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銃口の先のエンディング

第89話 - 王たらしめるもの

2024年11月18日

#一次創作

#ファンタジー

#冒険

#殺し屋

#人間関係

#日常

四阿朧

20年前

シャーズドウム王国

クロエ・ティアル。齢4つ。

クロエ

パパ！パパ！！！！

目の前で父は、首を切られた。

クロエ

どうしてママは王様を恨まないの？

クロエ！！！！

バチン、と音がした

頬に鈍い痛みを感じる

そこでクロエは初めて、それが自分が母にぶたれたからだと気がついた

クロエ

…え……なんで？

恨んではダメ、ダメなの…！

彼らは国のリーダーなんだから！！尊び敬わなければならないの！！！！

クロエ

国の…リーダー？

クロエ

でも…

パパがなぜ殺されたのか、分かるかしら！？

クロエ

なぜ？

それはね────

王アッシャー様に刃向かったからよ！！！

クロエ

あっしゃーさま？なぜ？

パパのお友達はね、王様に仕えてたんだけど…ミスを犯してしまって殺されたの

代わりにパパに、王家で働けって通達が来たんだけど…

パパは友達を殺した王様を許せなくて、拒否したらしいの

そうしたらアッシャー様はお怒りになって、パパに会いに来た

そこで口論になって…パパは殺されたわ

クロエ

パパ、悪いことしたの？

アッシャー様の意向に沿わないならば…殺されても仕方がないのよ

クロエ

意味、わかんないよ

クロエ

難しいことばっかり言わないで

クロエ

ママは…パパがいなくなって、悲しくないの？

悲しい？…そんなことを言ってはいけないわ。仕方ないことなのよ。

大丈夫。クロエには…ずっと、ママがいるわ

クロエ

…うぅ、本当に？

ええ。信じていいのよ

そのたった数ヶ月後のこと

クロエの母は王宮から、新しい侍女として呼び出しを受ける

クロエ

ママ！ママ！！！！

母が返事をしきれないうちに、王宮からは迎えが来た。

クロエ…っ！！

クロエ

なんで…！ママは僕といるって──！

クロエ

こんなの…間違ってる…っ！

ごめんなさい、クロエ…あなたに言ったことが、嘘になってしまったわね

でもねクロエ─────

繋いだ手は、引き剥がされる

クロエ

ママ────！

ほんとはママも…っ悔しかったのよ、パパがいなくなったこと！

クロエ

！

アッシャー様なんて…こんな国なんて、滅べばいいと思ってるわ！！

おい、喋るな！

…っいいえ

こんな独裁主義国、いつか必ず滅ぼされるわ！

これからきっと反乱が起き、世は混乱のムードになってくの！

パン、と銃声がして、母の頭から、血がダラダラと流れる

クロエ

え、ま、ママ…？

ゔぐ…っ

…く、ろえ…っ

クロエ

ママぁぁあ！！！！

生きて…………。

負け、ないで…ほしいの……

この国で、王家の侮辱は大罪である

王家が何をしようと、誰を殺そうと、それは…誰にも責められやしない。

クロエはそれを───身に染みて知る。

クロエ

（僕と同じような境遇にある者は少なくなかった）

クロエ

（民はもう、限界だった）

クロエ

（そして僕は、"生きるために"行動に移した。）

過去に思いを巡らせた後、クロエはサミュエルに向き直る

サミュエル

人として認識していない、だって？

クロエ

アッシャーはただ、自由奔放だったんだ。その重みは…キミたちには到底分からないだろう

クロエ

彼らは必要ないモノだと判断したら…簡単に殺す

クロエ

アッシャーが処刑を躊躇わないから、民も殺しをした。彼もそれを止めない

クロエ

なぜか？民が死のうと関係ないからだ。自分にとって居心地と都合のいい国であれば、それで…

クロエ

（王子の姿を初めて見たとき…感じたその、瞳の虚無さ）

クロエ

（あれはアッシャーと同じ目で、そして彼ライアンは今───）

クロエ

（アメリア一行にさも"正義"だとでもいうように、殺しをさせている。）

クロエ

（同じ血だ。…あの血は───…要らない。）

クロエ

僕の孤独と境遇を、貧困な民たちを…理解しろなんて、言わない。

クロエ

それでも…僕に賛同し、同じように辛い思いをしてきた者が多くいるから───

クロエ

この国にはこんなに人がいる。この国はこんなに戦える。

サミュエル

2人とも…もう十分だ、一旦去ろう

クロエ

ハハハッ

クロエ

賢明な判断だよ。僕と戦うのはまた今度

クロエ

王子の選んだお前たち精鋭と───、僕らの執念、どちらに軍配が上がるかな？

テヘル

…お前、なにか考えが変わったか？

サミュエル

！よく分かったね…まあ、少し

サミュエル

俺たちは彼らから少しでも情報をもらうために今日来たけど…

サミュエル

俺は、知らない。昔のシャーズドウムを。

サミュエル

だからただ、独自の文化を築きたい、いわば"別宗教のやつら"くらいに思ってた

サミュエル

俺はずっと…とある人に育てられていて

サミュエル

外の素晴らしい景色は知ってるけど、経済や社会情勢なんかは知らなかった

アイザック

…。まあ、俺も知らないや

アイザック

ずっと街のはずれでぼうっとしてただけだし

テヘル

…アメリアもメラも…きっと知らない

テヘル

シャーズドウムの"表"で生きていた人間の、"影"の部分を。

サミュエル

そうだね。

サミュエル

俺たちの目的はあくまで"viperについて知ること"だ

サミュエル

彼らがもし…俺たちに情報を提供してくれるなら、戦う必要ない

テヘル

もしviperの隊長とライアン王子に関係があれば

テヘル

アイツらは俺たちの敵じゃないもんな。

テヘル

でもそううまくいくか？俺らは所詮王子の言いなりだろ

テヘル

ま…むつかしいこたぁ答えが出るまでは考えても分かんねえか

テヘル

とにかく…戦うにしたって、俺らは

テヘル

アイツらの執念に勝つために、全員万全な状態で備える必要がある

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