8月某日
紗良
1本の白百合を胸に抱える
今日のために大切に育てた特別なもの
時計の針が11時45分をさす
紗良
紗良
紗良
人目を避けるかのように、足早く歩いた
外灯が不気味に点滅を繰り返す
紗良
紗良
お兄ちゃんはショートケーキが好きだった
紗良
きょろきょろ
辺りを見渡し人がいないことを確認する
紗良
すばやく屋内へ移動する
紗良
懐中電灯を付けた
紗良
奥の部屋までたどり着いたとき、時計は11時55分をさしていた
紗良
お兄ちゃん
お兄ちゃん
不意にお兄ちゃんのことを思い出す
お兄ちゃん
呆れつつも笑っていた
紗良
そんな優しいお兄ちゃんが
紗良
あと1分
紗良
3
2
1
0
12時になった
紗良
紗良
白百合を床に置く
お兄ちゃんの誕生日
紗良
きっとステキな成人男性になってたと思う
紗良
わたしのいるこの部屋で、自ら命を絶ったのだ
高校生活最後の夏休み、お兄ちゃんは同級生たちと肝試しをしに廃墟へ向かった
あちこち巡ってる間にいつの間にかいなくなり、みんなで手分けして探していると──見つかった
首を吊ったお兄ちゃんが…………
あとから聞かされ、茫然自失となったことを覚えてる
紗良
お兄ちゃんは優しくて、男女問わず人気で
紗良
誰とも仲よしで…………
紗良
紗良
お兄ちゃんに彼女ができたときは嫉妬で狂った
なんで?
なんで、わたしじゃないの?
わたしが世界で一番、お兄ちゃんが好きなのに……!
数年後、わたしはお兄ちゃんに思いを伝えた
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
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名無し
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名無し
名無し
名無し
『死者へ捧げる花』だから
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