テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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代理出産クラブ

第3話 - 疑惑と信用の狭間

2024年02月28日

#ドラマ

#一次創作

#ちょいエロ

#第2回テノコン

×××

その日の昼

AKIRA

今日職場の後輩と
仕事終わりに飲みに
行こうって話してたんだけど
行ってもいいかな？

チサ

いいよ！でも
週末だからって
飲みすぎない様にね

AKIRA

はい！気をつけます

AKIRA

あ、あと、帰る時
LIMEします🐸

チサ

彰とのLIMEを終えスマホを握りしめて胸に押し当てる千里

日下部千里

本当に後輩と
飲みに行くんだよね？

日下部千里

誰か他の女の人と
行くんじゃないよね？

日下部千里

なんて送れないよね・・・

日下部千里

疑いたくないけど

日下部千里

パソコンの事もあるし・・

日下部千里

はぁ〜・・・

日下部千里

愛する人を信用できない
自分が嫌いになってくる

日下部千里

でも・・大丈夫だよね

日下部千里

彰ならきっと・・・

日下部千里

・・・・・

その日の夜

日下部彰

カンパーイ！

河上啓一

カンパーイ！

千里が不安に苛まれている事など知るよしもない彰は

後輩である啓一と共に仕事終わりに居酒屋に来ていた

河上啓一

かぁ〜美味い！

河上啓一

やっぱ仕事終わりの
一杯しか勝たん！
って感じっスね〜

日下部彰

あはは！だな！

河上啓一

今日はとことん
飲み明かしましょうよ

河上啓一

なんてったって
今日は金曜日

河上啓一

華の週末っスからね

日下部彰

俺はほどほどに
しとくよ（笑）

日下部彰

千里からも
飲みすぎるなって
忠告されてるし

河上啓一

え？そうなんスか？

日下部彰

河上くんの奥さんは
どうなんだ？

河上啓一

俺はベロベロに
なって来いって
言われしたよ

河上啓一

余力残すなって（笑）

日下部彰

あはは！面白いな
河上くんの奥さん

河上啓一

まぁ、でも
日下部さんが
ほどほどなら

河上啓一

俺もそうしよっかな

日下部彰

いや、別に気にする
必要なんてないぞ？

河上啓一

いや、そうはいきません

河上啓一

先輩差し置いて
後輩が酔い潰れる
訳には行きませんから

日下部彰

律儀だな

河上啓一

まぁ、ほどほどに
酔い潰れましょ！

日下部彰

いや、潰れたら
ほどほどじゃないだろ

河上啓一

それもそうっスね

しばらく飲み食いを楽しんだ頃

河上啓一

あ！そうだ！
日下部さん！

日下部彰

ん？なんだ？

河上啓一

アレって
どうなりました？

日下部彰

アレ？アレって何？

河上啓一

アレって言ったら
アレっスよ！

河上啓一

Dクラブ！

河上啓一

もう連絡とか
取ったりしました？

日下部彰

またその話か・・・

日下部彰

あの話は聞かなかった事に
するって言った筈だぞ？

日下部彰

連絡なんてしてないし

日下部彰

そもそもそんなクラブ
利用するつもりもない

河上啓一

ブログは見ましたか？

日下部彰

ああ、あの都市伝説
を究明する的なヤツ？

河上啓一

あ！やっぱ
見たんですね！

河上啓一

やっぱ日下部さんも

河上啓一

なんだかんだ言いながら

河上啓一

内心興味津々
だったんスね

日下部彰

違う！違う！

日下部彰

暇だったから
調べてみたら

日下部彰

ブログがヒットしたから
試しに見ただけだよ

河上啓一

気持ちとか
分かりました？

河上啓一

利用してみようかな？

河上啓一

みたいな

日下部彰

