テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
江藤ルミエール
195
111
#ミステリー
鬼霧宗作
61
コメント
1件
いやあ、今回も心臓に悪い展開でしたね……。 心路さんと摩智さん、どちらも「遅い」を引いて冷静に対処できたからよかったものの、成功者が増えるほど部屋の空気が重くなっていく描写が本当に胸に刺さりました。「あと1人♡♡♡ば終わる」という暗黙の了解が漂う残酷さ、そして死者の輪郭が薄れていく感覚——システムの機械的な進行と、少女たちの生々しい心理の対比が巧みです。特に、心路さんの「助かった」という安堵の後に「あと1人」が追いかけてくる流れ、すごくリアルでした。 次は誰の番なんだろう……。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
生徒ナンバー20・津田心路。
小学校入学前から新体操を習っている少女だった。
脚が少し太く、肉付きがいいことを気にしている。
けれど、以前付き合っていた彼氏から言われた言葉を、今も半分だけ信じていた。
脚は、人に見られた方が細くなる――
だから心路は、少し短めのスカート丈を選んでいる。
津田心路
テーブルへ向かいながら、心路は胸に浮かんだ考えを必死に押し殺した。
早く、3人目が出ればいい。
もちろん、誰にも言えない。
言えるはずがない。
でも、この部屋の誰もが、もうどこかで同じことを考えているのではないか。
自分ではない誰かが死ねば、この試練は終わる。
そう思った瞬間、人はどれほど醜くなるのだろう。
心路は唇を噛み、胸部モニターを見つめた。
【SYSTEM】
“速い”。
“普通”。
“遅い”。
3つの文字が、目まぐるしく点滅する。
心路は冷や汗も拭えないまま、意を決してボタンを押した。
表示されたのは――
“遅い”。
津田心路
津田心路
ロボットの指がピンポン玉を摘み、中央のカップに入れて伏せる。
3つのカップが動き始めた。
1、2秒に1回ほど。
明らかに遅い。
心路は、少しだけ呼吸を取り戻した。
津田心路
心路は、ゆっくり動くカップを追い続けた。
右。
中央。
左。
それでも、命がかかっていると思うと、ただの動きが信じられなくなる。
【SYSTEM】
声が響いた瞬間、心路の指先が震えた。
津田心路
自信はある。
けれど、間違いは許されない。
外れれば死ぬ。
ただ、それだけ。
津田心路
津田心路
心路は、自分から見て左のカップを指さした。
津田心路
ロボットの右腕が、そのカップをゆっくり持ち上げる。
心路は、息を呑んで見つめた。
そこには――
レモン色のピンポン玉があった。
津田心路
緊張から解放され、心路はその場にしゃがみ込んだ。
膝に力が入らない。
足の震えが止まらない。
月桂冠は、カチッと音を立てて外れた。
津田心路
その安堵の後に、別の感情が追いかけてきた。
自分は助かった。
でも、試練は終わっていない。
あと1人。
その言葉が、胸の奥に冷たい水のように広がっていく。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
小野田摩智
摩智は、しっかりとテーブルの前まで進んだ。
姿勢は崩れない。
顎も下がらない。
だが、握った拳には、じっとりと汗が滲んでいた。
【SYSTEM】
ロボットの胸部モニターが点灯した。
“速い”。
“普通”。
“遅い”。
摩智は呼吸を整えた。
弓を構える時のように、視線を一点に絞る。
そして、ボタンを押した。
表示されたのは――
“遅い”。
小野田摩智
ロボットがピンポン玉をカップに入れ、伏せる。
3つのカップがゆっくり動き始めた。
摩智は凝視した。
迷わない。
逸らさない。
最後まで、追う。
弓道で鍛えた集中力が、彼女を支えていた。
【SYSTEM】
小野田摩智
小野田摩智
恐怖は消えていない。
けれど、摩智は顔に出さなかった。
堂々と真ん中のカップを指さす。
小野田摩智
ロボットの右腕が、真ん中のカップをゆっくり持ち上げる。
摩智は、瞬きもせず見つめた。
カップの下には――
ピンポン玉があった。
小野田摩智
声は小さかった。
けれど、その一言で、どれほど息を詰めていたのかがわかった。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
カチッ。
月桂冠が外れ、床に落ちた。
小野田摩智
摩智は、生徒たちの方へ戻っていく。
これで、また1人助かった。
瞳子。
麻冬。
志穂。
心路。
摩智。
通過者は増えていく。
それなのに、部屋の空気は少しも明るくならなかった。
むしろ成功者が増えるほど、まだ呼ばれていない生徒たちの顔は強張っていく。
成功者が増えた分だけ、次に誰かが失敗する可能性を、全員が意識するからだった。
あと1人死ねば終わる。
誰も口には出さない。
けれど、その言葉は白い部屋に漂っていた。
菜々美は、喉の奥が冷たくなるのを感じた。
凪津美の悲鳴。
玖玖瑠の叫び声。
その声は、菜々美の中にはまだ残っている。
けれど、周囲の何人かはもう、2人の顔をはっきり思い出せないようだった。
死んだことは覚えている。
怖かったことも覚えている。
でも、少女たちの輪郭だけが、少しずつ白い部屋に溶けていく。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】