利用なんてしないよ

日下部彰

だからその話は──

河上啓一

ふー・・・ん

河上啓一

俺はしましたけどね

日下部彰

え？

啓一の一言で場が一瞬で静まり返った

日下部彰

え？今なんて言った？

河上啓一

だからDクラブを
利用したって
いったんスよ

日下部彰

いやいや冗談だろ？

河上啓一

こんな冗談言って
俺に何の得があるんスか

河上啓一

まじっスよ

日下部彰

じゃあ、俺にクラブの
話を持ちかけたのは

河上啓一

俺ら夫婦が
実際に利用して

河上啓一

いいクラブだった
って判断したから

河上啓一

同じ不妊に悩んでる
日下部さんに話したんスよ

日下部彰

奥さんにはどう
説明したんだ？

河上啓一

まんまっスよ

日下部彰

お前とヤッても
妊娠しないから

日下部彰

別の人とヤるって？

河上啓一

まぁ、そんな
ストレートには
伝えてませんけど

河上啓一

だいたいは
そんな感じっスね

日下部彰

というか河上くんも
不妊に悩んでたのか

河上啓一

まぁ、いろいろ
ありまして

日下部彰

だったらそんな
違法クラブに頼らずに

日下部彰

不妊治療を──

河上啓一

不妊治療だって
魔法じゃありません

河上啓一

うまくいかない
可能性の方が
高いじゃないっスか

日下部彰

まぁ、それは
確かにそうだけど

河上啓一

確実じゃない不妊治療で
無駄に金が減るくらいなら

河上啓一

Dクラブに頼るのが
手っ取り早いっスからね

河上啓一

そっちの方が断然
効率だっていいし

日下部彰

いや、それは──

河上啓一

日下部さんだって
色んな金融会社から
借金してるの

河上啓一

奥さんには秘密に
してるんですよね？

日下部彰

まぁ・・そうだけど

河上啓一

いずれバレますよ？

日下部彰

・・・・・

河上啓一

Dクラブに頼れば
そんな事で頭悩ます
必要ないんスよ？

日下部彰

そりゃお金の事だけを
考えたらそうかも
しれないけどさ

日下部彰

倫理的に考えて──

河上啓一

それにメンタルケアから
セミナーまで色々
フォローが手厚いんスよ

日下部彰

ブログで見たよ

日下部彰

あれ本当なのか？

河上啓一

はい！なんていうか
至れり尽くせり
って感じですよ

日下部彰

でもさ・・・

日下部彰

奥さんは大丈夫なのか？

河上啓一

はい！大丈夫っスよ

河上啓一

やっと子供が
出来るって

河上啓一

手放しで
喜んでましたよ

日下部彰

いや、それはどうかなぁ

河上啓一

どういう意味っスか？

日下部彰

河上くんは産まれて
来る子供との血縁関係は
あるだろうけどさ

日下部彰

奥さんからしたら
他人の子供だろ？

河上啓一

まぁ、そうっスけど

日下部彰

他人の子供を育てるって

日下部彰

頭で考える以上に
精神的なダメージが
大きいと思うよ？

河上啓一

それなら養子とか
里親だって同じ様な
もんじゃないっスか

日下部彰

それと一緒に
しちゃダメだろ！

日下部彰

その子供は──

日下部彰

河上くんと実際に
肉体関係があった女性から
産まれてくる子供なんだから

河上啓一

・・・・・

日下部彰

想像してみろよ

日下部彰

子供は自分の事を
本当の母親だって
思ってるけど

日下部彰

実は他人の子供・・・

河上啓一

それは・・・

日下部彰

こんなとこで
飲んでる暇があるなら

日下部彰

今すぐにでも
家に帰って──

河上啓一

だから夫婦ふたりで
話し合って決めたんスよ

日下部彰

千里は不妊の原因が
自分にあるって知って以来

日下部彰

ずっと自分を
責め続けてた

河上啓一

・・・・・

日下部彰

毎日毎日泣きながら
ごめんねって

日下部彰

河上くんの奥さんだって
そうだったんじゃないか？

河上啓一

だから、泣いてる
明菜を見たくなくて俺は

日下部彰

こんなクラブに
頼ったりしたら

日下部彰

さらに奥さんを
苦しめる結果になるって

日下部彰

なんで分からないんだ！

河上啓一

く・・・・

日下部彰

今すぐに家に帰るべきだ

日下部彰

こんなとこで
飲んでる暇があるなら

日下部彰

一分一秒でも長く
奥さんのそばに
寄り添ってあげるんだ

河上啓一

もう・・いいっスよ

河上啓一

今日は帰ります・・・

啓一はうんざりした様子で立ち上がる

河上啓一

お先に失礼します

啓一はテーブルの上に 1万円札を置くと俯き気味で居酒屋を後にする

日下部彰

河上くん・・・

彰が見送る啓一の背中は心なしか小さく見えた

河上啓一

くそ・・・

河上啓一

こっちの事情も
知りもしねーで

河上啓一

好き勝手
言いやがってよ！

河上啓一

俺があのクラブに
頼る事を──

河上啓一

躊躇わなかった
とでも思ってんのかよ

河上啓一

悩んだに
決まってんだろーが

河上啓一

泣いて謝る明菜の
姿を見たくなくて

河上啓一

必死に調べて

河上啓一

必死に悩み抜いて

河上啓一

やっとの思いで決断
したんだっつーの！

河上啓一

・・・・・

河上啓一

明菜・・・

河上啓一

やっぱ間違ってたのかな

日下部彰

（河上くん・・・）

日下部彰

（大丈夫かな・・・）

日下部彰

（まぁ、俺が悩んだって
どうしようも無いよは）

日下部彰

（ちょっと早いけど
今日はもう帰るか）

日下部彰

すいませーん！

彰が手を真上に突き上げて店員を呼ぶ

店員

はぁーい

日下部彰

すいません！
お会計をお願いします

店員

かしこまりました

店員

では伝票をお持ちに
なられて

店員

レジへお進みください

日下部彰

はい！

河上啓一

ただいまー！

啓一は自宅へ帰ると元気よく明菜へ呼びかける

しかし室内は真っ暗で人がいる気配を感じなかった

河上啓一

あれ？電気
消えてんなぁ・・・

河上啓一

明菜、どっか
出かけてんのかな？

啓一が室内を歩くと

ピチャッ

河上啓一

う！何だ！？

啓一が床を確認すると床は水浸しになっていた

河上啓一

なんだよ・・コレ

啓一が室内を見渡し耳を澄ませると

ジャァーー

風呂場から水が流れる音が聞こえてくる

河上啓一

明菜のヤツ・・

河上啓一

水出しっぱで
出て行ったなぁ

河上啓一

ったく、しょうがないな

啓一はやれやれと言った様子で脱衣所へ向かって歩いていく

河上啓一

あれ？

啓一は不可解な事に気づく

河上啓一

明かりがついてる

浴室には明かりが灯っており

すりガラス越しに人影を確認する事が出来た

河上啓一

明菜？居るのか？

啓一が脱衣所から浴室に向かって呼びかけるが

反応がない

河上啓一

明菜？

河上啓一

開けるぞ？

啓一は恐る恐るドアを開ける

河上啓一

あき──

河上啓一

！！！！！！！

河上啓一

明菜！！！！！

啓一は目の前の光景に思わず声を荒げる

河上明菜

・・・・・

明菜は水が絶え間なく流れているバスタブに血が流れる右手を突っ込み自死していた

河上啓一

明菜！おい！明菜！

河上啓一

しっかりしろ！明菜！

河上明菜

・・・・・

明菜にかけ寄り何度も呼びかける啓一だが

絶命している明菜は反応しない

河上啓一

なんで・・こんな・・・

河上啓一

嘘だ・・・

河上啓一

嘘だって言ってくれよ

河上啓一

明菜ァァァァァ！

河上啓一

うわァァァァァァ！

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